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柊瑞希は青春コンプレックス  作者: 黒姫 百合


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友達なんだから

「……」


 そして再びの無言。

 どうやら、撫子は瑞希を避けている理由だけは話したくないらしい。


 その中途半端な反応がさらに瑞希をイラつかせる。


 もし瑞希が悪いことをしたなら全力で謝りたいと思っている。


 でも撫子は瑞希に非はないと断言をした。


 つまり、瑞希には非はないのだろう。


 だったら余計、なにもしていないのに避けられているこの状況を納得することはできない。


「私が悪くないなら、どうして避けるんだよ」


 そもそも瑞希が悪くないなら撫子に避けられる意味が分からない。


 そもそもおかしな話だろう。


 瑞希が悪いなら瑞希を避けているのもまだ分かる。

 でも撫子は瑞希は悪くないと言いながら瑞希を避けている。


 言っていることとやっていることがメチャクチャである。


「……」


 それすらもだんまりな撫子に瑞希は苛立ちを募らせる。

 撫子にも撫子の理由があるのだろう。


 でもなんの理由も分からず瑞希の気持ちも分かってほしい。


 なんの理由も知らずに避けられるのはかなり寂しい。


 それが今まで普通に話していた相手にされているのだ。


 瑞希だって不安になるし、モヤモヤする。

 瑞希もいくら大人びていると言われてもまだ高校一年生の子供だ。


 感情全てをコントロールできるわけではない。


「なんか言えよ、白鳥」


 瑞希の怒りは爆発し、撫子の胸倉を掴む。

 胸倉を掴まれた撫子は、一瞬怯えた表情を浮かべるものの毅然とした態度を浮かべる。


「殴りたいなら殴れば良いじゃない。それで柊さんの気が済むなら」

「……そういう言い方がマジでムカつく」


 撫子に睨まれ、少しだけ冷静さを取り戻す瑞希。

 ここで撫子を殴ってもなんの解決にもならないし、スッキリもしないだろう。


 むしろ殴ったら逆にモヤモヤだけが残り、今までの関係には戻れなかっただろう。


 そのことに気付いた瑞希は、言葉を吐き捨てながら撫子を開放する。


 解放された撫子は、崩れた襟元を直していた。


「私はね、いきなり白鳥に避けられて悲しかった」

「っ……」


 瑞希は今の自分の偽りのない思いを撫子に伝える。


 まさか瑞希がそんなこと思っていたとは思っていなかったのか、撫子は息を呑んだ。


「これが別に白鳥ではなく話したこともないようなクラスメイトだったらなんとも思わなかったさ。ただのクラスメイトだからな」


 そもそも他人に無視されてへこむほど、瑞希は暇ではない。


 つまり、瑞希の中で撫子は他人ではないということだった。


「白鳥はどう思っていたのか分からないが、私は白鳥に好意を持っていたし、それなりに仲の良い関係だと思っていた」


 ここで言う好意というのは恋愛的な意味ではなく、友愛的な意味の好意である。

 でも友達がいなかった瑞希は撫子のことを素直に友達ということができなかった。


 いや友達ということを認識していなかった。


「……好意」


 撫子は頬を赤らめさせる。


「だからこそショックだった。白鳥に避けられたのは」

「っ……」


 普通人間というものは知らない人に無視されるよりも仲の良い人に無視される方がショックが大きい。


 そもそも他人に無視されても所詮、そいつは他人である。


 痛くも痒くもない。


 だが、仲が良い人だと仲が良い分無視されるとダメージも大きくなる。


 瑞希の中で撫子はそのぐらい大きい存在だった。


「私は白鳥に避けられたくない」


 撫子に避けられると心が引き裂かれたかのような痛みに襲われる。

「白鳥に避けられると心が引き裂かれたかのように痛い。だから白鳥も私を避けている理由を教えてほしい。だって私たちは――」


 こんな気持ちは初めての経験だった。


 誰かのせいでこんなにも心が揺さぶられてしまう。

 その人と話せるだけでも嬉しくなり、逆に話せなかったり冷たくされると悲しくなる。


 一度撫子と距離が開いて分かったことがある。


 それは瑞希にとって撫子は他人とは違う特別な存在だと言うことだ。


「友達なんだから」


 きっとこれを人は『友達』というのだろうと瑞希は推測する。


 一緒にいて楽しく、信頼している相手を友達というなら、撫子は間違いなく瑞希の友達だ。

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