だって一人って寂しいじゃん
「すまない。その一人が寂しいという感情が分からん」
残念ながら瑞希はどうして舞が一人で寂しいとか言っているのか分からなかった。
「うそっ。だって一人って寂しいじゃん。あたし、中学の頃一人だったから……あはは、この見た目じゃ想像がつかないよね。あたし、中学生の頃は本当に暗くて友達もいなくて、寂しかった。だから、高校はイメチェンしてギャルになってたくさん友達作って、楽しく過ごすんだって……」
今の舞は明るくて社交的でクラスにも瑞希以外の友達もたくさんいる、クラスの中心的な女の子だ。
だから舞が言っている中学時代の舞は全然想像ができなかった。
……いや……待てよ。
瑞希の頭の中にある記憶が蘇る。
それは、この間舞に聞こうとして結局授業が始まって聞けなかったある記憶だった。
「……もしかしたら私、知ってるかもしれない」
「……えっ」
瑞希の呟きに舞はなにかを願うかのように言葉を漏らす。
「この間授業が始まって聞けなかったことだが、もしかして高校受験の時に筆記用具一色を忘れた女の子か?」
あの授業が始まる前、舞は過去に瑞希に助けられたことがあり、それは入試の時だと言っていた。
瑞希が高校受験の時に助けた人は、筆記用具一式を忘れたあの女の子しか該当しない。
もしかしたら瑞希の記憶がないだけで他にも助けた人はいるのかもしれないが、覚えていないので除外する。
「……覚えてくれていたんだ……」
舞は嬉しいのか恥ずかしいのか分からないが、目に涙を浮かべている。
やっぱり高校受験の時会った喪女は金森舞だったらしい。
舞の言う通り『入試』というヒントがなかったら、あの時の喪女と今の舞を結びつけることはできなかっただろう。
それぐらい見た目が変わっていた。
「まさかあの時の喪女が金森だったとは……金森が黙ってれば一生気づかなかったぞ」
「喪女言うな……でもそうだよね。あの時のあたしは黒髪で髪の手入れもしてなくて眼鏡かけていて暗かったから無理ないよ。むしろ、あんな姿が嫌だったから今の姿になったんだし」
喪女みたいな黒髪で髪の手入れもしていなかった暗い女の子が、高校生になって明るくて清潔感があってギャルみたいな女の子に変身したと誰が想像できるだろうか。
明らかに別人である。
それが本当なら、瑞希と舞は入学前に会っているということになる。
高校受験の時、隣で試験を受けた女の子が筆記用具を忘れた喪女が今、社交的なギャルになって目の前にいる。
まさに『運命』というか『奇跡』である。




