表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

機械少女クロニクル 5

 食事をしながらマキナの身体(あるいは機体というべきか)に起こっていることについての話を聞いた。彼女いわく、人でいう心臓だか脳だかにあたるコアの部分の故障が全身に影響を与えているようだった。


「機械だっていうのに妙に人間臭い仕組みだな」


「それは当然よ。人間だっていろいろな部品がくっついて一つの総体として成り立っているでしょう? そんなに変わるものじゃないわ」


「そういうものかね」


「そういうものよ」


「……まあいいか。ところでそのコアっていうのは自分では直せないのか? 俺よりマキナのほうが内部構造に詳しいだろう?」


「難しいわね。修復には一度意識回路を閉ざす必要があるし、『機械人形』は自分の内部構造については詳しく知らないの。プログラムの根幹の部分だから自分ではいじれないようになっているのね」


 話を聞けば聞くほど『機械人形』とやらの高性能さと、それを設計した当時の果てしない技術力に呆れた。俺にはいったいどういう仕組みでマキナが動いているのか皆目見当がつかなかったし、聞かされたとしても理解できないに違いない。


 ようやく魔道具が普及してきた程度の現状からすると、再び彼女のような高度な機械を作れるようになるまでには気が遠くなるような年月が必要だろう。


 数千年前の人族はいったいどのような暮らしをしていたのだろうか。その時代に住む人を連れてきてこの街を見せたら、よもや未来に来たとは思わずに時間をさかのぼったと感じるだろう。


「とにかく、一度キーネスのジジイの研究室に行くしかないみたいだな。『超魔法文明』の資料がなければ何も始まらない」


「そうね。私もそれがいいと思う。資料が残っていればいいのだけど……」


 首を傾げているマキナの顔をじっと見つめていると、彼女は訝しげな顔をした。


「なに、私の顔に何かついてる?」


「いや、別に。ちょっとした仕草でも絵になるなって思っただけだ」


「……そういうセリフは人間の女の子にとっておいたほうがいいわよ」


 彼女の言葉に俺は違和感を覚えて反論しようと口を開きかけたが、適切な言葉が見つからなかった。言葉を失った俺は代わりに息を吐いた。


「研究室に行くのは午後からにしよう。頭痛が治まらないから少し休みたい」


 マキナは頷いた。


「私もいま借りている宿を引き払って荷物を持ってこなくちゃいけないし、ちょうどいいわ」


 彼女の言葉を聞いて先ほどとは別の種類の違和感が俺を襲った。今度は思考を介することもなく言葉が口から飛び出た。


「え、ここに泊まるのか?」


「なに、不都合なことでもあるの? これから古代の資料を読み解くのだから、私がいたほうが何かと都合がいいわよ。それともあなたは年端もいかない女の子を路上にほっぽりだすのかしら?」


「さっきの話によると少なくとも数千歳……むぐっ!?」


 マキナは俺の口を手で押さえて目を細めた。


「年端もいかない女の子ね?」


 俺がこくこくと頷くと、彼女はにっこりと笑って手を離した。どうやら年齢に触れるのはタブーらしい。彼女のそこかしこに人間味が溢れていて、彼女が機械であるとは到底思えない。


 いったいなにが機械と人間とを分けるのだろうかという疑問が浮かんだが、頭を振って追い払った。そんなことを考えても仕方がないのだ。いま俺がするべきことは休んで午後からの調査に備えることだけだ。


「鍵は玄関にあるから勝手に持って行ってくれ。12時になったら起こしてほしい」


「わかったわ。ゆっくりおやすみなさい」


 マキナに手を振って自室に戻り、ベッドに横になると疲れが押し寄せてきた。誰かにおやすみと言ってもらうなんて久しぶりで、それを心地よく感じている自分に気が付いて少し気恥ずかしさを覚えた。


 そうした考えをごまかすようになんとなく部屋の隅にある本棚に目を向けると、見覚えのない本が置いてあることに気が付いた。あるいはその本はずっとそこにあって、適切な時期が来たことによって俺に何かを語りかけているようにも思えた。


 ベッドから起き上がって本を手に取ってみる。表紙はやすりか何かで削られていてもとの装丁は判別できなかったが、振ってみると中から金属同士がぶつかるような音がする。開いていると中のページは箱型にくりぬかれていて、空いた空間に何本かの鍵が納まっていた。


 まったく根拠はなかったが、これはキーネスのやったことだと俺は直感的に理解した。そして鍵を目にした瞬間、俺は猛烈な胸騒ぎに襲われた。


 間違いなくこの鍵束は俺を構成するなにかと紐づいているという直感があった。しかしいくら考えても見当はつかなかった。ただ、この鍵は何かを俺に訴えていることは確かだった。


 いつからこの本はここにあったのだろうか? じいさんは何を隠しているのか? そしてどこまで状況を知っているのだろうか? 俺はマキナを助けられるのか?


 無数の疑問がよぎったが、そのいずれにも答えを出せるわけがなかった。全てが俺の知らないところで動いているようだった。思わず魂が抜けてしまいそうなくらい大きなため息が出た。


 本を棚に戻してから再びベッドに横になると、すぐに眠気が俺をさらっていった。


感想、評価、誤字報告など大変励みになります。

3/3 20:00 6話 投稿予定です。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ