そう言ったらそうなるわね
放課後になった。
いや、放課後になってしまったと表現する方が正しいのかもしれない。
瑞希と撫子の関係を舞がサポート部に依頼すると決めてから、瑞希は落ち着かない時間を過ごしていた。
その後の授業もほとんど覚えておらず、今日一日どんな内容を教わったのか覚えていないぐらい緊張していた。
ホームルームが終わり、撫子はすぐさま教室を出ようとする。
「待って、撫子ちゃん」
すぐに教室を出ようとした撫子に舞が話しかける。
「どうしたの。金森さん」
さすがに無視するほど撫子は人間が廃っていない。
少し迷惑そうな表情を浮かべていたが、瑞希は気づいていたが舞は気づいていなそうだった。
「あたし、サポート部の依頼を受けたのっ」
「サポート部への依頼?」
もちろんこれは舞からの依頼である。
「うん。だから撫子ちゃんと瑞希ちゃんにも聞いてもらいたいの」
「……」
撫子は舞と瑞希を交互に見る。
その目は明らかに困惑と言うか、気まずそうな目をしていた。
「……部活ならしょうがないわね。集合しましょう」
いくら瑞希を避けているとはいえ、部活への依頼が来たら活動しなければならない。
撫子は責任感の強い女の子だ。
ここで公私を混同するようなことはしない。
ようやくこれで撫子と話すセッティングができた。
舞とアイコンタクトを送り合った瑞希は舞の近くによる。
明らかに舞は戸惑った表情を浮かべてたが、それを気にしてはなにも始めることができないので無視する。
ちなみに、椿たちは野球部の練習があるので教室にはいない。
「それでどんな依頼なのかしら」
近くにあった机を勝手に突き合わせて部活を始める。
「それじゃ依頼内容を話すね」
この中で依頼内容を知らない撫子が、どんな依頼を受けたのか説明するようにと催促する。
その催促を受けた舞はゆっくりとした口調で話し始める。
「依頼主はあたしなんだけど、最近あたしの友達がある人に避けられてるみたいなの。その友達は避けられる理由も分からず悩んでる。避けている人もあたしの友達できっとなにか事情はるんだと思う。どうしたら二人は元の仲良しに戻れるかな?」
依頼主が舞と言っている時点でなにも隠しきれていない。
舞が『友達』とか『ある人』と言っても『ある人』である撫子が気づかないわけではない。
「なるほど、金森さんの依頼内容については理解したわ」
あくまでも冷静に淡々と言葉を話す撫子。
逆に冷静すぎて怖いぐらいだ。
「つまりそれって、私と柊さんのことでしょ」
撫子は鋭い眼光で舞のことを睨みつける。
撫子の頭ならきっと誰と誰のことを言っているのかすぐに理解するとは思っていたが、まさかすぐに自分と瑞希だと答えるとは思っていなかった。
「……えっ……あっ……うん」
まさかすぐに当てられるとは思っていなかったのか舞の方が狼狽している。
受験の時、筆記用具を忘れてくる女の子である。
もしかしたらかなり馬鹿なのかもしれない。
「……なんで分かったの?」
舞自身はなんですぐに分かったのか、分かっていない様子だった。
舞自身の話で、いくらぼかしても普通当人ならすぐ気づくだろう。
「普通に分かるわよ。金森さん自身の話で身に覚えがあるならね」
撫子は冷静に舞に解説しているつもりだが、それはつまり撫子が瑞希を避けているということを認めているということでもあった。
「つまりそれは白鳥が私を避けているということで間違いないんだな」
「……えぇ、……そうね。そう言ったらそうなるわね」
瑞希が確認のため撫子に聞くと、撫子も自分が馬鹿正直に答えているということに気づき歯切れが悪い。
撫子って冷静で頭のいい女の子だと思っていたが、もしかして抜けているところも多いのかもしれない。
撫子は頭は良いのだが、瑞希同様中学まで友達がいなかったせいで、人間関係に疎い。
もちろん、この時の瑞希は撫子のそれに気づいていなかったため、撫子が素直に認めたことに驚いていた。
「どうして瑞希ちゃんを避けてたの?もしかして喧嘩でもした」
「別に柊さんとは喧嘩もしてないし、柊さんが悪いわけでもないわ」
舞は瑞希を避けているということを認めた撫子にさらに理由を追求する。
撫子はそこまで答えたくないのか、当たり障りのない回答をしお茶を濁す。




