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本家の人間現る その1

 その日の朝は五月蝿かった。

どこぞの誰かが彼の家のチャイムをひたすらに押しまくっているからだった。


 几帳面に整えられた作業場で黙々と作業に没頭していた長身痩躯のその男は、ちらりと壁にかけられた時計を見て酔っぱらいではないらしいと思った。古い鳩時計の指し示す時刻は午前の五時、まぁ彼自身は夜中の九時に就寝し朝の三時には起きているという生活が身についているので たかだか朝の五時くらいの訪問などはさして迷惑とは感じないのだが、…さすがにちょっとこれは近所迷惑た。


 やれやれと口の中だけで呟いて、能登のと 源十郎げんじゅうろうと呼ばれるその男は 閉所恐怖症のビーグル犬が描かれたエプロンをはずすと作業場から立ちあがった。


「遅いっ!」それが非常識な訪問者の第一声だった。「神無かんなはどこ?」瞬時にこの家の主の存在を無視して家捜しをした挙げく、侵入者は傍若無人な第二声をのたまわった。


 普段いつもの癖で無遠慮に侵入者を眺めやり、その顔の造形と過去の記憶を参照し、類似項を見つけ「ふむ、なんというか会った事があったかな?」等とのたまわってみる。と、予想通りくだんの人物は 一瞬、唖然とした顔をした後に、


「あ・ん・た・ねぇ、ぼうっと私の顔を眺めてるかと思えば、私の美貌に見とれていたとかそういうんじゃなかくて、延々と記憶の検索そういうことをしていたわけっ! 信じられない!! だいたい人形作りの基礎の基礎として骨格系の知識はみっちりやらされているはずでしょうが、変装さえ私達の前では無意味だっていうのに、そういう事を言うのはこの口かぁ、っていうかあんたほんとうに源十郎?」と、まくしたてる。


「ふむ、その直情径行とその言動、確かに慶子だな。…五年ぶりか」その激情を柳に風と受け流し、次いで「神無はいない、まぁ、上がれ、茶ぐらいは出そう」と必要事項のみを簡潔に述べる。


「…、まぁ、いいわ。そういう奴だったわよね、あんたって」あきらめたかのようにため息まじりに彼女はそう言った。


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