別に揉めてもないし、悩みとか聞いてない
「確かにっ。六人でいる時撫子ちゃんが話してる姿あんまり見たことないかもっ」
舞も今知ったのか驚いた表情を浮かべている。
ここが一番重要なポイントだったのだが、この時の瑞希たちは気づいていなかった。
「……言われてみればそうかもしれない」
瑞希も四人の言葉に同意し頷く。
「っていうかこの中で一番仲が良いのは柊でしょ。柊が分からなきゃ分からないでしょ」
「そうだね。この中で一番白鳥と一緒にいるのは柊だもんね。本当になにか心当たりとかないの?」
「そう考えると白鳥のことはあたしたちよりも柊の方が詳しいかもっ」
「確かに一緒にはいるが、別に一色たちが思っているほど一緒にはいないし仲が良いわけでもないぞ」
三人に指摘され、このクラスで一番撫子といるのが多いと言うことが実感した瑞希。
確かに椿たちの言う通り、撫子と一緒にいる時間はこのクラスの中で一番多いが撫子も瑞希と同じように一人でいることの方が好きなため、一人でいることの方が多い。
「……確かに撫子ちゃんってなんやかんた言って瑞希ちゃんと一緒にいるのが多いかも。それにあたしたち六人でいる時、撫子ちゃんってあまり口を開いてないかも」
舞がなにかに気づいたのかブツブツ呟いているが、椿たちがあーだこーだ話しているせいで聞き取れなかった。
「でも結構一緒にいるよね。多分、このクラスで一番白鳥と話してるのは柊なんじゃないの?」
「結構金森も話してるだろ」
「あたしも撫子ちゃんと話してるけど、やっぱり瑞希ちゃんの方が多いと思うよ。朝とか二人で話してること多いし」
瑞希的にはそこまで撫子と話している感覚はなかったのだが、他の人から見ると結構撫子と話しているらしい。
瑞希的には舞も結構撫子と話している感じだったが、朝二人で話したり昼休み、六人で集まった時とか撫子に話しかけられることもあり、ここで自分が撫子に一番話しかけられていることを知る。
「……確かに金森の言う通りかもしれない。そう言われると朝とか二人で話すことは多いな」
それはたまたま学校に着く時間が同じで、しかも教室までの短い距離の間の話だ。
別にお互い示し合わせて一緒に登校しているわけでもないし、休み時間いつも話しているわけではない。
「やっぱり一緒にいるじゃない」
やはり自分が正しかったじゃんと自己主張するかのように椿は鼻を鳴らす。
「けど私たちはまだ入学して一ヵ月も経ってないんだぞ。相手のことまだ深くは知らないだろ」
「確かにそうだね。僕と椿は小学校からの幼馴染だけど、みんな高校に入って初めましてだもんね。お互いのことまだ深く知らないのはしょうがないよね」
「言われてみれば。あたし、なんかずっと一緒にいるから中学からずっといるような感じのノリで喋っていたわ」
当たり前だが瑞希が撫子も含むこの五人と話し始めたのは高校に入学した時からである。
舞とは試験の時に少し話したのだが、それは舞との二人だけの秘密なのでここで話さなくても良いだろう。
帆波は瑞希の意見に同調し、早織はまだ出会って一ヵ月ということになぜか驚いていた。
「うん、そうだね」
あの約束は言わなかったから舞は安心した表情を浮かべていると思っていたがなぜか複雑そうな表情を浮かべていたように見えた。
でもそれは一瞬で、すぐにいつも通り元気な表情を浮かべた。
「それはないだろ。私と大村は違う中学だし」
「だーかーらー。比喩表現だってばー。あたしだってみんな別々の中学出身って分かってるから」
瑞希が冷静にツッコミをすると、早織は声を荒げて反論する。
瑞希的は仲が良いとは思っていないがそれを言うと椿や早織が声を荒げて面倒なことになるので言わないでおく。
この五人はただのクラスメイトだ。それ以上でもそれ以下でもない。
「そう言えば六人でいる時も柊って白鳥と二人でコソコソ話してるじゃん。なにか白鳥と揉めたり、悩みとか聞いてないの?」
意外にも周りが見えている早織に舌を巻く瑞希。
てっきり自分たちの会話しか聞いていないとばかり思っていた。
「別に揉めてもないし、悩みとか聞いてない」
「コソコソ話してるんだからあまりあたしたちには聞かれたくない内容なんじゃないの早織」
早織の言う通り、撫子とはコソコソ話しているが別に聞かれたくないことを話してるわけではなく、ただたんに二人の声が小さいだけである。
友達がいないと話す機会も少なくなり、声帯が衰える。
そのため、普通に話していても声が小さいのだ。
ここで意外にも椿が瑞希と撫子を庇うようなことを言う。
確かにコソコソ話しているのだから、人には聞かれたく内容だと普通の人は思うだろう。
瑞希に対しては生意気ですぐに喧嘩を売ってくる椿だが、瑞希たちの秘密を尊重し早織を窘める。




