表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
柊瑞希は青春コンプレックス  作者: 黒姫 百合


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/63

三人はみんな友達だな

「……そういうことだったのね」


 撫子は涙をこぼしながら一人納得する。


「私と柊さんは友達だったのね……」


 撫子も友達だということに気付いていなかったらしい。


「ありがとう柊さん。柊さんの気持ちは十分伝わったわ。だから今度は私の気持ちも伝えるわね。大切な柊さんに」


 撫子もなにかが吹っ切れたみたいに表情が爽やかになる。


「私もどんどん柊さんの存在が大きくなっていった。でも今まで友達がいなかった私はそれが友達に対する嫉妬だと理解できなかった」

「嫉妬?」

「私は柊さんが周りのいる人と仲良くなっていくことが不安だった。ううん、少し違うかも。嫌だった。最初は私だけと話していたのに、次々柊さんは友達の輪を広げていく。最初は私一人だけだったのに」


 まさか撫子が一人寂しい思いをしていたなんて、瑞希は想像もしていなかった。


「どんどん私と柊さんとの会話が減っていって、金森さんたちの会話が増えていく。柊さんに友達が増えるのは良いことだと思う。でも私は柊さんとの会話がどんどん減っていって寂しかったのね。だから、柊さんに八つ当たりをしちゃった。ホント、子供みたい」


 初めて知る、撫子の本心。

 瑞希は撫子の本心をただ黙って聞いていた。


「柊さんが私以外のクラスメイト、特に金森さんと話していると胸が痛くなって不安だった。私よりもきっとその人と話している方が楽しいんだろうって」


 確かにその気持ちは分かるかもしれない。

 昔、亜美が友達とばかり話していて自分の相手をしてもらえなかった時、自分よりも友達の方が大事なんだと思って、傷ついた経験がある。


 そのせいか今は重度のブラコンになってしまっている。


 今では重度のブラコンの方が迷惑をしているのだが。


 つまり撫子は瑞希が他の友達に取られて嫉妬していただけであった。


「馬鹿よね私。柊さんが私以外の人と話すたび寂しくてしょうがなかった。最初に柊さんに話しかけたのは私なのにって」


 椿に絡まれてから確かに撫子と話す時間は減った気がする。

 まさか、少し会話が減っただけで傷ついていたなんて、それは瑞希も分からなかった。


「でも今日柊さんの口から『友達』と聞けて心が晴れた気がする。私も柊さんの中では友達なんだって分かって。私だけじゃなかったんだって」


 今まで不安そうな表情が一変、晴れやかな笑みを浮かべる撫子。

 気のせいか、さっきよりも空の雲が減ったような気がする。


「おかしいわよね。今まで柊さんが他の人に取られて私とはもう話してくれないじゃないかって寂しがってショックを受けていたのに、今は柊さんと友達だということが分かって嬉しいわ」


 撫子の本心を聞いて、言葉にしないと伝わらないこともたくさんあるんだなと瑞希は知った。


 もし、撫子が言ってくれなかった今も撫子が避けている理由も分からず、お互いモヤモヤしていただろう。


「私も白鳥と仲直りができて安堵している」


 これでようやく一件落着で良いだろう。

 昨日とは違い、今日の撫子は本当に晴れやかな表所を浮かべている。


「これで私と柊さんは友達になったのよね」

「多分、友達になったで良いと思う」

「そう。私、中学の頃友達いなかったから友達のなり方とかよく分からないから」

「そうなんだ。私も中学の頃友達とかいなかったから、友達ってどういうものか分からん」

「確かになんとなく想像がつくかも」

「お前だって友達いなかったくせに」

「「うふふ」」


 雨降って地固まるというのだろうか。


 『友達』とお互い口に出して伝え合ったことによって、さらに絆が深まった気がする。


「放課後、金森さんと柊さんが一緒に帰った姿を見た時は凄くモヤモヤしたのに今はもう大丈夫だわ」


 撫子の言った放課後はきっと二人の秘密の約束をした放課後のことだろう。


 その時しか舞と二人っきりで帰っていないからすぐに分かった。


 でもあの時はどこにも撫子の姿を見えなかった気がする。


 どこに撫子がいたかを思い出そうとするものの、思い出すことはできなかった。


「良かったね二人とも仲直りできて」


 屋上前の踊り場から飛び出してきた舞は、仲直りした二人を見て嬉しそうな表情を浮かべながら二人に抱き着く。


「ちょっと金森。いきなり抱き着くな」

「柊さんの言う通りよ。いきなりビックリするじゃない」

「でーもー、やっと仲直りできたんだよ。ホントに心配だったんだよ」


 いきなり舞に抱き着かれた瑞希と撫子は舞に抗議するものの、そんなことを舞に言われると瑞希も撫子も強く拒むことはできなかった。


「でも良かった……これでまた三人でいられるね」

「そうだな」

「ご心配とご迷惑をかけてごめんなさい金森さん。もう大丈夫よ。私と柊さんは友達だから」

「あたしも友達でしょ。あたしは瑞希ちゃんと撫子ちゃんのこと友達だと思ってるよ。……って友達だと思っていたのはあたしだけだったのっ」


 舞は『友達』という前から瑞希と撫子と友達だと思っていた。

 自分だけ友達だと思い込んでいたのがショックだったのか、舞は驚きの声を上げる。


 やはり人間関係というものは難しい。


 例えば恋人になりたいなら告白して恋人になるのに対して、友達は告白のように相手に宣言する儀式がない。


 どこを持って友達とするかは個人の裁量にゆだねられる。


「金森が言うなら三人はみんな友達だな」

「そうね。みんな友達ね」

「ちょっと二人があたしのこと友達と思ってるのか、凄く不安なんだけどー」


 舞の絶叫が屋上の空へと吸い込まれていく。


 その後に残ったものは三人の笑い声だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ