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11話 剣聖ノ加護


「あらん、舞夜ちゃんにアリーシャちゃんじゃない。装備を整えてきたのねん、見違えたわよん♪」


 ギルドのカウンター。

 訪れた2人にアーナルド・ホズィルズネッガーさんが、ウィンクを飛ばす。


「おはようございます。アナさん、早速クエストを受けたいのですが……、掲示板から依頼票を取ってくればいいですか?」


「ダメよん。初心者には、こっちで用意したクエストを受けてもらうわん。大人の階段を登った2人にはコレ!」


 そう言って1枚の依頼票を差し出すアーナルド。


 それに対し、「なんでお前がそんなこと知ってやがる! まさかエスパーか!? 見た目通りとんだ化け物だな」と、戦慄を覚える舞夜だが……


「ん? 舞夜ちゃん。今なにか失礼なこと考えてなかったかしらん?」


「ひえっ」


 その考えすら読まれるのであった。


 アーナルドから差し出された依頼内容は“ゴブリン”の討伐だった。

 その特徴は、子供くらいの背丈の小鬼。鋭い牙や爪を持ち、中には武器を使って攻撃を仕掛ける個体もいる。というものだ。


「舞夜ちゃんが、上級魔法のスキルを持っていたとしても油断は禁物よ? 調子に乗った駆け出しが、死体になって帰ってくるのなんて日常茶飯事なんだから……」


 悲しそうな顔で注意を促すアーナルド。

 何人もそうなった者の姿を見てきたのだろう。


「ああ、それと、盗賊団リーサルバイトは無事にギルドとこの都市の騎士団で回収できたから、帰ってきたら報酬をわたすわねん」


「本当ですか!」


「よかった……」


 これで報酬も得られるし、エリオット村の人々の安全は保証された。

 舞夜とアリーシャは胸を撫でおろす。


 そして迷宮へ出発……の前に、舞夜はアリーシャのアドバイスで買い物を済ませた。

 購入品の名は魔法薬“ポーション”。

 その効力は傷の回復。腕や足を失うなどの欠損などを除いたものを瞬時に直してしまうというものだ。


 スキルシステムといい、もはやゲームの世界だな。

 などと舞夜は思うのだった。





「ハァァァ——!!」


 迷宮1層目。

 岩肌に囲まれた洞窟の様な空間の中、裂帛が響き渡る。


 1体のゴブリンを鋭い蹴りで弾き飛ばし、その場で回転。

 迫ってきたいた残りの2体の喉笛を、両手の剣でスパン! と掻っ捌く。


 だがこれで終わりではない。


 回転の勢いそのまま飛び出すと、蹴り飛ばされ悶えていた1体の前に着地、抵抗する間も与えず目玉から脳天まで刺し貫きトドメを刺した。


 ——うそん……。


 舞夜が呆気にとられる。


 仕方なかろう。

 一連の動きが瞬き数回のうちに成し遂げられたのだから……。


「いかがでしたか、ご主人様?」


 そして、この超高速戦闘をやってのけたアリーシャが、ビッ! と剣の血を払いながら笑顔で歩いてくる。


「き、聞き忘れてたんんだけど、アーシャの能力……加護だっけ? それってどういうものなの?」


 舞夜が引き攣った顔で尋ねる。


 迷宮に入りゴブリンと遭遇すると、アリーシャが、まず自分の力を見て欲しいというので任せて見た結果がこれ。ヴァルカンの店で彼女の剣舞を見ていたが、この強さは異常だ。


「そういえば詳しく説明してませんでしたね。私の加護……《剣聖ノ加護》は、身体能力を強化してくれる力を持ってます。刀剣類を装備してる間限定ですが、大体常人の10倍まで……」


 ——チートじゃねーか。


 界◯拳みたいなその能力に、そう思わずにはいられない。


 だが、頼りになるのは間違いない。

 アリーシャの強さも分かった事で、ある程度の連携も想定出来る様になった。


 2人は軽い打ち合わせをし、さらなる敵を探し始める。





「ぶ、《黒の魔槍(ブラック・ジャベリン)》……」


 歯切れ悪く魔法名を口にする舞夜。

 放たれた魔槍がアリーシャの背後に迫っていたゴブリン2体を串刺しにする。


「ご主人様、もっと大きな声ではっきりと魔法名を言ってください! タイミングも、もう少し早めにお願いします!」


 ——か、勘弁してくれ……。


 舞夜はアリーシャに魔法を発動する際は、魔法名を叫ぶ様に要請されていた。


 舞夜はこの世界の魔法使いと違い、魔法を魔法名を詠唱する事なく発動する事が出来る。

 1人で戦う分には問題ない。

 むしろプラスの要素なのだが、初めて連携を組むアリーシャにとって、詠唱なしに魔法を放たれては合わせるというのは到底無理な話。

 それが、詠唱を要する理由だ。


 だが、舞夜にとって、厨二をこじらせたみたいなネーミングセンスの闇魔法の名を叫べというのは、結構堪える。


「《黒の魔弾(ブラック・バレット)》!!」


 だからといって、安全の為、背に腹は変えられない。

 観念して新たな魔法名を叫ぶ。


 飛び出した漆黒の魔弾がゴブリンの脳天を直撃。

 フラついた隙を突き、アリーシャがその首を刎ね飛ばす。


 迷宮に入りしばらく。


 2人はかなりの数のゴブリンを倒していた。

 その数、目標5体に対し約30体。

 もちろん全て《黒次元の黒匣(ブラック・ノワール)》で回収済みだ。


「アーシャ、そろそろ戻ろう?」


「ダメです、ご主人様。もっと舌ったらずで甘えた感じの声で言ってください」


 ——ダメだこいつ、早くなんとかしないと……。


「それはそうと、なぜですか?」


 イカれた要求に絶句する舞夜に、改めてアリーシャが問う。


「そろそろ魔力切れなんだ。だから……」


 闇魔法は強力だが、魔力量にも限りがある。

 帰りのことも考え、温存しておこうというわけだ。


「それでしたら……はい、こちらをどうぞっ」


 それに対し、アリーシャは腰に装備したポーションを舞夜に差し出す。


「アーシャ? ぼくは怪我なんかしてないよ?」


「あ、ご主人様はご存じないのですね? ポーションは怪我だけでなく、魔力も回復できるんです」


「え!?」


 驚く舞夜。

 それもそのはず、地球では休息以外の方法……ましてや外部からの魔力供給手段など存在しなかったのだから。


 信じられない気持ちでポーションを口にするが、効果はすぐにあらわれた。

 ひと口で3割、飲み干す頃には完全に回復を果たしていた。


 これにより、ポーションがある限り魔力切れの心配はなくなった。

 さっそく、今まで避けていた、集団で行動するゴブリンたちにも戦闘を仕掛ける。


 魔制具の杖で、構築スピードを上げた事により魔槍を雨の様に連続発動し、次々とゴブリンを串刺しに。

 そして、その間を縫う様にアリーシャが斬り抜ける。


 ゴブリン達は阿鼻叫喚の様相。

 中には降参とばかりに両手を上げ、泣き叫ぶ個体もあったが、見逃してはこちらがやられる。


 2人は容赦無く剣で腕を断ち。

 魔槍で心臓を貫くのだった。

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