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キングダムパーティー  作者: 渡雪
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第2話 模擬戦

 ミラとガーネットが修練場へ着いた時には、既に数人の隊士が自由に体をほぐしたり、雑談をしていた。二人の到着に気づいた隊士の一人が、歩み寄ってきた。その男の手には身長ほどあろう大剣が握られていた。


「よー、ガーネット。そっちの初めてみる顔が新人隊士って奴か?」


 男が興味津々の目でミラのことを眺める。ミラはその視線に威圧されて、思わず距離を取りそうになる。

 ガーネットは男の態度に深々と溜め息をつき、男とミラの間に身体を入れる。


「そこ、こら。初対面の人間を怖がらせない。紹介するね、この目つきの悪い男はグリーフ。今のところ、私に10連敗してる男よ」

「だから! 今日こそは絶対にお前に勝つ!」


 グリーフは大剣を両手で構え、剣先をガーネットの顔に向ける。


「はいはい、ごめんなさいね。ミラと手合わせする予定だから、あんたの相手をする暇なんてないの。ほら、行った行った」


 グリーフの剣を押しのけて、適当にあしらう。そして、修練場の空いているスペースに移動し、そこで軽く動いて、身体を温める。


「じゃあ、早速打ちこんでみて。無理はしない程度にね」


 ミラは息を大きく吸い込み、ゆっくりと吐き出して、呼吸を整える。手合わせと言っても、油断をすれば怪我は免れない。気持ちを落ち着かせて、しっかりと前を見据える。右手の剣を前に向け、左手の剣は状況に応じて自由に動かせるように軽く握りこむ。

ガーネットは準備万端といった様子で優しい笑みを浮かべて、剣を構えている。後輩の実力が見れて、うれしいのかもしれない。


「では、いきます」


 ミラは最初の一歩を踏み出した。





「うむ、みんなしっかりやっているな」


 隊長室で仕事を終えたレオルは、やや遅めに入ってきた。時計はまだ開始の時を指していない。にも関わらず、八割程度の隊士が修練場の中にいた。


「さてと、私も――」


 隊士に混じって体を動かそうと、剣に手をかけた瞬間、


「隙アリ!」


 レオルの背後から一人の男が剣を手に迫ってきた。レオルと男の距離が後一歩といったところで、気配に気づいたレオルは瞬時に剣を抜き、迫りくる剣を横に弾いた。


「何の用ですか? ヒューレ第5部隊隊長」


 苦虫を噛み潰したような顔でヒューレを見るレオルに対して、襲撃した当の本人は悪気のない涼しい顔で笑っている。


「いやいや。レオルの隊のみんなが楽しそうに剣振ってるのを見てたら、俺もなんか動きたくなっちゃってね。最近は体も鈍り気味だから相手をお願いしたくてね」

「ストレス発散ぐらい自分の隊でしてください」


次々と打ちこむヒューレの剣をレオルは、最小限の動きでいなし続ける。


「うちの部隊は規律と副隊長が厳しいから勝手に模擬戦とか出来ないんだよね」


 レオルは自分勝手な先輩の行動に大きく溜め息をつきたくなった。

 いつの間にか会話をしながら結構本気で攻防を繰り広げている二人を中心に手を止めた隊士たちが囲んでいた。


「だからって何でうちの隊に来るんですか」

「だって他の隊長って俺より先輩じゃん? 気楽に来れる部隊がここぐらいしかないんだよね。よし、わかった。この模擬戦でレオルが勝ったら、金輪際この隊に来ることはやめよう」

「隊長は普通、簡単に他の隊に侵入しないんですけどね。いいでしょう、その条件呑みましょう」


 そう言ったところで、今まで一方的に防御していたレオルが徐々に攻めに転じるようになった。これを機に面倒な先輩を追い出そうと考えた。


「そうそう、そうこなくちゃ!」


 レオルに合わせてヒューレの動きも確実に加速していく。二人とも相手の剣を紙一重でかわし、最小限の動きで剣を振る。実力はほぼ拮抗していて、決着は長引くかと思われていた。

 しかし、それは意外な程早かった。


「ハハハッ、楽しくなっ――「この馬鹿隊長!」


 一人の女が二人を囲む隊士たちを飛び越えて、体勢を立て直そうとしたヒューレの頭に着地し、そのままジャンプする反発でヒューレの頭を地面にたたきつけた。


「ん? 君は確か……」


 しっかりと着込んだ女性用の部隊服、丁寧に磨かれ、腕に巻いてある副隊長章にレオルは見覚えがあった。


「どうも、第5部隊副隊長ファニール・リスエスです。うちの隊長がご迷惑をかけました」


 丁寧に礼をするファニールの手は、腕と脚をだらりと伸ばしたヒューレの服の襟首をつかんでいた。抵抗しない辺り、どうやら気絶しているようだ。


「そうだった、ファニール副隊長。出来れば君たちの隊と練習試合がしたいんだ。もちろんそちらの予定が良ければだが」


 ファニールは一瞬悩む素振りを見せたが、すぐに答えた。


「良いでしょう。人数は5人、日時はそうですね、今日から10日後でどうでしょうか。場所は後々連絡します」


 その返答にレオルは満足そうに頷く。

それでは、と言ってファニールはヒューレを引き摺りながら修練場を出ていった。


「みんな、聞いての通り10日後に第5部隊と練習試合が決まった。そして、今からの模擬戦をその練習試合の選考会にしようと思う。4連勝した隊士をその練習試合に出そうと思う。ルールは相手の武器を落とすか、膝をつかせれば勝ちだ。怪我をしないようにがんばってほしい」


 レオル隊長の声が修練場内に響くと同時に、隊士たちは近くにいる仲間と剣を交えて、模擬戦を始めた。


「面白そうなことになってきたね」


 その光景を修練場の壁際で眺めていたガーネットは隣にいるミラに話しかける。


「皆さん本当に元気ですね」

「まあね。さてと、私も戦いに行きますか。ミラも頑張って勝ち残ってね」


 ガーネットはそう言うと、模擬戦をしている中に入っていった。ミラもそろそろ相手を見つけないと、と思い、壁から背中を離す。


「新人隊士」

「は、はい!」


 急に横からかけられた声に驚いて、声の法を向くと、グリーフがそこに立っていた。


「お前俺と勝負しろよ。ガーネットを倒す前の準備運動にはちょうどいいぜ」

「わかりました。受けて立ちましょう」


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