あいたい
おかしなことに、愛というのは、突然降ってくるものらしい。
目の前で天使のように可愛いコが笑っている。
というよりは、笑っているように見える。
彼女はハムスターであり、僕の恋愛対象ではなさそうだ。
しかし、彼女のつぶらな瞳が僕のこころを捕らえて離さない。
人生に、「ジ、エンド」の烙印が捺された気がする。
それでもいい。このように誓った。
一方ハムスターの方は、つぶらな瞳でじっと彼を見つめていた。
この人間は、僕におやつを分け与えてくれるのだろうか。
ショップのおねいさんは良くしてくれたけど、
彼が気がつくタイプだとはあまり感じられない。
どちらかというと、鈍感で、花の水遣りを忘れるタイプだ。
僕は背筋が凍った。虐待されたらどうしよう。
しかし運命を変更することはできなさそうだ。
僕は諦めて、彼の家に行くことにした。
あ、ケージは大きめでお願いします!それそれ!
彼の部屋に行くと、やはり慣れないにおいがする。
彼はケージに僕の巣を設置し、床におがくずを撒いて、
回し車を取り付ける。餌と水も忘れずにね!
僕はとりあえず食事をし、家にこもることにした。
こいつ、すぐに巣に入っていってしまった。
俺はケージを覗いてがっくりする。
まあ良い。初めてだし、くつろいでもらいたい。
彼女と仲良くなるには、まず安心してもらうことだ。
スキンシップは徐々にということで。
俺はじっくり待つことになった。
数日経っても、まだ慣れる気配を見せない。
俺が同じ部屋にいても、巣にこもってしまうみたいだ。
会いたい……俺の可愛いハニー!
俺は巣を覗き込んだ。
僕が巣でぬくぬくしていると、
突然飼い主が巣をのぞいてきた。
プライバシーの侵害だと思う。
指を入れてきたので噛み付いてやった。
逃げていく。ざまあみろ。
僕は貯めこんだ餌をいっぱいに頬張った。
彼はどう思っているか知らないけれど、
僕には僕という生き方があり、
それに則って行動するのみだ。
それが分かれば、
彼は今よりもモテるようになると思うのだが、
皆さんはどう思われるだろうか。
以上、ハムスター視点でお送りしました。