居眠り
デート中に居眠りしちゃった。てへぺろ。
「はっ!」
いかんいかん。デート中に少し寝てしまったようだ。相手は数年来の付き合いがある彼女だが、申し訳なく思う。
しかし、謝ろうにもどうやら、トイレにでも行っているのか、向かいの席にはいなかった。
それにしても、まだ寝惚けているのか、喫茶店の中に居る他の客が、シルエットとしてしか認識できない。
その真っ黒な人影に囲まれながら、彼女を待つ。ところが、いつまで待っても帰ってこない。
どうしたことかと、寝惚けたまま店員とおぼしき人影に声をかける。
すると、先程出て行かれましたと、蚊の鳴くような声で伝えてくる。
これは不味いと、はっきりとしない頭を抱えたまま、店を飛び出し彼女を探す。
店を飛び出したところで違和感を覚えるが、今はそれどころではないと、回りを見回す。すると、遠くに見覚えのある後ろ姿が。
急いで追いかける。一度へそを曲げると大変だ。今日の夜は高いところに食べに行かなきゃ。
輪郭のぼやけた黒い人影を掻き分け、ねじくれた道を走る。そして、駅へと続く路地に飛び込んだ。
おかしい、この路地の壁は真っ直ぐ立っていない。そのせいで、空も見えない。そう言えば、さっき走ってた大通りでも空が見えなかった。
漠然とした不安を覚え、叫びそうになる直前、彼女に追い付いた。
「良かった。ここはどこだい?早く帰ろう。」
振り返った彼女の顔は真っ黒で…輪郭も…
「起きて!大丈夫!?かなりうなされてたけど?」
目を冷ませば、喫茶店の中。彼女がこちらを覗き込んでいる。
「あ…。ありがとう。怖い夢を見たんだ。」
「どんな夢だったの?話せば怖くなくなるかもよ?」
夢の内容を詳しく話すと、彼女は納得したような表情になり、一言。
「…あぁ。そう言えば、そろそろ星が揃うものね。」