プロローグ
小学校や中学校では、七不思議というのもあるだろう。
しかし、大学にも七不思議があるとは、入ってみるまで知らなかった。
もともと手野大学というのはあるはずではなかった。
似たような名前の工業大学や医療大学が私立であるためだ。
ちなみに、そちらの方は学校法人手野学園が設立者となった手野学園大学として2018年4月に統合される予定だ。
だが、2008年に起きた北大阪地震により、国立大学の一つが修復不可能となると、同じ府内にある国立大学で、なおかつ広大な敷地が確保できるとのことで白羽の矢が立った。
国立旧手野教育大学を母体とし、新たに国立大学法人 手野大学が設立されると、旧大の機能の全てを承継した。
だからだろうか、戦前からある校舎や、急造された建物が屹立し、なにやら不気味な雰囲気がある。
俺は手野大学第1期入学生として試験を受けて入学した。
そして部活は文芸部を選んだ。
小説が好きだということが一番の理由だろうが、春の部活の見学で回った時、一番暇そうだったからという理由もある。
第1キャンパスにある文化部棟の3階、角部屋が部室だ。
昔は15人ほどいたからここを与えられたそうだが、今は5人だ。
それも、幽霊部員がいるから、実質3人といったところだろう。
「ねぇ、知ってる?」
その中で一番部室に来ている部長が、俺に突然聞いてきた。
「何をですか」
「七不思議」
「七不思議ですか。まるで小学校みたいですね」
そう言いつつ、俺は考えていた。
これは、なかなか小説の題材としてはいいんじゃないか。
ちょうど季節は夏へと向かっている。
8月ごろにかければ、ちょうどホラーとしていいネタが整えられるのではないか。
「行ってみましょうよ、その七不思議」
「えー、いくのー?」
部長は嫌そうな顔をしてきた。
「行きますよ、ほらほら」
腕を引っ張って、無理やりに立たせると、俺がジュースおごることを条件についてきてくれることになった。
さあ、七不思議探しの開始だ。