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地球で虐げられた《最強》闇魔術士は、異世界でエルフ嫁たちに愛される  作者: 銀翼のぞみ
四章

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106話 夢の中で

「悪いが引き取ってくれ、ご主人様は誰ともお会いしない」


「そ、そこを何とか……!」


「ダメなものはダメなのです!」


 舞夜の屋敷の前。

 そんなやりとりが交わされる。


 門の前で腰に手を当て、頑として来客を拒むのは、メイドのゼノビアとナタリア。


 対し、何とか舞夜に取り次いでもらうと粘るのは、この帝都に住まう貴族の1人だ。

 見れば、隣に洒落たドレスを着た若い娘を連れている。


 彼女は、今も尚粘る貴族の娘である。

 そして貴族の目的は、舞夜に自分の娘を紹介し、縁談に持ち込むことだ。


 舞夜は領爵。

 その上、先の大戦で魔王連合軍を単騎で屠ったことで、冒険者の最高峰――歴史上数人しか昇りつめることができなかった“金剛等級”も間近……と巷では囁かれている。


 彼の優秀な血を取り込みたい者や、彼と親い仲になり甘い蜜を吸おうと企む者は多く、連日、貴族や大商人の来客が絶えない。


「追い返しなさい」


 アリーシャがメイドたちに出した指示がそれだ。


 舞夜の周りは自分を含めたエルフ嫁3人に、レオナ。

 その他、アマゾネスメイドの面々や破廉恥ロイヤルズもいる。


 貴族の娘の中にもそれなりの容姿をした者もいるだろうが、この面子を相手にしてはどうしても見劣りしてしまう。


 それに、今はアリーシャによる、舞夜の幼児退行調教の真っ最中だ。

 金に汚い貴族や商人に合わせてしまったら、俗世を思い出してしまうことになる。


 そうすれば、また魔王の討伐を……などと言い出しかねない。

 それだけは何としても避けなければならないのだ。


 ただのメイドであれば、貴族相手に恐れを抱き、屋敷の中へ通してしまうかもそれない。

 しかし、この屋敷のメイドはアルフス王国でも屈指の実力を誇るアマゾネス戦隊の元戦士たちだ。


 例え、貴族が直接出向いて来ようとも、毅然とした態度でそれを追い払うことが出来る。

 アリーシャが彼女たちを雇ったのにはそういった目的も含まれていたのだ。


 それは今日も同じだ。

 あまりのしつこさに、相手をするのが面倒になったゼノビアが青筋を立て始めたところで、「これはまずい」と判断した貴族はすごすごと帰っていくのだった。


「2人とも、お疲れ様」


「交代の時間よ、控え室に紅茶を淹れておいたから、良かったら飲んでちょうだい」


 貴族が去ったタイミングで、屋敷の中から他のメイド2人が現れる。


「あ、もうそんな時間なのです?」


「紅茶か、ありがたいぜ」


 交代、それに紅茶と聞いて、ナタリアとゼノビアの目が輝く。


 この屋敷ではあらゆる仕事は交代制。

 メイドたちにはしっかりとした休憩時間と、シフトによって週二日の休日が設けられている。


 この世界において。

 メイドというものは昼食時以外は常時働き詰めが当たり前で、休日というものも存在しないのがほとんどだ。


 しかし舞夜は、それではあまりに可哀想だと、地球での労働基準を取り入れ現在の形に至ったのだ。


 おまけに。

 屋敷の紅茶などを含めた常備品は好きに使っていいと言い渡してある。


 この世界において。

 嗜好品……特に紅茶は高級であり、庶民が味わう機会は少ない。


 メイドでありながら、そこまでの待遇が得られる上に、仕えているのは自分たちを救い出してくれた愛しい主人……故郷を追われ、戦士としての職を失った彼女たちではあるが、今の環境は以前よりも幸せと言えよう。


「そういえば、ご主人様は今どちらにいらっしゃるのです?」


「今は、お昼寝中です。先ほどまでアリーシャお姉さまたちと、お戯れ(・・・)されてた様子で……」


 ナタリアの問いに。

 交代のメイドが、顔からエルフ耳まで真っ赤にして言い淀む。

 どうやら、部屋から漏れるやりとりを聞いてしまったようだ。


「あ〜あ、いいなぁ〜。私もご主人様と、そういう関係になりたいぜ」


 その様子に、ゼノビアも頬を染めながら漏らす。


「ほんとよ。ご主人様にお姉ちゃんって呼ばれるたびに、どれだけ襲いかかりたい衝動を抑えていることか……」


 もう1人のメイドも、じゅるりとヨダレを拭う。


 果たして、最初にハーレム入りを果たすのは誰なのだろうか。





「……くすっ、ご主人様ったら可愛いっ」


 はだけたメイド服の胸元を直しながら、リリアが小さく笑う。


 視線の先はベッドの上。

 乱れたメイド服姿のアリーシャと、同じく乱れたドレスを身に纏ったシエラの間で眠る舞夜だ。


 アリーシャとシエラは気を失ってしまっている。

 今日の舞夜が少々激しかったせいだ。


 たまたま、リリアだけは責める(・・・)のに徹していたため、気絶は免れたワケである。


「……起きたら美味しいおやつを用意してるから、ご主人様」


 リリアはそう言って、シルバーブロンドの長髪を耳にかけながら、眠る舞夜の額に……ちゅっ――と啄むようなキスをすると、愛しい彼のために、クッキーでも作ろうと部屋を後にする。


「ん……ッ」


 その直後。

 舞夜が小さく呻き声をあげる。


 そして、その寝顔が次第に強張っていくが、それに気づく者は誰もいなかった。


『王よ――お目覚めクダサイ……』


 そんな声が、舞夜の夢の中で響き渡っていた。

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