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99話 魔法使い(物理)

「あの光……変身か!」


 舞夜が言う。


 目の前の光景。

 それは以前倒した、マモンと同じものだった。

 光に包まれたレイヴィアタンの姿が、大きく変貌していく。


 そして――


『クキキキキ……この姿になるのは久しぶりだ。覚悟しろ魔法使い! この姿になったからには貴様に勝利はない!!』


 変貌を遂げたレイヴィアタンが高らかに宣言する。


 体長は目算10メートル。

 紫の鱗肌をし、その体は大きくうねっている。

 そして顎門から覗く鋭い牙――


 レイヴィアタンの姿は巨大な蛇と化していた。


『おお……! レイヴィアタン様が真の姿を解放なさったぞ!』


『よし、我々は後退だ!!』


 その姿を見て、周囲の魔族が歓声を上げると、レイヴィアタンから距離を置く。


『《ポイズン・ブレス》!!』


 叫ぶレイヴィアタン。

 直後、紫色の熱戦が巨大な顎門から発射された。


 ダンッ!!


 舞夜は大きく踏み込むと、レオナを抱え、それを回避。


 標的を失った熱戦が地面に直撃。

 その場を大きく穿つ。


 そして……


 ジュワッ――!! という音とともに、熱戦が穿った1〜2メートルほどの範囲から瘴気の様なものが立ち込め始めた。


 そして舞夜は目を疑う。

 地面に咲く草花が瘴気に触れた瞬間、枯れてしまったからだ。


 レイヴィアタンの固有スキル、《ポイズン・ブレス》は生命を枯らす猛毒の息吹だ。

 熱戦の威力と瘴気による範囲攻撃。

 決して紙一重で回避することは許されない。


 魔族が距離を置いた理由はこれだ。


 魔法無効化の《ドラゴニック・フォース》。

 一撃必殺の《ポイズン・ブレス》。

 どう足掻いても八方塞りだ。


 だが……


「【Lv.2】発動!!」


 舞夜は違う。


 叫ぶと同時。

 彼の体を漆黒のオーラが包み込む。


 そう、マモン戦で目覚めた力を解放したのだ。


「《黒ノ魔槍(ブラック・ジャベリン)》!!」


 すぐさま魔槍を発動。


 大気に浮かぶ魔素を操り、発動座標をレイヴィアタンの《ドラゴニック・フォース》の内側に固定。マモンの時と同様に、防御エネルギーの内側で攻撃を放つことに成功する。


 それと同時に、魔導士の力がタイムリミットを迎え、解除される。


『小賢しい! 《マジック・フュージョン》!!』


 レイヴィアタンが咆哮する。


 するとどうだろうか。

 《ドラゴニック・フォース》の内側で発動した《黒ノ魔槍》が、パシュ……という情けない音を立てて霧散してしまったではないか。


『クキキキキ……無駄だ、魔法使い! 我は固有スキル、《マジック・フュージョン》で《ドラゴニック・フォース》と融合(・・)した。……つまり、絶対魔法防御の体と化したのだ!!』


 完全なる魔法の無効化――

 これこそが、レイヴィアタンの勝算だったのだ。


『……ッ!?』


 驚愕で息が漏れる音がする。


 しかし、おかしい。

 息を漏らしたのは舞夜ではなく、レイヴィアタンの方だった。


 それもそのはず。

 敵の唯一の攻撃手段である魔法を封じたというのに、その敵――舞夜が、動じるどころか小さな笑みを浮かべて、静かに自分の姿を見据えているのだから……。


「レオナさん、少し離れていて下さい」


 まだ意識のおぼつかないレオナに向かって、舞夜が優しく声をかける。


 そして、こう叫ぶ。


「ナインヘッズ! こちらも、もうひとつの姿(・・・・・・・)を見せてやるぞ!!」


 宙に浮かんでいたナインヘッズが漆黒に輝き出した。

 するとガキン! ガキン! という音を出し、変形してゆく。


「装着!」


 再び舞夜が叫ぶ。


 その声に従い、形を複雑化したナインヘッズが、彼に殺到。

 その小さな体を漆黒の装甲で包み込んだ。


『ふむ、防具か……さしずめ“黒騎士”と言ったところか?』


 レイヴィアタンの言うとおり。

 装甲を全身くまなく纏う事で、舞夜は漆黒の甲冑姿となっていた。


 ――だが、防御力を上げたところで、どうにもならんぞ魔法使い? 貴様の攻撃は我には効かんのだからな。


 浮遊していたユニットが甲冑に姿を変えたことには驚いたが、それで終わりと分かると、レイヴィアタンは内心ほくそ笑む。


 確かに、強固な装甲だが、時間をかけて一方的に嬲れば破壊することは容易……そう考え、《ポイズン・ブレス》を放とうと顎門を開く。


 しかし。


 キュイーン……――


 甲冑の内部から、駆動音(・・・)が上がる。


 そして次の瞬間――


 ドゴォォォォォン――!!!!


 轟音が鳴り響いた。


『グゲェェ…………ッッ!?』


 レイヴィアタンが苦悶の声を漏らす。


 巨大な土手っ腹。

 そこに突き刺さる漆黒の拳。


 轟音の正体は、舞夜が放った豪速の“パンチ”だったのだ。


「知ってるか? 今時の魔法使いは近接戦も得意なんだよ」


 フルヘルムの下。

 舞夜が静かに言う。

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