なにもしてないのに避けられてる
「白鳥。体調が悪いのか」
「別に普通よ。それじゃー私は最初に教室に行ってるわ」
「白鳥っ」
瑞希は撫子の体調を心配し慮るのだが、撫子はそっけない態度で教室に行ってしまった。
今日の撫子は機嫌が悪い、もしくは体調が悪いということはすぐに分かった。
でも原因が分からない。
もし、家のこととか女性特有の生理現象、生理とかだったら瑞希には想像もできない領域なので、なにもしてあげることできない。
「おはよー瑞希ちゃん。どうしたの、昇降口で立ち尽くして」
撫子と入れ替わるようにやって来てあいさつをする舞。
「おはよう。今白鳥に会って挨拶をしたのだがなんだか様子がおかしくてな」
「様子がおかしい?具体的にどんな感じでおかしいの?」
靴を履き終えてから舞は撫子に尋ねる。
その表情は本気で友達を心配している表情だった。
「昨日までは普通だったと思うんだが、今日あいさつをしたら物凄く冷たく接された」
「ふむふむ。確かに昨日までは普通だったよね。もしかして家で嫌なことがあったり……もしかして生理でホルモンバランスが崩れて大変なのかも」
舞も瑞希と同じ結論にいたったらしい。
瑞希は撫子という人間ではないから分からないが、これぐらいしか撫子が冷たい原因は思いつかない。
それにもしこれが生理によりものだったら、瑞希ではなにもしてあげることができない。
自分では気づかないうちに撫子のことを気にかけていることに瑞希は気づいていない。
「とりあえず教室に行ったら聞いてみるか」
「それが一番だね。あたしたちがここで考えるよりも本人に聞いた方が早いもんね」
昇降口で瑞希と舞が撫子のことをあーだこーだ話していても答えには辿り着けない。
二人とも撫子本人ではないのだから。
瑞希と舞が撫子が冷たい理由を考えてもそれは推測でしかなく、正解ではない。
その後、瑞希と舞は教室に行ったのだがそこに撫子の姿はなかった。
撫子は瑞希同様友達が少ないというかいないだろう。
だから他クラスに行って時間を潰していることはありえない。
ここから考えられることは、どこか一人になれる場所でホームルームの時間まで時間を潰しているということだ。
闇雲に探すのはコスパが悪いと言うことだったので、瑞希と舞は教室で撫子を待った。
でもいくら待っても撫子は教室には現れず、ホームルーム始まる一分前に撫子は教室に現れた。
もちろん、ホームルームまで時間がないので結局瑞希は撫子に話しかけることはできなかった。
でもこれで分かった。
それは確実に撫子が瑞希を避けているということを。
理由も分からずに避けられたり冷たくされることほど気持ち悪いことはないだろう。
瑞希はそればかりに気を散らし、今日の授業は六割しか聞いてなかった。
「大丈夫柊さん。具合悪いなら保健室に行っても良いわよ」
「いえ、別に大丈夫です」
ボーっとしすぎて数学の先生にまで心配される瑞希。
さすがに授業中に授業と関係ないことを考えるのは良くない。
家での勉強を減らすためには、授業はしっかり聞いていなくてはならない。
授業を理解させしていれば、とりあえず赤点にはならないからだ。
もちろん、授業中は休み時間と違い撫子も教室の中にいる。
休み時間のたびに瑞希は撫子に話しかけようとしたのだが、すぐにどこかに逃げられてしまった。
「……あれ、明らかに避けてるよな」
「……うん、瑞希ちゃん、撫子ちゃんに避けられてるね」
さすがに何回も避けられれば瑞希だって、撫子が自分の意思で瑞希を避けていることに気づく。
それは舞も同じらしく瑞希が撫子に避けられていることに気づいた。
「昨日、撫子ちゃんとなにかあった?」
「いや……それがなにもないと思うんだが。別に白鳥と喧嘩したわけでもないし」
もし撫子が怒っている原因が瑞希にあると仮定しても、全くその心当たりが瑞希にはない。
昨日の撫子は特段、変わったところはなかったし、そもそも瑞希はクラスメイトとの馴れ合いには興味がなく撫子とも必要最低限の会話しかしていない。
だから不用意なことを言って撫子を傷つけた記憶もない。
「なんか柊が白鳥に避けられてるんだけど、なにしたの柊」
「一色か。別になにもしてない。なにもしてないのに避けられてる」
「はぁー、なにもしなかったら避けられるわけないじゃない」
撫子に避けられている嘲笑いに来たのか、椿が瑞希に話しかける。
何度も言うが、瑞希は撫子になにもしていない。
なにもしていないのに、避けられているから困っているのだ。
理由もなく避けられると、瑞希だってモヤモヤしてしまう。




