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02 異変

 シオンは暖かい家族の元、すくすくと成長していった。

 異変が訪れたのはシオンが三歳になったある日のこと。



 朝から天気が悪く激しく雨が降っていた。


 その日は父も兄も用事があって出かけていて不在。母は不在の父の代わりに客人の対応に追われていた為、シオンは一人で遊んでいた。


 悪天候の為、外で遊ぶこともできない。

 そんな時の彼女の遊びは屋敷の離れにあった小さな塔を探検すること。もう何度も登っていたが、毎回新しい発見がありとても楽しい遊び場だった。


 塔の最上階へと到達した彼女目に留まったのは小さな窓。シオンはその時、先ほどまで聞こえていた雨の音が聞こえないことに気がついた。

 雨がやんだのならば外で遊べるかもしれない。


 そんな期待を胸に近くのものを踏み台にして窓を開け、顔を出して外を眺める。しかし雨はまだ降り続いていて、がっかりしたのだった。


 ――その瞬間。


 シオンの目の前、塔の横にあった木に雷が落ちあっという間に炎が燃え上がった。


「うっ……」


 突如ズキンという激しい痛みがシオンを襲う。

 雷にも燃え上がる炎にも触れたわけではなく怪我などをしたわけではなかった。

 動悸が激しくなり、うまく息をすることもできない。

 頭の奥底に響くような激しい痛みにしばらく耐えていたシオンだったが、痛みは治まるどころか次第に酷くなっていく。

 あまりの痛さと息苦しさにシオンの意識は朦朧とし、ぐらりと体が傾いた。


 その時のシオンは窓から乗り出すように顔を出して外を眺めていた。

 大人と違い小さな子供は重心が偏りバランスが悪い。あっという間にバランスを崩した体は重力に逆らうことなどできず窓から落下していく。


「シオン!」


 息子の叫びにつられ視線を移した父の目に飛び込んできたのは塔の窓から落下する愛娘の姿。アロルドとリオルはちょうど外出先から戻ってきたところだった。


先に動いたのはリオル。

 運のよいことに塔は池のほとりに建っており、水がクッションとなりシオンを受け止めた。

 しかしシオンの意識はすでになく、彼女の体はそのまま池の底へと沈んでいく。リオルは躊躇うことなく池へと飛び込んだ。


 リオルの手がシオンへと届いた瞬間、水が二人を避けるかのように割れる。


「大丈夫かっ!?」

「はい、気を失っていますが大丈夫です」


 それはシオンとリオルの父、アロルドの魔法によるもの。

 アロルドはさっと意識の無いままのシオンを抱き上げ、リオルと屋敷へと戻った。


 屋敷の入り口では公爵夫人である母イェシカが外の騒ぎに気づき、様子を見に行こうとしているところであった。

 家人に自分達が見てくるから待っているようにと諭されていたが、シオンの姿が見えなかったので自分が行くと少々揉めていたらしい。

 イェシカはぐったりとした娘を見て小さな悲鳴をあげたが、気を失っているだけで無事だとわかるとすぐにシオンを休ませる準備を整えた。そしてシオンを助けるために池に飛び込んだ少々体の弱いリオルの異変にも気づき、シオンが目覚めるまでそばにいると言うリオルにも休むようにと諭す。


 念の為医者も呼ばれたが、シオンにはどこも異常はなくじきに目が覚めるであろうということだった。

 シオンを助けるために池へと飛び込んだリオルは少々体が弱かったこともあり、熱をだしてしまった。しかしリオルも大したことは無く、医者は熱ざましを処方して帰っていった。


 屋敷も落ち着きを取り戻し、家人たちはそれぞれ自分の仕事へと戻る。

 アロルドも子供達が目を覚ますまで付いていたかったが仕事が残っていたので子供達をイェシカに頼み、部屋で仕事をこなしていた。


 イェシカはその晩ずっと子供達のそばを離れることなく看病を続けていた。

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