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クトゥルフ短編集  作者: 異次元からの猫
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豆腐

豆腐は名脇役。

きちんと手を加えれば主役にもなりますね。

 これから記すことは恐らく誰も信じてはくれないだろう。それだけではなく、私のことを心配し病院に連れていってくれるかもしれない。そこから一生出られないこととなっても。

 しかし、私はこの忌まわしき話を書かないわけにはいかない。早く自分の外に出さないと、このまま私の皮を食い破って来る気がするからだ。


 話の舞台は、近所で旨いと評判の豆腐屋だ。腕の良い老舗らしく、わざわざ遠方から足を運んで買いに来る人や、代理を立てて買っている人も居るくらいだった。

 私の幼い頃は、普通の豆腐屋だった。ところが、東京の大学から地元に戻ってきたときには、日本有数の豆腐屋になっていた。

 商品は絹ごし豆腐のみ。その豆腐は、大トロのように口の中で蕩け、まるで肉と間違えるほどの味と確かな大豆の旨味が襲いかかり、口の中にたっぷりと余韻を残す。そんな豆腐だった。もちろん、私も虜になった。


 そんなある日、会社の飲み会で夜中に帰っているとき、偶然店の前を通りかかり、見てしまった。

 丸々と太った人ぐらいの大きさの、豆腐ぐらいの色合いと光沢を放つ名状しがたき何かから、豆腐屋の店主が豆腐ぐらいの大きさの塊を切り取り、豆腐の桶にいれているのを。

 そして、そのときの店主の表情も見てしまい、すぐさま逃げ帰ったのだ。見付かってしまったら…。


 その次の日、私の町を直下型の大地震が襲った。誰もが地面にしがみつき、顔を上げることもままならなかったが、私はあの夜に感じた忌まわしくも、あの夜より巨大な気配を感じ、顔を上げてしまった。


 そこには…あの豆腐屋を下からのみ込んでいる、豆腐の様な色合いの巨体な円柱形の生き物が…。


 気づくと病院の一室に。身体に異常はないので、目が覚めたら帰れるそうだ。


 その日から地震が頻発している。

 私の中に居る、やつの仲間を取り戻すためだろう。地震が起きる度に、自分の腹のなかで蠢く物を感じる。


 また、地震だ。


 ほら、今も…。

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