神の箱庭/人形の見た夢 その1
−神の箱庭−
世界は、ままならぬ。世界は与えず、ただ奪い去るのみ。ならば、我が望みの答えは、己が神となりこの世界を作りなおせばよいのだ。己の思う様に
さて、そこで我は神と人間とを隔てるものとは何かと考える、運命を操る? いやいや、運命とは只の流れにすぎぬ。それにいくら神とて支流のことなど気にしてはおれぬ。
そこで我は考える"生命の創造"それこそが、神と人とを隔てるもの。人形師とそう呼ばれる男はそう思った。
それは短絡的な思考であったかもしれぬ。それは未だ神がその世に確として存在していた人の世の思考かもしれぬ。
されど、その強い信念のもと、その思考と試行により奇跡は成された。この世界の神を打ち倒す為に、この世界を己の傀儡で満たす為に鍛えられた人型。
一つは神裂く剣、一つは神凪ぐ楯、そして、最後の一体は神を封ずる為の封具。それらを総じて三剣と呼ぶ。
しかし、世界の操者たらんと欲した彼の為した奇跡はそこまで、以降、その望みはその名を継ぐ者に連綿と受け継がれて行く。
”源十郎”というその名を継ぐ者に
−人形の見た夢−
人形用の拘束具をその身につけられ、神無は静かにそこに鎮座する。沈黙に耐え切れなくなったのは彼女の方だった。
「神無、何か言うことは」
「否、人形は主の命に従うのみ、それが人形の存在意義、貴女様が私の主である事を示すのならば、私に否やはありませぬ」然として彼女はその問いに答える。
「VictoriaやNikeを利用するつもりなら、やめた方が良いわ、わずかながらとは言えこの二体には自意識が有る、そういうものへとの融合は同意が無い限りはできなかったはずでしょう」
「先刻、試させて頂きました」
「そう…」会話はそれぎり、再開される事は無く、彼女たちを乗せた無音ヘリは目的地へと着陸した。
そこに着いた彼女に懐かしいと言う感覚はなく、ただ嫌悪の感情のみ。浮かんだ感情を慌てて打ち消す。『いいえ、人形は痛みを感じない。人形は笑わない。使う者の心を映す鏡、それが人形。いいえ、それが私自身の意志。あの方の元を去る必要が生じたのならば、私は人形に戻ろうと、そう、決めた。あの時から。そう、あの時に決めたのだ。あの方があの中で溺れそうな私を見つけてくれたあの時から。』