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柊瑞希は青春コンプレックス  作者: 黒姫 百合


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金森舞

「それで部員は集まりそう?」

「いいや。残念ながら私のところには集まってないな。白鳥の方はどうなんだ」

「私の方も今のところ脈なしね。今日中なのに全然集まる気がしないわ。たった一人なのに」


 女の子とあいさつを交わし、話すようになったからと言って大人たちが想像しているような甘い関係ではない。


 むしろ、ドライすぎるほどドライな関係だろう。

 二人が話す声音はまるで会社のホウレンソウのように事務的で淡々だった。


「あと一人見つかれば良いだけなのに……」


 撫子同様、瑞希もそこに頭を悩ませていた。


 あと一人で良いのだ。


 あと一人見つければ部を立ち上げることができるし、適当に活動報告をしていれば面倒な部活に自分の貴重な時間を奪われなくすむ。


 人生は有限だ。


 有限だからこそ、人生において無駄なことをしている暇なんてないのだ。

 瑞希にとって部活はまさに人生の無駄だった。


「まさかたった一人を集めることがこんなに難しいなんて。誤算だわ」

「確かに白鳥の言うとおりだな。一人の壁がこんなにも高いなんて」


 そして二人は盛大にため息をこぼす。


 もちろん、いくら二人がため息を吐こうがクラスのみんなは誰も気にも留めない。

 それは瑞希と撫子がクラスメイトとの交友を一切行っておらず、クラスから孤立していたからだ。


 もちろん、二人にそんな自覚はない。


「……お、おはよう」


 暗礁に乗り上げ、尚美に直談判をし部員を水増しさせてもらうかと考えていた時急に声をかけられた。


 それには瑞希だけではなく撫子も驚いた表情を隠しきることはできなかった。

 自慢ではないが、あいさつをかけられるほど親しいクラスメイトはいないからだ。


「「……」」


 そのせいで二人は反応を返すということを忘れてしまった。


「ちょっと二人ともどうして放心状態になってるのっ」


 瑞希たちに声をかけてきた少女は一人で狼狽している。


「……確か金森舞だったっけ」

「そうー。あたしは金森舞。おはようー」


 瑞希が必死に名前を思い出して、彼女の名前を呼ぶと、舞はなぜか嬉しそうに自分の名前を復唱し、もう一度あいさつをする。


  金森舞。


 説明しなくても分かると思うが、同い年の女の子である。

 身長は百六十半ばとこの三人の中では一番大きい。

 金髪のラビットスタイルのツインテールの髪型である。

 ちなみに見る限り、金髪はブリーチしている色である。

 でもブリーチしているからと言って汚い色をしているわけではなく、むしろ金麦畑のように綺麗な髪色をしている。

 見る限りギャルなのだが高圧的な印象はなく、むしろ優しそうな女の子だった。

 胸は結構大きく、Eカップぐらいはあるだろう。


「お、おはよう」

「おはよう金森さん。それで急にどうしたのかしら。私は今柊さんと話しているのだけれども」


 瑞希が言葉を詰まらせながら舞にあいさつをするのに対し、撫子はまるで邪魔者をあしらうかのような口調で話しかける。


 例え、撫子にそんな気がないとしても言い方がきついと感じてしまうのは瑞希だけだろうか。


「いきなり辛辣っ。ご、ごめんね急に話しかけて」


 やはりというか煙たがられていると受け取った舞は申し訳なさそうに謝罪する。


「別に怒ったわけではないのだけれども。ただなにか私たちに用があったのかしらと聞こうとしただけなのに金森さんが私のセリフを遮るんだもの」


 なるほど、あの言葉にはまだ続きがあったのか。

 それを舞がまるでツッコミをするかのように撫子のセリフを奪ってしまったから中途半端なことになってしまったのか。


 日本語は難しい。


「ううん、特に用という用はないんだけど……ほらあたしたちクラスメイトじゃん。だからあいさつぐらいするのが普通じゃん」


 舞は用もないのに、ただクラスメイトにあいさつをするらしい。


 なかなかの気狂いである。


 そう思ったのは瑞希だけではないらしく、撫子も理解不能という表情を浮かべながら言葉を出す。


「別にクラスメイトだからと言ってあいさつをする必要はないと私は思うわ。所詮、クラスメイトと言えども他人だもの」


 撫子の言っていることはとても共感ができる。

 クラスメイトと言えどもただに他人だし、それにこの学校は六クラスもある。

 たまたま撫子と舞とは同じクラスだけど、もしかしたら先生のさじ加減で別のクラスになっていたかもしれない。


 そう思うと、撫子も舞も同じクラスにいるただの他人である。


「確かにそうだけどっ、そうじゃないというか……」


 なぜか舞は一人頭を抱えている。

 舞にとってはクラスメイトというものはなにか特別なものらしい。


「悪いけど私たちは忙しいの。今日中に一人部員を見つけないとどこかの部活に強制入部させられるの」


 舞に用がないならこれ以上話していても時間を浪費するだけである。


 瑞希と撫子は今、切羽詰まっている。


 今日中に部活に入部しないとどこかの部活に半強制的に入部させられることになる。


 そんなことは死んでもごめんである。


「瑞希ちゃんも撫子ちゃんと同じぐらい口が悪いんだけどっ。だから朝からため息をこぼしていたんだね。納得納得」


 前言撤回。


 瑞希と撫子のようにクラスカースト底辺の人間を見ている人はいないと思っていた。


 でも舞は見ていたらしい。


 というか最初から見ていたことになる。

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