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柊瑞希は青春コンプレックス  作者: 黒姫 百合


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尚美に反抗的な瑞希

「……なんで朝から疲れなきゃいけないんだろう」


 学校の廊下を歩きながら瑞希は思わずため息を吐く。

 廊下には登校して来た生徒たちが歩いているが、別に瑞希の友達でもなければ知り合いでもないため、別に愚痴を聞かれようがため息をこぼそうが関係ない。


 亜美は重度を超して病的なブラコンである。


 一度は弟の身にもなってほしいものである。


「おはよう」

「おっはー」

「昨日のドラマ見た?」

「見た見たー。まさか最後あんな結末になるなんて思わなかったよね~」

「ちょっと待って。あたしまだ見てないんだからネタバレ禁止」


 廊下で友達にすれ違った学生たちが、あいさつを交わしたり昨日放送していたドラマの話をしながら盛り上がっている。


 もちろん、それはその人たちにとっての友達であり、瑞希の友達ではない。


 だから瑞希に話しかけてくる人もいなければ、あいさつをしてくる人もいない。


「なんだ、朝から辛気臭い顔をして」

「おはようございます黒川先生。別に朝からどんな顔をしてようが私の勝手だと思いますが」


 少しだけ訂正をしよう。


 瑞希にもあいさつをしてくる人ぐらいはいた。


 学校の先生でもあり、幼馴染でもある黒川尚美である。

 朝から辛気臭い顔をしている瑞希が心配だったらしい。


 本当に昔からお節介な女性である。


 思春期真っ盛りであり、学校にいる以上生徒と先生という関係上、あまり仲良くするのは得策ではないと思い、わざとぶっきらぼうに答える。


 TPOは大事である。


「どうせブラコンの亜美のことだから、瑞希を――」

「黒川先生。ここは学校ですよ」

「いったっ。だからって肘打ちすることはないだろう」


 いつもの感じで話しかける尚美に喝を入れるために、瑞希は尚美のわき腹を肘で突く。


 尚美が不平不満を言っているが、無視しよう。


「……別に私はそこまで距離を取らなくても良いと思うんだけど」

「……黒川先生には分からないと思うけど、学生の私は大変なんですよ。特定の先生と仲が良すぎると『好きなのか』ってからかわれたり、嫌味とか言われたり」


 尚美は別にいつも通りの関係でも気にしないらしいが、瑞希の方が気にするのだ。

 学校という閉塞的な空間で生活している以上、高校生はそういうゴシップネタが好きな生き物である。


「……お前ボッチだろ――いたっ、足を踏むな、足を」

「ごめんなさい、黒川先生」


 尚美が瑞希はボッチだからそんな噂流されることないだろと言った瞬間、カチンと来た瑞希は謝罪する気ゼロの顔で謝罪する。


「謝罪するなら表情と言葉を一致させろ」


 尚美がピーピー騒いでいるが、面倒なのでこれも無視しておく。


「それよりも黒川先生、私も教室に向かいますので先生ももう職員室に行ったらどうですか。私は黒川先生と違って忙しいんです」


 そもそも瑞希は今、とても忙しいのだ。

 こんなどうでも良いことに時間を使っている暇なんてない。


「どうしてそんなに忙しいんだ」

「それを私に言いますかっ。言うんですかっ。自分で部活に入りたくないなら部活を作れっていったくせに」


 暢気な声で瑞希に忙しい理由を聞いてくる尚美にイラっとした瑞希は、嫌味ったらしく大声で説明する。


「……お前、まだ三人集まってなかったのか」


 瑞希から忙しい理由を聞いた尚美がなぜか、引いた目で見ている。

 まるでその目は友達がいなくて残念そうな子を見るような目だった。


「だからそろそろ失礼します。今日中に三人目を見つけないといけないので」

「……そっか、分かった。今日中に私に入部届出しに来いよ」


 瑞希には今日中にやらなければならないことがあったし、それにこれ以上尚美と話している姿を見られるのは、瑞希的不利益だ。


 軽く会釈して瑞希が尚美の横を通り抜けると幼馴染として瑞希のことが心配だったのが、最後にお節介な言葉を投げかける。


 本当に姉の亜美と言い、尚美と言い過保護である。


 亜美や尚美には口が裂けも言えないが、別に悪い気はしていなかった。


 その後教室に入り、自分の席に向かう。


 もちろん、友達がいない瑞希に話しかけてくる気狂いはいない。


 瑞希が教室に入っても誰も瑞希に注目してくる人はいない。


 まるで透明人間である。


 瑞希という人間は確かにここに存在しているのに、誰も瑞希を気にしていない。

 そこには彼ら、彼女たちの日常があり、瑞希のことは意識の範囲外の存在でしかない。


 それが苦痛かと聞かれれば、別に苦痛ではない。


 むしろ、むやみに他人となれ合うことが苦手な瑞希にとっては心地が良い環境だった。


「おはよう柊さん。少し良いかしら」

「おはよう白鳥。別に良いが、一回自分の席に荷物置いてきて良いか」

「別に良いわよ。ごめんなさい、少し気が利かなかったわね」


 そんな友達がいない瑞希にも最近、瑞希にあいさつをかけてくる人間が現れた。


 言わずもがな、白鳥撫子である。


 撫子と部活作りという利害関係が一致してから、あいさつを交わすぐらいの仲にはなった。


 逆を言えば、撫子とはそれぐらいの関係でしかない。


 でもこれは、クラスメイトにさえもあいさつをされない瑞希からすれば大きな変化だった。


 別に荷物が重いから自分の席に置いてくると言っただけなのだが、なぜか撫子に謝られてしまった。


 まるで人間関係初心者みたいな発言である。


 その後、荷物を下ろし撫子の席に向かう。

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