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人形の見た夢 その2

 そう、あの時、彼女の心は死に瀕していたのだ。その時の彼女はまさに人形としてそこに在るだけであった。主が命じ、それに、ただ、だくとのみ応じる。それだけの存在でしかなかった。神無かのじょは、彼女自身ともいうべき本当の彼女の心はすでにその時、自身の中で溺れかけていたのだ。


 彼女の生は無意味。それを承知したときから、彼女は”源十郎”の名を継ぐもの命令を唯々諾々いいだくだくと受け入れるだけの道具。ただ、それだけの存在カタチだった。


 あるものは彼女達に溺れ、あるものはその中に不死の夢を見いだし、あるものは彼女たちをただ都合のよい道具としてのみ扱った。次もそうだろう彼女達は新たなものとして生まれながら、そう扱われることはない。そう、たとえば、かつての主の望み通り世界が変わってしまうまでは。


 彼女は疲れ果てていた。永の年月としつきは人形である彼女達の心さえをも蝕んだ。この世からの消滅、それを望み始めたのはいつの頃からだったろうか、しかしその為の意志だけは彼女たちには与えられていない。初代、源十郎の行った行為の中で最も残酷な所行、彼女達自身に死の選択権はない。


 そしてそのこと自体が彼女たちを人形という道具にとどめてしまう。彼女の意志と呼べるものはその頃には半ば死に絶えていた。彼女の望みは、疲れ果てて、彼女の姉妹達のようにただの人形に戻る事だった。しかしそれすらも、三剣の一体ひとつとして造られたもう一人の彼女がよしとはしない。


 無くなる事等は怖くはない、打ち捨てられて壊れてしまえば良いのだ。ただの人形は夢など見ない、ただの人形はこんな孤独を味わうことはない。人形には過ぎた願いを抱くことはない。


 そんな時だった。彼に出会ったのは、彼だけが彼女を見つけてくれた。長い年月の中で彼が、彼だけが彼女に気づいた。気づいてくれた。彼女は淡い期待を抱いてしまった、彼は気づいた、気づいてくれた。彼女自身に、しかしそれは同時に怯えを彼女に抱かせた。それがうち捨てられなぶられ続けた人形の見た夢

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