表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/13

神凪

「迎えに来た」男は一人、ただそれだけを呟いた。目の前には古びた屋敷があるだけ、他はそれに似つかわしい広い庭が在るだけ、周りの木々は雑然とその意を示し、長らくそこに人の手が入ってない事を示している。


「囚われの姫を救いに来た王子様ってところかしら、源十郎、しかし哀れ王子様は、その行く手を阻む魔物に喰らわれてしまうのでした」芝居がかった彼女の声に答えるかのように無数の木偶が立ち上がる。


 目の前に立ちふさがる人形はまさに木偶、手はあり足もあり頭もあるが、そこに浮かぶべき表情はない。

幽玄ゆうげんか…、ここが、どういう場所か知っていて選んだのか」自身を取り巻く傀儡にんぎょうどもを一瞥して、ぼそりと彼は呟く。

「愚問っていうものね」その言葉が合図であったか、男に幽玄と呼ばれた傀儡達が男に群がる。


「ならば遠慮はしない、神凪」呼ばれて男の影より静かに出ずるは、緋の袴の巫女「静乱しらん」黙然と呟かれた声の主を中心として一陣の風が吹き荒れる。


「神凪、ですって!?」吹き飛ばされた木偶の中心に颯爽と立つ彼女を一瞥し、慶子が驚きの声を上げる。「三剣のうちの二振りまでが解封されているって、源十郎、これはいったいどういう事よ!! いや、いいわ、ますますあなたを亡き者にしなくてはならなくなっただけの事、ヴィクトリア、ニケっ、出陣っ!!」現れ出でた二体の速さは神速、人の目には二筋の光条にしか見えない。しかしそれを事も無げに神凪と呼ばれた巫女は受け止める。


「嘘っ!?」驚愕の声が響く。

「人型のモノに高速機動させれば、当然その軌道は限定される」その答えを男がぼそりと言う。「くっ、それでも、そんな旧式に私の人形が負けるはずが、ないっ」主の声に答えるようにして再度、影が交わる。しかし、結果は変わらず二つの影はただ一人の巫女の持つ小太刀にその動きを阻まれる。


「弱いとは言え、神を薙ぐ為に造られた三剣の一体ひとふりだ。そう容易やすくはない」男は変わらず緋の巫女の勝利を微塵も疑う様子はない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ