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地球で虐げられた《最強》闇魔術士は、異世界でエルフ嫁たちに愛される  作者: 銀翼のぞみ
一章

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9話 アリーシャの想い

 アリーシャは眠ったフリをしていた。

 理由は自分を救い、主となった愛しい少年、舞夜が胸を押しつけたり、脚を見せつけたり誘惑しても手を出してくれなかったからだ。


 押してダメなら引いてみろ。

 無防備な姿を見せれば、もしかして……結果は成功だ。

 部屋に運び込まれると早速、舞夜はアリーシャの胸に釘付けになっていた。


 小さな体で必死に部屋に運んでもらっているだけで、たまらなく可愛く、愛おしく感じた。


 今は、その愛おしい主が自分の体に興奮してくれている。

 それだけでアリーシャの息は荒くなり、下着の下は……。


 匂いを嗅がれた事も、恥ずかしくは思ったが、愛らしい容姿をした主のどこか甘えるような雰囲気に不快感は感じず、むしろさらに愛おしく思えた。


 そして、現場を押さえてしまえばこちらのもの。

 アリーシャはこのままキメ(・・)ようとする。


 のだが……


「ご、めん……なさ、い……」


 ——ご主人様、怯えて……?


 舞夜の様子がおかしいことに気づく。


 やっと、といった感じで紡がれる言葉。

 体は震え、顔は血の気が引き、大きな黒い瞳からは大粒の涙が流れ出ている。


 舞夜は思い出してしまったのだ。

 昨日まで過ごしてきた、魔法教育という名の虐待の日々を……。


 恐らく、舞夜の力なら、この世界における上位の敵にだって勝利することが出来る。

 困っている人のためなら凶暴な魔物にだって立ち向かえる。


 だが、ダメなのだ。

 何かに失敗する度に実の親に、鞭で打たれ、爪を剥がれ、目玉を潰された日々の記憶が、イケナイコトをしようとした今の舞夜を恐怖に陥れる。


「ご主人様……」


「ひっ……!?」


 震え上がる舞夜に手を伸ばすアリーシャ。

 舞夜はぶたれるのではないかと、身を縮め目を閉じてしまう——


「あぅ……?」


 不思議そうな声を上げる舞夜。

 訪れたのは痛みではなく、アリーシャの優しい抱擁だったからだ。


 理由はわからない。

 だが、この怯え方は異常だ。

 きっと、このままでは壊れてしまう。


 アリーシャは母性本能でそれを感じとり、気づけば抱きしめていた。


「ご主人様は何も悪くありません。だから怖がらなくていいんです」


「でも、ぼく……寝てる相手に、あんなこと……だから怒られ……」


「怒ってなんかいません。むしろ怒られるのはわたし……。だってご主人様に襲ってもらえると思って、寝たふりをしていたんですから……」


 自分の欲望にまみれた考えを明かし、恥ずかしくも思うも、愛おしい主の心を守る為なら……。

 そう思っての言葉だ。


「じゃあ、お母さんたち……み、たいに、鞭で叩かない? 目……潰したり……し、ない?」


 ——ッ!!??


 舞夜からの答えにアリーシャは目を見開く。

 信じがたいが、今もすすり泣き、震える姿にその言葉が嘘ではないと確信する。


 ——殴った? 自分を救った愛らしいご主人様を?

 ——目を潰した? この綺麗な瞳を?


 ——許さない……!!


 どうしてそんな事をしたのかは知らない。

 だが、もしそんな事をした生き物がのうのうと生きているのなら、殺してやる。

 主を侮辱し傷つける存在など、嬲り、千切り、潰し、肉の彫刻にして、生まれてきた事を後悔させてやる!!


 想像した自分でも恐ろしいほどの怒りがアリーシャを駆け巡る。

 だが、なんとかそれを抑え込む。

 今は舞夜を慰める事に集中しなければならない。


「わたしが、ご主人様に怒ることなんてありえません。痛い事など言語道断です。ですが、もし不安であれば“服従しろ”と仰って下さい。そうすれば隷属魔法がわたしの行動を縛って、ご主人様に言われた事だけしか出来ないようにしてくれます」


「う、ううん……しない、よ……そんな事したらかわいそうだもん……」


 隷属魔法で結ばれた奴隷に、主人が命令の意を持って紡がれた言葉は、魔力を帯び服従を強制させる力となる。


 アリーシャは自分を救ってくれた舞夜に信用してもらえるのなら、彼の操り人形になる覚悟もしていた。


 その言葉とおりに服従を強制しなかったのは、舞夜の優しさもあるのだろうが、アリーシャの思いが響いたのだろう。

 おかげで、まだ不安げで言葉も幼児退行でもしたかの様な拙いものだが、彼の顔から異常なまでの恐怖の色ははなくなっていた。


 そうなると、アリーシャはどうしても気になってしまう事があった。


「ご主人様は本当に優しいのですね……。あの、ご主人様、こんな時に申し訳ありませんが、その、わたし……臭くありませんでしたか? 水浴びもしてませんし……」


「な、ないよっ臭くなんか……ア……ーシャの匂い、なんだか安心して、好き……」


 ——す!? そ、それに今の呼び方……かわいいっ……。


「うむぅっ!?」


 好きと言われ、更に混乱していて上手く名前を呼べないのか、舌ったらずな口調で紡がれた“アーシャ”という呼び名に、グっときてしまったアリーシャは、抱きしめる力を強めた。


「どうですか? 安心できますか?」


 自分の胸に顔を抱き寄せると、優しい声で問いかけ、舞夜の頭をゆっくりゆっくり撫でていく。


「ふぁ……」


「ふふっ、良かった。いい子いい子です……眠くなったら、このまま寝てしまって大丈夫ですからね?」


 返事を聞くまでもなく、その安心した様子を察したアリーシャ。

 舞夜が眠りにつくまで優しく包み込むのだった。





 ——くぅ~……ご主人様ぁ……。


 舞夜が眠りについて少し、怒りで煮えたぎっていた心も舞夜の安心しきった顔をみれば次第に癒され、もう一度、主をあんな状態にまで追い込んだ者達の殺害を心に誓うと、どうにか抑える事が出来た。


 すると怒りの代わりに押し寄せて来たのは、劣情だった。

 舞夜の寝顔と匂いや小さな吐息を堪能し、時折、甘える様に胸の中で頬ずりされる快感に身悶えていた。


 だが舞夜の寝顔は、怒りと同様、劣情の抑止力にもなった。

 そんな顔を見せられ誰が手出しできようか。


 それにやはり初めては、お互いを想いあって……アリーシャにはそういう憧れもあったのだ。


「正直、拷問より効きました」


 後のアリーシャの言葉である。


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