まるで・・・
「はぁ…。」
階段に重いため息が落ちる。ここは市立図書館の2階へと続く階段。あともう数ヶ月で受験生になる篠崎まりは自習室を利用しようと階段を上っていた。
大体、せっかくの冬休みだっていうのに、なんで毎日毎日勉強しなきゃなのよ・・・。
憂鬱な気分でこの階段を上ることは1週間前に冬休みに入ったまりの日課になっていた。
しょうがないと言えば、しょうがないんだけど・・・。希望校には入りたいし。まあ、ぐだくだしても意味ないし今日も1日頑張るか・・・。
少しだけやる気を出してまりは階段をコツコツと上りきり自習室に向かう。自習室の窓から中を見遣るとはもうすでにまばらに席が埋まっていた。
いつもの席まだ空いてるかなぁ。
空調の効きがちょうど良く窓から外が見えるその席をまりは気に入っている。勉強の合間に移りゆく空や道行く人々を眺めるのがまりの習慣だった。
自習室のドアを開けその席を確かめる。どうやらその席の一つ隣に座っている大学生風の男の人が荷物置きにしているようだ。
あ、あの人いつもいる人だ。今日は私の方が遅かったのかぁ。じゃあいつもの席の一つ前でいっか・・・。あそこちょっと空調が弱くて寒いけど仕方ないよね。
開いたドアの音で何人かがこちらを見る。まりのいつもの席を使っている男もこちらを見たので、まだそちらを見ていたまりはばっちり目が合ったような気がして、落ち着かなくなった。
隣の人あんなかっこよかったっけ?いつも隣なんてちゃんと見ないしなぁ。
なんだか急に焦ってきて、まりはさりげなく目線をずらし、再びその席をちらっと見た。するとその人はまりのいつもの席に置いていた荷物を片付け始めていた。
えっ。なんでそんなこと・・・。
まりはその行動を疑問に思いながらいつもの一つ前に座ろうと進んで行く。
すると片付け終わったその人がこちらを見たのがわかった。その人は隣の席を引きながら、あろうことにか、まりに向かってちょっと気まずそうに手招きをしてきた。
えっ。私にしてるの?
さっきの落ち着かなさと焦りを再び感じ、まりは恐る恐る自分を指差しその人目で確認する。その人はそれを見て大きく頷き、困ったような笑みを浮かべる。そしてその表情のまま、口パクで良かったら、とまりに言った。
まりはどくどくと大き脈打ち始めた自分の心臓の音を気にしないようにしながら、足を進める。いつもの席への数メートルの道がこんなにも長く感じたことはなかった。
まりが席まで来るとその人はどうぞ、と小さく言って、再び困ったように笑いながら椅子を指差した。
「あ、ありがとうございます!」
何、普通にお礼言ってるの、私!もっと何か、気の利いた事言いなさいよ!えっと、何か何かもっと・・・。
「いえ、あの、じゃあ、その、勉強頑張って。」
まりの焦る思考はそんな歯切れの悪い言葉によって遮られた。
「え、あ、はい!頑張ります!」
まりの心臓はまだ、落ち着こうとしない。むしろ、一層早く動き始めていた。
まりはどこかふわふわした心もちで席についた。隣の席から本のページをめくる音が聞こえてくる。バッグから筆箱と教科書を出し、隣をちら、と見る。
目と、目が、合った。
また、高鳴る心臓。
これじゃ、まるで私・・・。
まりは思わずふっ、と小さく笑みをこぼした。
それもそれで悪くない。
まりは図書館に通うこれからの毎日が楽しみになるのを感じた。
まるで私、恋しちゃったみたい。
読んでくださってありがとうございます!
これが私の初めてのの作品となります。
もしかしたら続編も書くかもしれません。
そのときはそちらも読んでいただけると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします!