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地球で虐げられた《最強》闇魔術士は、異世界でエルフ嫁たちに愛される  作者: 銀翼のぞみ
三章

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103話 醜き男たちの狂乱、再び

 帝国の命運を賭けた、舞夜と魔王連合軍の激戦があった日から、約ひと月が経過した。


 舞夜が、魔王と不死者の王、それとその配下の大軍ほとんどを単騎で殲滅したという事実は、たちまち帝都中に広まり、人々はこの戦いを“魔導士の奇跡”と呼ぶようになり、彼を魔導士様と讃えるようになった。


 残りの魔族も、帝国勇者団や騎士団が討伐。

 レイヴィアタンの死体も含め、万一にもアンデッド化しないように神聖魔法で浄化し、葬られた。


 舞夜の《黒次元ノ黒匣(ブラック・ノワール)》によって回収されたユリスとアンデッドたちは、彼の闇魔法によって消滅させたという説明を帝国側は信じているので問題ない。


 問題といえば、もうひとつ……連合軍を殲滅する為に舞夜が用いた兵器、ヒュドラとナインヘッズだ。


 戦況を単騎で覆すほどの兵装だ。

 帝国が欲しがらないはずがない。

 ジュリウス皇子を始め、国の重鎮たちは舞夜が快復するやいなや、自分たちに兵装自体、もしくは製造技術を売ってくれと莫大な金額を舞夜に提示した。


 もちろん舞夜はこれを固辞。


 製造してくれたアンデッドたちの存在を明るみにするわけにはいかないし、あれほどの強力な兵器――悪用されないとも限らない。ゆえに、あれらは自分の闇魔法で作り出したもので一定時間を超えると消滅すると嘘の情報を与えることで、諦めさせた。


 まぁ、例え悪人の手に渡ってしまったとしても、この世界の人間は魔力を直接操作できる舞夜と違い、スキルシステムを用いなければ魔法を操ることはできない。

 複数の魔力の精密操作を要するヒュドラやナインヘッズは、そもそもを運用することは不可能なのだ。


 魔族・アンデッドの処理は終わらせた。

 舞夜の武装に関しても帝国は手を引いた。


 となると、残りは……





「ふぅ……。今日もなかなかいい具合だったぞ、“豚野郎”」


「ぶ、ブヒィ……ありがとうございます」


 薄暗い一室。


 筋肉質な半裸の男が満足げな表情を浮かべ、足元に向かって声をやる。

 すると、疲れきった声で感謝の言葉が返ってくる。


 足元に転がるのは、まるまると太った男だった。

 格好は腰に布を巻いただけの簡易なもの。

 感謝を表す為に、深く頭を下げている為、その顔は伺うことは出来ない。


「じゃあな、また指名してやるとしよう」


「ぶ、ブヒィ……」


 筋肉質な男は服を着込むと、そう言って扉から出て行く。


「ブヒィ、き、今日はかなりハードだった……」


 太った男が立ち上がりながら、自分の体を摩る。

 よく見れば、体には無数の傷跡が……形から察するに鞭で叩かれた跡のようだ。


 男の格好。

 今までの会話。

 そして、この状況。


 もう気づいた者もいるかもしれないが、一応説明すると、ここは男色家が利用する、かなりマニアックな娼館だ。


「ひぎゃぁぁっぁぁぁ!! 嫌だぁ!! 私はこんな場所に居ていい身分の人間ではない!!!!」


「黙れ! この不細工エルフ!! 奴隷になったテメェに、拒否権はないんだよ!!」


「ぎゃッッ!!??」


 太った男が、使い終わった部屋の掃除に取りかかろうとしたところで、廊下から、そんなやりとりが聞こえて来る。


 嫌がる声がすると、バキッ! という打撃音と悲鳴が上がる。


 太った男は「ブヒィ……どうやら、新人のようだ」と呟く。


 その予測は当たりだ。

 今日は、この男娼館“ガチムチ・フレンズ”に、新たな仲間が加わる日なのだ。


「おい豚野郎、入るぞ!」


 言葉が聞こえると同時。

 返事などお構いなしとばかりに、太った男の部屋の扉が乱暴に開かれる。

 入ってきたのは従業員のひとりと、彼に首根っこを掴まれ、ズタボロになったエルフの青年だった。


「今日から入った新人だ。そんでもって、豚野郎……テメェが教育係(・・・)だ。しっかり技術を仕込んで――おい、何を呆けてやがる?」


 従業員の男が不思議そうな顔をする。

 彼の言ったとおり、話しかけられた太った男は間抜けな面を晒していた。


 そして、こう言う――


「お前、カリス……なのか?」


 と……。


「――お、お前は! ヘースリヒ……!?」


 すると、ズタボロのエルフの青年――元アルフス王国第一王子・カリスも驚愕の声を上げる。


「なんだ? お前ら知り合いなのか? 揃いも揃って不細工同士……類は友を呼ぶとは言った者だな。まぁいい、せいぜい客に壊されないように必死に媚を売るんだな! ガハハハハハ!!」


 そう言って、従業員の男は大笑いで去っていく。


「ヘースリヒ、お前……」


 呆然と言葉を紡ぐカリス。

 そう、彼もまた目の前の男――元アウシューラ帝国第二皇子・ヘースリヒと同じように、前回の舞夜暗殺と今回の大侵攻に加担した罪で、帝国、そして自国による裁きとして、この娼館に堕ちて来たのだ。


 言わずとも、アリーシャとリリアによる希望であったことは明白であろう。


「違うぞ、カリス。私はヘースリヒなどではない」


 しかしどういうことだろうか。

 ヘースリヒがそんなことを言いだした。


「な、何を……言っている? どう見ても……」


「違う! 私はヘースリヒではない! 私は、このガチムチ・フレンズNo.1指名率を誇る“豚野郎”だ! そして、今日からお前の先輩であり、教育係だ!」


「ひぃぃぃ!?」


 言葉を遮り、咆哮するヘースリヒ。

 あまりの迫力。

 そして狂ってしまったかのような目つきに、カリスは後ずさり、悲鳴を上げる。


「大丈夫だ、カリス。最初は慣れないかもしれないが、慣れてしまえば、なかなかのものだぞ? 安心しろ、私が教育係として、しっかり開発(・・)してやるから……」


「や、やめろヘースリヒ……! 近寄るな! ちょっ、やめっ……アァ――――ッッ!!??」


 夜の娼館で、醜き男たちの狂乱が始まる。


 美しきエルフたちの虜になり、狂ってしまった2人……まさか、その末路が揃って男娼奴隷落ちとは……。


 だが、これにて舞夜の愛すべきエルフ嫁の3人を巡る一件は、完全なる決着を迎えるのだった。

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