表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

閑話、深夜の電話

それから俺たちは、なんと朝の3時に会うという約束を交わして、いったん別れた。

部長がいうのには、次は第3キャンパスを見に行くことになるんだけど、その時間が朝の5時らしい。

日の出かどうかという時間に行くのにも、七不思議の一つのためらしいのだが、たまたま午前中に授業がないということで、俺はそれにOKを出した。


午前2時、うっすらと意識が現世に蘇る。

簡単に言えば、起きたということだ。

その直後、携帯電話が鳴る。

その着メロは部長からの電話を意味している音だった。

「はい、なんでしょうか……」

眠い目を擦りつつ、俺は部長と思う相手へと聞く。

「今、あなたの部屋の前にいるの」

「はぁ?メリーさんですか?」

メリーさんなら部屋の鍵が閉まっていても、入ってこれますねと言う理由で電話を切る。

下宿先から大学まではだいたい10分。

だから、まだまだ時間はあるわけだけど、外は真っ暗だし、謎の電話もあった。

暇だけれど、外に出るわけにはいかないだろうと判断すると、まず顔を洗い、頭をしゃっきりさせてから、テレビをつけた。

今の時間、録画物や深夜アニメぐらいしか見る物がないということで、適当なテレビに合わせ、音量を少し下げる。

そこまでした時、また電話がかかってきた。

また部長からだ。

「はい、どうかしましたか」

「ねぇ、なんで開けてくれないの?」

「部長がメリーさんなんて古典するからでしょ」

「というよりも、起きていたことにびっくりだよ」

「ああ、今起きたところですよ」

研究室での光の乱舞のあと、俺は今までにないほどリラックスした気分でいた。

そのおかげかは知らないけれど、すぐに家に戻り、あっという間に寝たというわけだ。

「それで、部長も早いですよね。それに俺の家に来るなんて、初めてじゃないですか」

初めて、そう言って気づいた。

「……部長、なんで俺の家知ってるんですか」

携帯は教えたし、メアドも互いに交換している。

でも、家の住所は教えていない。

なら、この電話はどこからかけているのか。

その時、インターホンが鳴る。

ピンポン、ピンポン、ガタガタガタと扉をひっぱる音もする。

「ねぇ、なんで入れてくれないの?」

部長じゃない、そう気づいた時には手遅れだった。

その物の怪は、家へと入ってきたようだ。

玄関あたりから猛烈な寒気が押し寄せてくる。

「祓い給え、清め給え、護り給え、幸い給え」

電話の向こうから、スピーカーにしていないのにもかかわらず声が部屋中に響く。

「……無念」

そう言うと、途端に寒気は消えた。

「あとで、塩でも蒔いておいてね」

部長が電話の向こうで話す。

「え、ということは、この電話の部長は本物?」

途中、明らかに異質なところはあったが、主に通話していた相手は間違いなく部長のようだ。

思わず腰が抜けてしまい、へにゃへにゃとその場に座り込んでしまう。

「おーい、大丈夫かい」

部長の声がなければ、きっと俺は死んでいたか、あるいは喰われていただろう。

「ありがとうございます」

「いいっていいって。それよりも、待ち合わせ遅れないようにね」

「はい」

それで部長との通話は終わった。

でも俺は携帯をしばらく手放すことができなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ