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柊瑞希は青春コンプレックス  作者: 黒姫 百合


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59/63

別に柊さんは悪くないわ

 次の日。


 瑞希はいつも通り学校に登校する。

 昨日、舞と仲直りというか和解できたので足取りが軽い。

 避けられている理由も分かったし、もう避けないと舞が言ってくれた。


 それだけでも瑞希のストレスは半減する。


「おはよう瑞希ちゃん」


 校門前で舞と遭遇し、あいさつを交わす。


「おはよう金森」


 瑞希もあいさつを交わし、一緒に昇降口に入る。


「撫子ちゃんとも仲直りができたし、良かった良かったー」


 撫子と仲直りができた舞は朝から上機嫌だ。


「そうだな。仲直りできて良かった」


 瑞希も舞と仲直りができたことに安堵して、朝から足が軽い。

 瑞希も初めて知ったことなのだが、最初から誰も友達がいないよりも、ある程度親しくなってから拒絶される方がきつい。


 朝の昇降口というのは言わば通学ラッシュである。

 今日は結構混んでいる時間帯に来てしまった。


「あっ」

「大丈夫か金森」


 人混みに押され、足を滑らせる舞。

 その舞を手を引っ張り支える瑞希。


 瑞希が手を引っ張ったおかげで舞は間一髪転ぶことはなかった。


「ありがとう瑞希ちゃん」

「ううん、金森こそ転ばなくて良かった」


 瑞希に助けられた舞は瑞希にお礼を言い、瑞希は舞が怪我しなかったことに安堵する。


 ガタン。


 昇降口になにか落ちる音が聞こえた。


「……柊さん……金森さん」


 瑞希たちの目の前には上履きに履き終え、外靴を閉まっている途中で落とした撫子がいた。


 撫子はまるで恋人の浮気現場を見たような目をしている。

 目は焦点が合っておらず、まるで朝から信じられないものを見たような目だった。


 一体、何秒の間撫子と見つめ合っていただろう。


 二、三秒ぐらいのはずなのに数分ぐらい経っている感覚だった。


「白鳥」


 瑞希たちを見て逃げ出す撫子に向かって名前を呼ぶ瑞希。


 やっぱり、撫子の問題は解決していなかったのだ。


 どうりで歯切れが悪いと思った。


 瑞希は急いで外靴をしまい、上履きに履き替えて撫子を追う。

 学校の廊下を走ってはいけない。そんなの知っちゃこっちゃない。


 撫子が走って瑞希から逃げている。


 ここで逃がせば、なぜかもう二度と関係の修復ができないと瑞希は思った。


「瑞希ちゃん、撫子ちゃん」


 後ろから舞も走って追いかけてくる。

 舞も廊下を走ってはいけない校則を破り、瑞希たちを追いかける。


 一体、なぜ撫子が瑞希たちを……いや瑞希を避けているのか分からない。


 でも分かっていることだけはある。


 撫子は生理でイライラして避けていたということは嘘だったということだ。


 撫子は昨日、もう避けないと約束してくれた。


 責任感の強い撫子がたった一日で約束を反故にしない女の子だということは分かっているつもりである。


 撫子はどんどん上に逃げていく。


 上ということはだいたい逃げられる場所は限られてくる。


 多分、屋上だろう。


 瑞希の予想は見事的中し、撫子は屋上に逃げ込む。


 もちろん、屋上に逃げ場などない。


 屋上で向かい合う、撫子と瑞希。


 後ろから追いかけてきていると思っていたが、舞が全然姿を見せてくれない。


 どこかではぐれてしまったのだろうか。


「白鳥、昨日の私を避けている理由は嘘だったんだなっ」

「……」


 感情が高ぶっているせいか、瑞希の口調はきつかった。

 やはり、信頼していた撫子に嘘をつかれるのは精神的にきついものがある。


 いつも冷静な撫子はどこに行ってしまったのか、屋上にたたずむ撫子は弱々しく俯き、なにも返事をしてくれなかった。


「それじゃーなんで私を避けるんだよ。私、なにか白鳥に悪いことでもしたのか?悪いがなにも心当たりがないんだ」


 昨日避けないと約束したのに、一日で反故にされ瑞希の気持ちは悪い意味で高ぶっていた。


「別に柊さんは悪くないわ」

「ならどうして避けるんだよ」


 撫子の否定の言葉はよく芯が通っていた。


 だからその言葉は嘘ではないと理解した。


 でも、だったらどうして瑞希を避けているのだろう。


 謎は深まるばかりである。

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