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柊瑞希は青春コンプレックス  作者: 黒姫 百合


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それにしても手詰まりね

「からかいに来たならあっちに行ってくれないか。今は一色を相手してる暇なんてないから」


 今の瑞希は撫子だけで手一杯で、椿を相手していられるほど精神的な余裕はなかった。


「別にそんなんじゃないから。あたしだって別に柊をからかうためだけに柊に話しかけるほど暇じゃないから」


 椿も椿で瑞希にそう言われるのは心外だったらしく、瑞希に噛みつく。


「まぁーまぁー二人とも落ち着いて。椿の言ってることは本当だよ柊。椿ったら今日一日白鳥に避けられ続けて元気のない柊のこと心配してたんだから。勝手な決めつけはよくないんじゃないのかな」


 また一触即発な雰囲気を察した帆波は仲介役として間に入る。

 確かに帆波の言う通り椿に対して勝手な決めつけをしていたが、椿が瑞希に話しかけるのは喧嘩する時とかからかう時とか嫌味を言う時ぐらいなので、今回もそうだと思っていた。


 いや、思い込んでいた。


「別に心配なんかしてないから。帆波も勝手なこと言わないでくれる」


 椿は瑞希に知られたくなかったのか、慌てた表情を浮かべながら今度は帆波に噛みつく。


「そうだね。瑞希ちゃんは良い子だけど、勝手な決めつけを相手にするのは良くないと思うよ」


 舞はできるだけ瑞希が傷つかないようにオブラートに包みながら、瑞希の問題点を指摘する。


 帆波と舞に指摘され、瑞希は椿に対して勝手に決めつけていたことを反省している。


 椿は瑞希が嫌いだ。


 それは椿自身が公言している。


 だからと言って今回、椿が瑞希に話しかけてきた理由がからかい目的だとは本人は言っていないし、そう判断したのは瑞希自身の勝手な思い込みだ。


「悪い一色。不快な思いをさせてしまったな」


「別に。それぐらいなんとも思わないわよ。っていうかそんなことでいちいち傷つくほど軟じゃないから」


 椿に対して勝手な決めつけをして傷つけたことを謝罪する瑞希。


 椿は別に気にしていなかったらしくいつも通り生意気な口調だった。


 だからこそ瑞希は椿が瑞希のことを心配していた証明でもあった。


 もし瑞希のことを心配していなかったら、椿は真っ先にそこを否定している。


「もしかして白鳥に勝手な決めつけとか押し付けとかしたんじゃないのー、柊自身が。だから柊自身は避けられてる原因とか分からないんじゃないの?」


 四人の話を聞いていた早織が、撫子が瑞希を避けている原因を推測し四人に話す。

 もし早織の仮説が正しかったら瑞希はますます分からない。


「もし大村の言うことが正しかった場合、なにも思い出せない。きっとその言葉は私にとってなんの悪意もなかったからだ。一色のあの言葉だって別に一色に悪意があって言った言葉ではないからな。明日、昨日のあの言葉を思い出せるかというと多分思い出せない」


 あの時言った椿への決めつけの言葉は、なんの悪意もなかった。


 きっと一日経ったら言ったことすら忘れているぐらい、瑞希にとってなんでもない言葉だった。


 でも言葉というのは発した自分ではなく受け取る相手によって意味が変わる。


 自分ではそんなつもりで言ったはずではなかったのに、相手は違う解釈で受け取ることが多々ある。


「大丈夫だよ瑞希ちゃん。あたしだってそういうことよくあるもん。あたしも相手に傷つけないように慎重に言葉を選んでるつもりだけど、知らない間に傷つけていた経験とかあるもん」


 落ち込んでいると勘違いした舞が瑞希を慰める。

 別に落ち込んではいないのだが、慰めようとしてくれた舞からは優しさが伝わってくる。


「でも早織が言っていることもただの推測だし、そこに固執して考えるのも逆に視野が狭くなって危険だと思うよ」


 いつも椿、早織のグループに所属している帆波が早織に優しい口調で異を唱える。

 帆波の言う通り、早織の言っていることは推論であり違う可能性だって大いにある。


 もし問題を解決しようとして、その問題がいくら考えても解決しない場合はそもそもの前提が間違っている場合が多い。


 前提が間違っている時点で、正しい答えには辿り着けない。


 つまりなにが言いたいかというと、なにも分からないということだけが分かっている。


「それにしても手詰まりね」

「あたしも白鳥とは仲良くないしまだ一ヵ月の付き合いしかないから分かりませーん」


 椿や早織にも考えてもらっているのだが、まだ付き合いの浅いせいか見当もつかない。


「白鳥に避けられてるのは私だけなのか?金森お前たちはどうなんだ」


 この撫子に避けられている状況が瑞希だけなのか、それとも全員なのか。


 そこが分かれば見当もつきやすくなるだろう。


 瑞希だけならやはり瑞希が原因ということが分かり、全員冷たくされているなら原因は瑞希だけが関係していることではないということが分かる。


「さぁー、あたしは白鳥とはほとんど話したことがないから分からないけど」

「確かにそうかもしれないね。僕もあまり白鳥と話したことがないかも」

「言われれば椿と帆波の言うとおりね。あたしもあまり白鳥と話したことがなかったかも」


 椿、帆波、早織が撫子と話した記憶を思い出しながら話す姿を見て瑞希は驚愕の事実を理解する。


 瑞希たちはなんやかんや言ってそれなりに椿たちのグループと一緒に行動している。


 主に舞に連れていかれるのだが。


 そんなことは今は置いといて、その舞のせいで瑞希は椿たちともそれなりに交流を持つことになった。


 でも今思い返してみると、瑞希が椿たちに話しかけらり、話すことはあっても撫子が椿たちに話しかけられたり、話すことはほとはほとんどなかった。


 だから三人とも撫子と話した記憶が薄いのだろう。

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