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野郎達の英雄譚  作者: 銀玉鈴音
第一章 絶望の迷宮
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第一話 目覚めたら英雄

 日付・時刻不明



 ベルウッドの目覚めた場所は、戦場であった。


「うう……イテェよぉ……」

「痛いよ……おかーさん……」

「……っぐぅ」


 ベルウッドの目の前に倒れていたのは、多種多様の呻き声を上げて全身で苦痛を表現する、煌びやかな鎧を纏った戦士達だ。

 自身も多少の痛みを感じる。小指を箪笥に打ち付けたような、無視できない痛みを全身から感じる。無視できない痛みを意思の力で捻じ伏せ、周りを見渡す。


 邪悪な気配漂う、ドーム状の大広間。明かりが少なく、薄ら暗い。周囲の松明のような物で照らされる足元は、岩を荒々しく切り取ったかのような、荒い石畳。その表面はヌルっとした質感を保っている。

 その空気はひどくよどみ、血の匂いはあたり一面に広がっていた。


 数瞬、茫然自失となった。立ちくらみ、片膝をつきそうになるのを堪えたベルウッドは、己の姿を確認した。


 身に着けていた物は、彼が毎日見ていた、金色の豪奢な刺繍を悪趣味なまでに入れ、中に鎖帷子を仕込んだ修道服。腰には聖櫃な輝きを湛え、邪悪を打ち払う神聖な気配を漂わす戦棍(メイス)。背中に背負った丸盾(ラウンドシールド)も美術品かと思われるような彫刻が施されている。


 ――これは、自分が望んだ世界なのだ。

 ベルウッドに天啓が下る。何を為すべきかは既に彼の頭には浮かんでいた。


 ――自分なら、出来る。

 体には全能感が漲り、力が今にもあふれ出さんばかりである。


「<癒しの光>よ…癒せ…!」

 それは、ベルウッドがディープファンタジーを始めてから、数えるのが馬鹿らしくなるほど使用した修道者の基本スキル。彼が、幾千、幾万回使用したかは判らない。


 ――たとえキーボードが無くとも、マウスが無くとも。そうだ、こんな風だ。

 脳裏によぎるのは、画面を見ずとも、食事を取らずとも、寝落ちしていても、PTメンバーの(HP)を保ち続けていた己の過去の記憶。

 ――それに比べたら、何だ?妄想(ゲーム)が現実になった程度で何が困ることがある。

 魂の底に刻まれた、体が覚えている使い方。


 光がベルウッドの右手から溢れだす。


 銀色の戦士には、突然襲い掛かってきた痛みが何なのか、全く判らなかった。

 意識が戻ったら、両足が動かず、物凄い痛みに襲われる。どんな人間でもこの状況で理性を保つ事は難しい。乱れる思考で意味を為す言葉が紡げない。血が足りず、苦痛を訴える悲鳴すら上げられない。

 その時、銀の戦士の身に更なる異変が起きた。暖かな光が全身を包む。

 妙な方向に捻じ曲がり、両足の具足から飛び出していた骨が、見る間に体の中に戻り、整復される。破れた肉と皮膚が綴じあわされ、ちぎれた血管と神経が繋がる。喪われたはずの血液が全身を循環する。


 耐え難い痛みが見る間に消失し、銀の戦士は意味のある言葉を発する事がようやく出来た。


「え、マ、マスター? これは一体?」

 一命を取り留めた銀の戦士は、まるで神に出会ったようだと思う。

 例えそれがどんなに異常な状況でも、その姿を見ただけで判ってしまったのだ、彼は自分のギルドマスターだと。


 ベルウッドは大した事はしていないという表情で、銀の戦士に問いかける。


「ギンスズ、回復薬(POT)は持っているか」

「えっ」

回復薬(POT)だ。腰のポーチに入っているだろう」

 ベルウッドの問いに迷いは無い。ギンスズは慌てて腰のポーチを探り始める。

「はい! あります!」

 為すべき事が判っているかのように、ベルウッドはギンスズを残し歩き始める。

「見つけたらギルメンの負傷者に飲ませろ。急げ。自分は重篤者を癒す」


「はいっ!」

 ギンスズは自分のマスターの言葉に忠実に従い、ギルドメンバーを探す為に走り出した。



 日付・時刻不明―ベルウッドの目覚めから約70分後。



 ベルウッドは自分のギルドメンバーを探し、癒し、指示を与える。その最中も、思考を休める事は無かった。既にギルドメンバーの負傷者はほぼ居ないはずだ。

 ――ここは間違いなく、自分の思っている通りの場所だろう。

 全身に漲る感覚は<神の祝福>の効果に違いない。そう考えたベルウッドは、残りの効果時間を逆算する。

 ――最後に神の祝福を掛けたのは、23:33時点。今まで通りならば既に切れていてもおかしくない。

 <神の祝福>の効果時間は30分である。それが何故、1時間以上継続しているのか。その現実は一つの推論を導き出していた。

 ――どちらにしても、ギルド内部で死傷者が出ていない事は僥倖だった。


「おい、これどうなってるんだよぉ!」

「とりあえず落ち着いてください! お願いします!」

 パニックに陥った老魔法使いを、ギンスズがなだめようとしていた。


 ――とりあえず、パニックを起こされるのが一番厄介だ。

 ベルウッドは近寄り、老魔法使いに鉄拳制裁を加える。


 ゴリッと右手の骨に響く音を、老魔法使いは頭の骨で聞く事になっただろう。


「ちょ、おま。一体誰だよ! いきなり何しやがる!」

 老魔法使いの抗議の声を受け、<慈悲の輪>をベルウッドは発動させる。


 ――自分の拳が与えた程度の負傷(ダメージ)には、勿体無い話だ。

 神秘的な、重力に逆らうほの白い円状の光が大地から放出される中、ベルウッドは老魔法使いに向かって断言する。


「判らんか、オジジ(OGG)。自分だ。ベルウッドだ」


「マスター!」

「ベル? 嘘だろ、ちょ、おい……」

 ギンスズは安堵し、オジジはひどく狼狽する。


 ――この推論が正しかった場合、自分達は、短期的にも長期的にも危険な状況に置かれている。

 ベルウッドは想像しうる最悪の状況を想定し、それに対応できるよう備えねばならない。それが集団の頭である自分の使命だ。そう考える。


「いいか、良く聞け。オジジとギンスズはここに居る全員を集めるんだ。いいな?」


「あ、え、お、おう。判った」

「はい、マスター」

「行け、出来る限り急ぐんだ。話を聞かん奴らは無視してもいい。自分はギルド外の負傷者の救護に回る」

 頷き、慌てて走り出した彼らを見送った後、ベルウッドの体に漲る全能感が抜ける。この間、目覚めてから約72分。ベルウッドはほぼ確信した。



 日付・時刻不明―ベルウッドの目覚めから約72分後



 チャカの寝起きは悪い。


 大体の場合、体力の限界までモニターに向い、寝落ちするからだ。ただ、普段のそれを上回る体の痛みが全身を襲う。朝のはずなのに、薄暗い部屋がチャカの目にはいる。チャカの全身が痛みを訴える。まるで岩の上で寝たような痛み。幾ら何でも寝落ちではこんなに体は痛くならない。チャカは記憶を探る。


 ――昨晩何してたっけ?ディープファンタジーの最終日イベに参加して…どうだっけ?その後どうしたっけ…?

 チャカはぼんやりと上半身を起こし、記憶をまさぐり続ける。頭が重い。周りを見渡す。


「うう、最悪…いつ寝たんだっけ」


 チャカの周囲は見慣れない空間であった。見慣れた空間でもあった。混乱する。


 ――私、まだ夢見てるのかなぁ、最近あんまり寝てなかったからねぇ。アハハ。


 チャカの目の前には化け物の死体。巨大な、人間の顔の大きさをはるかに超えた顔。6対の腕のうち、右腕達があらぬ方向にへし折れた、2対の脚を持つ化け物の死体。


 ――頭重いなぁ。最近髪の毛切ったばっかりなのに。


 近所の床屋に行って短く切りそろえたはずの頭から、白い毛が大量に垂れ下っていた。頭が重いのはこのせいか、とぶるぶると頭を振ると、サラサラと追従するように動く、白金の毛。随分としつこい邪魔者だと、チャカは思った。


「なに、これ」


 先ほどから感じていた違和感の一つは、声であった。チャカの声は野太く、けして他人に自慢できるような声では無いはずであった。

 それがどうだ。耳にはいる声は綺麗なソプラノヴォイス。常々妄想していた、チャカの声と全く同一ではないか。


 自分の手を見る。

 見慣れた右手中指第一関節に刻まれたペンだこと、右手首付け根に刻まれた分厚いマウスだこと無縁な、小さな手。病的なまでに真っ白で、滑らかな肌を持つ小さな手が、チャカの意思に応じて動く。


 自分の頭を掻き毟る。乱暴に掻き毟ったせいか、数本の毛が手指に絡まって抜けた。指に絡まった毛は、白金の髪の毛。サラサラとした触感の、長いプラチナブロンドだった。


 己の体を見る。全身を締め付けるかのように鎖と針をあしらったレオタード状のインナーと、黒いノースリーブのローブ。今までずっと背後からよく見ていた『呪われた針の筵のローブ』だ。体は凹凸に乏しいが、そこから伸びる手足の肉は柔らかい。


 その顔には、見た者を魅了してやまない濡れたような真紅の瞳がある。整った顔が混乱と驚愕の表情に彩られる。


 チャカがモニター越しに見つめていた姿が、そこにあった。


 ――もしこれが夢で無いなら、悪夢の始まりなんだと思う。



「え、ああああああああああああああああああああああああ?!」


 ひどく透き通った、チャカのソプラノボイスの悲鳴が響き渡った。



 ナイトウの全身を苛むのは、どこで作ったか分からない無数の切り傷と擦過傷、そして全身の打撲痛。

 その一切を無視して、ナイトウは悲鳴を聞いて飛び上がった。


 ナイトウの持つ数少ない資格のうち、施設警備業検定2級は前職の警備員時代に取った物だ。その為ナイトウは職業を尋ねられたら自信を持って言う。「オレの職業は自宅警備員だ」と。

 その警備員としての性か、それとも別の理由か。ナイトウは悲鳴の発生源を探し、駆けつける。

 ――異様に体が軽い。何だこの服は。ゾロゾロして走りづらい。ガチャガチャバックが煩い。


 ナイトウの、不精と煙草が祟って、走ると息切れするはずの体はその疾走に何故か耐える。


 ――そんな事は知らん。どうでもいい。とにかく駆けつけろ。


 視界に映ったのは、小山のような何かの陰にへたり込む天使(チャカ)と、倒れ伏す金髪の若武者(タイタン)だった。


 ――まるで勇者を迎える天使か何かじゃねーか。随分なコスプレ野郎だな。

 ナイトウの本質は善良な小市民である。少なくともナイトウはそう思っている。

 よって、怪我人や具合の悪い人を放っておけるほどの度胸は、ない。


「あ、あの、だ、大丈夫ですッか」

 長い間他人と喋る事をしていない為に、ナイトウの口は上手く回らない。どもるのだ。思わず恥ずかしくなって、横を向く。


 ナイトウは横を向くべきではなかった。


 そこには、頭蓋を叩き割られて、デロリとした、中からはみ出してはいけないものがはみ出している、巨大な、1mほどもある人の顔が存在していた。

 目玉が半ば飛び出し、舌がだらしなく開かれた口からにょろりと垂れ、鋭く伸びて尖った犬歯は片方のみ。真っ赤な血ぼたぼたと垂れ落ちるその様を見たとき、ナイトウは情けなくも絶叫した。


「ギィヤアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 ナイトウが悲鳴をあげた後、その天使(チャカ)も同様に悲鳴を上げた。金髪の男は、寝ていた。


 その後、鼻腔を襲ったのは、物凄い血の匂いと、焼け焦げたたんぱく質の匂い、ドブ川の腐ったような匂い。ツゥンと来る尖った酸の匂いや、鶏を解剖したときの、腸を間違って破った時の匂い。それらがミックスされた物凄い悪臭だった。


「うぶっ、お、げぇぇええ」


 チャカは喉元にせり上がってくる胃液を押さえる事が出来ずにビシャビシャと吐く。胃液しか出ないが、空っぽになるまで吐いた。ナイトウもゲロゲロと吐いた。


 吐くだけ吐いたら、チャカは落ち着いた。ナイトウは未だ吐いていた。


「あの、大丈夫ですか?」

「あ、う、あ、うん、大丈夫。お嬢ちゃんこそ大丈夫かい。ニホンゴハナセマスカ?」


 ――ニホンゴハナセマスカというのは私が聞きたい話だよ。

 目の前の怪我人(ナイトウ)は、平凡な日本人の顔からは離れていた。チャカの基準から見たら、相当の大男である。その上、全身傷まみれである。見た目からして痛そうなのに、わざわざ駆けつけてくれたのだ。邪険な対応は出来ない、と思うチャカ。


「はい、大丈夫です。多分なんともありません、大丈夫です」


 なんともないわけがない。何でこんな格好をして、何でこんな状況に陥っているのか、誰か説明して欲しい。切にチャカはそう思う。

 だが、目の前の怪我人(ナイトウ)は逆に自分を気遣ってくれているのだ。この際多少の事は飲み込むことにしよう。


 ――なんで、初対面のはずの「男」の名前が、脳裏に浮かんでくるんだろう。なんていうか、目の前の(ナイトウ)が誰だか判ってしまう自分が嫌だ。

 チャカは誰だか判らないはずの「男」を見る。知らないはずなのに、知っている。


「あの、すみません。本当に済みません。あなたのお名前は、何ですか?」

 鈴を転がすような声で、チャカは目の前の(ナイトウ)の名前を確認するのであった。



 ナイトウは暫く硬直し、空回りする思考を必死で押さえ、天使(チャカ)からの質問に必死で回答を探す。

 ――オレの人生に春が来たかも知れにあ。目の前の女の子はゲロまみれだが極めて天使だ。いや、オレもかなりゲロまみれだけど、女っケのない人生、大学で話しかけたら汚物呼ばわり、ストーカー呼ばわり。社会に出たら男まみれの職場しか経験したことないオレですが、ここで一発女の子の友達を作ってリア充にステッポうpするしかない。いや、ここマジでどこか判らないけども。なんか体中怪我まみれだけど。ブロント様もこういっていたではないか。お前それでいいのか?と。いや良くない。どちらかというと大反対。ここでチャンスを物にしないとオレの人生がブラックカラーなのは確定的に明らか。


 そして再起動する。背筋を伸ばし、ビシィと全身を硬直させる。

「伊藤史郎! 30歳! 現職は自宅警備員です! 体の丈夫さには自信があります!」


「あ、いえ、そうじゃなくて」

 ――一体どこの面接だよ!そうじゃないよ!職業聞いてないよ!大体それ職業じゃないよ!長所とか聞いてないから!

 チャカは、この突っ込みを入れるべきか悩んだ。悩んだが飲み込んで続ける。


「あの、私の頭がおかしいと思うかもしれませんが、聞いてください」


 ――もしこの質問が予想通りなら。この男は…

「もしかして、ナイトウさん…じゃないですか? あの、マジックナイトウさんじゃないですか?」


 ――この天使(チャカ)、いきなり何を言い出すのか。

 ナイトウはその問いにどう答えればいいか、悩む。

 ――確かにオレのプレイヤーネームはナイトウだ。だけどもそれを聞くこの天使は一体何者だ。いや、もしかして、その、30にもなってこんな妄想は口に出すのをはばかられる。しかし、だ。非常識すぎるが、その、なんだ。


 ――自然とこいつの名前が頭に浮かんでくる(、、、、、、、)のは、何故だ。


 ナイトウが覚えている限りの状況と、この状況は一致している気がする。タイタンが横で寝ている事と、チャカの目の前に『邪神』がいた事と、その装備。それでも一致しない部分も多い。そもそもここまでリアルじゃなかった。モニターの中と違って、圧倒的な存在感を放っている。生々しい匂いも充満している。でもしかし、だ。


「も゛、もしかして、君、チャカ?」


 チャカは泣きそうな顔をして、頷いた。



 日付・時刻不明―ベルウッドの目覚めから約100分後



 タイタンが目覚め、お約束の様に絶叫を上げる。チャカとナイトウはそれを落ち着かせた。三人とも状況は良く判らないが、ありえないような異常事態だ、ということは理解できた。


 ――私が狂ったんじゃないなら、世界の方が狂ったんだ。

 そう思う。自分達は狂ってない。そう信じる。そして、チャカなりの答えを出す。


「多分、ここは、絶望の迷宮だと思う」

 そう、多分間違いない。悪夢じゃないなら、とチャカは語った。


「そんな馬鹿なことがあるかっ!」

 タイタンは未だに混乱していた。わめき散らす。

「馬鹿馬鹿しい、お前ら俺を担いでるんだろ。そうじゃなきゃ俺が狂ってるだけだ。なぁ、チャカ、ナイトウ、お前ら二人して担いでるんだよな?」


 いや、本当はうすうすタイタンも気がついていたのだ。二人ともタイタンに名乗ってなどいない。自然と名前が出てきたのだ。今まで見知っていた旧知の友の名前が。


 その時、物凄い存在感を放つベルウッドの声が割り込む。

「取り込み中済まないが、少々宜しいか?」


「どちら様でしょうか?」

 冷えた声でタイタンが立ち上がりながら、ベルウッドに答えた。


「失礼、自分はベルウッドと申します」


 名前を聞いて、チャカ達三人は固まる。

 ゲーム内でも引きこもり気味だったチャカでも知っている、有名な元BOTer兼RMTer、大規模ギルドレゾナンスペインのギルドマスター、ベルウッド。彼と敵対して潰されたギルドの噂は事かかない。

 零細ギルドに所属するチャカ達に、接点は殆どない。

 一体何の用事だ、とタイタンは思う。


 ベルウッドは多少の苛立ちを含んだ声で、タイタンに訊く。

「貴方がPTのリーダー、で宜しいか?」

「リーダーかどうだかは判らんが、アンタと話しているのは俺だ」

「其方のPTに怪我人等は居ないか?」

「は?」

 タイタンは間の抜けた声を上げた。苛立ちを更に増すベルウッドの声。

「ああ糞ッ。状況がまだ把握できていないのか! いいから質問に答えろ、『怪我人』はここに居ないか!」


 その怒声と、この圧迫感を覚える空気。立ち上がると2m近い巨人のようなベルウッドとタイタンの声と迫力に、チャカは怯える。子供の体であると言う事はそれだけでチャカの心を弱くする。


 チャカの心臓が早鐘を打つ。


 ギンスズがその場に駆け込み、ベルウッドに対し、報告する。

「マスター!人員把握と怪我人治療ほぼ終わりました。総人員97名中、死亡者1人です。他は全員回復薬(POT)で何とかなりました」

「ここに3人、総人員100人。生存者全員を一箇所に集めておけ。話がある」

「はいっ!」

「あと、死人も集合場所に運べ。蘇生を試みる」

「ラジャ!」

 置いてけぼりなチャカ達を振り返り、ベルウッドは言い残す。


「腰のポーチだ、回復薬(POT)ぐらい持ってきただろう?」

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