☽ 序幕
ガヤガヤと騒がしい庶民の賑わう憩いの場。その片隅に風変わりな黒いフードの男が独り、腰を下ろした。
ギシギシと音を立てる椅子と、足の長さが合っていないテーブル。落ち着かない男のもとに店の女将が、ぶっきらぼうに注文は?と声を掛ける。
男はメニューも見ずに、隣と同じものをと返事をした。
テーブルには濁った粗悪なビールと一色しかない料理が運ばれる。適当に切った肉を口に入れると、興味深い話が耳へと届いた。
「……らしい」
「……が、で……」
「冗談だろ?」
酒の入った客たちの話は真実味が感じられないが、斜め前に座る数人の若い男たちは、酒よりも話に夢中だ。ジョッキに注がれたビールの泡はとっくに消え果てている。
「知ら……連中……だ」
「……また、違う日に……」
具体的になる話に、男は眉根を寄せ耳を澄ませる。食事を適当に済ませ、お代をテーブルに叩くように置く。足が合わないテーブルはビールを零しながら揺れ動く。
「女将、お代はここに置いとくよ」
足音を鳴らしながら、男はとあるテーブルへと向かう。立ち止まった男は、空いている席に大胆に腰を据え、フードを取ると懐っこい顔を見せた。
「なあ?兄さんたち、その話もっと詳しく教えてくれない?」




