0話 主人と奴隷(恋人たち)の朝
朝——。
差し込む陽の光と小鳥たちのさえずりで、少年の意識は覚醒していく。
名は、“十六夜舞夜”。
小柄な体に、艶のある黒髪とパッチリとた黒目、少女の様な愛らしい容姿をした少年だ。
そんな舞夜の顔を、むにゅんっ。
と、柔らかな感触、それと甘い匂いが包み込む。
「おはようございます。ご主人様っ」
顔をあげれば、1人の美少女が優しく微笑みかけてくる。
その首には鋼鉄の首輪。
彼女は舞夜の奴隷だ。
「おはよう、“アーシャ”」
アーシャ……本名は“アリーシャ”。
腰まであるプラチナブロンドの髪、涼しげだが慈愛を感じさせるアイスブルーの瞳、白磁の肌と舞夜の顔を包み込んでしまえるほどの豊かな双丘……まさに絶世の美少女——。
そんな彼女のある部分が、ピコピコと上下する。
少しとがった長い耳。
アリーシャはエルフだ。
アリーシャの胸に抱かれながら、朝を迎える。
これが、舞夜の1日の始まりだ。
「ご主人様は、まだおねむの様ですね? ふふっ、いい子いい子です」
「こらやめろ。あ〜、ダメになる〜……」
舞夜の眠たげな表情を見ると、アリーシャは、彼の頭を更に自分の胸の中に深く抱き込み、優しく撫で上げる。
舞夜が抗議の声を上げるが、それは無駄だ。
アリーシャは奴隷でありながら、舞夜を愛している。
ゆえに、彼をどこまでも甘やかしたがるのだ。
「さぁ、たくさん甘えて下さい。そして今日はこのまま1日……ふふっ」
かと思えば、あまあまモードから一転。
獲物を狙う様に目を細くし、薄く口もとを歪め、妖艶な表情を作り出す。
そして、刺激を与えてくる。
通称“エロフモード”に突入だ。
「ねぇ、淫魔なんでしょ? エルフじゃなくて淫魔なんでしょ?」
「ぜひ確かめて見て下さい。ほらほらっ」
「ちょ、やめっ……いいだろう。淫魔かどうか確かめてやる!」
「きゃっ、ご主人様のけだもの〜」
そんなことに1日費やすのもどうかと思い、抵抗しようとするも、結局ヤル気にされてしまい襲いかかる舞夜。
それに対し、アリーシャが嬉しそうに批難の声をあげる。
毎日繰り返す、このやり取りに幸せを感じながら、舞夜は思い出す。
彼女との出会い、この世界へ転移して来た日の事を——。
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