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柊瑞希は青春コンプレックス  作者: 黒姫 百合


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残るのは……あたしっ?

「誰だって人には聞かれたくないことの一つや二つぐらいはあるでしょ」

「いや、私と白鳥はただ声が小さいだけだ。特に白鳥は」


 せっかく良いことを言ってくれた椿には申し訳ないが、そんな深刻な話しは撫子とはしていない。


 椿は一瞬、瑞希がなにを言っているのか分からず呆けていたが、少しずつ理解し始めると顔を赤くして瑞希に噛みついてきた。


「せっかく柊のこと庇ったのに。あたしが馬鹿みたいじゃない」

「別に庇ってほしいとは言ってない」


 またも喧嘩を始める二人。

 それを周りから生温かい目で見守る三人。


「……でも一色の優しさは伝わった。ありがとう」

「……別に。……素直に柊に感謝されるのもそれはそれでむず痒いわ」


 いつも瑞希には生意気な椿だが根は優しい男の娘だ。

 だから嫌いな瑞希にもフォローしてくれるのだろう。


 瑞希もそこには感謝している。だから素直に感謝の気持ちを伝えると、恥ずかしいのかむず痒いのかツンツンしているのにデレているという表情を椿は浮かべる。


 これを人はツンデレと呼ぶのだろう。


「結局僕たちで考えても分からないね」


 帆波はため息を吐きながら結論を出す。


 結局、いくら本人がいないところであーだこーだ考えても答えには辿り着くことができない。


「やっぱり直接本人に聞くのが良いんじゃないの柊」

「私が聞くのかっ?」

「当たり前でしょ。この中で一番仲が良いんだから」


 撫子がなにに怒り、瑞希を拒絶しているのか分からない以上、瑞希たちには打つ手がない。


 なぜかその役を椿に命令され、不服だったので睨みつける椿。


 確かにこの五人の中で一番撫子と話しているのは瑞希だが、それだけで選ばれるのは納得がいかない。


「僕も柊が適任だと思うな。多分柊なら白鳥の悩みとか聞き出せそうだし」

「それ分かるっ。白鳥が一番この中で心を許しているのって柊でしょ。柊なら話してくれると思うよ、うん」


 帆波も早織もやりたくないのか、それとも本気で瑞希が適任だと思っているのか瑞希を指名してくる。


「っていうか私が白鳥に避けられてるんだぞ。普通話してくれると思うか」


 そもそもの話。撫子が瑞希を避けている状況で、瑞希が話しかけても普通避けている理由を話してはくれないだろう。


「瑞希ちゃんならきっと大丈夫だよ。撫子ちゃんがなんで瑞希ちゃんを避けているのか分からないけど瑞希ちゃんならきっと話してくれると思うよ。それに瑞希ちゃんって冷静だし頭の回転も早いし、きっと撫子ちゃんの力になれると思う」


 舞も今の撫子のことを心配しているらしく、その役は瑞希が適任だと思い瑞希にたくしてくる。


 その目は自分から聞き出すのは面倒だからという感じはなく、本気で瑞希なら解決してくれるという信頼の目をしていた。


「普通私を避けてたら私に避けてる理由教えてくれなくない?」

「確かにそうだっ」


 今更そんなことに気づいたのか舞が素っ頓狂な声を出す。


 何回も言っていたのだが気づいていなかったらしい。


 普通に考えても分かる気がするのだが。


「確かに今まで気づかなかったわ」

「普通、避けている本人に避けている理由を話さないよね」

「でも椿も帆波もあたしも撫子にそんなデリケートなことを話してくれるほど仲良くはないと思うよ」


 椿たちも気づいていなかったのか、盲点だったと言わんばかりに頭を抱えている。

 この三人、もしかして結構馬鹿……いや抜けているのではないか。


「……気づいてなかったのかよ」


 さすがに瑞希もこれには呆れるしかない。


「瑞希ちゃんはダメで椿ちゃんたちも厳しそうだし残るのは……あたしっ?」


 避けられている張本人もダメで、そこまで親しいとは言えない椿たちもダメになると消去法で舞に決まる。


 それを薄々感じていた四人は一斉に舞に視線を浴びせ気づかせようとした。


 さすがに舞もその視線と圧に気づく。


「白鳥とそれなりに親しくて避けられてない人と言えば舞しかいないよね」

「僕も舞なら大丈夫だと思うよ。舞ってコミュニケーション力高いし」

「舞なら大丈夫っしょ。あたしたちの時も上手く和解できたし」


 確かに椿と舞が喧嘩した時、舞は上手く椿たちとの喧嘩を収めることができた。


 一時は絶交になりかけていた二人だったが、今は前よりも仲良しになっている。


 だから三人は舞が適任だと推薦する。


 本当は引っ込み思案で、周りに気を使いすぎるぐらい気を使い、この明るい性格も高校デビューということも知らずに。


 それを知っているのは、この高校で瑞希だけだろう。

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