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柊瑞希は青春コンプレックス  作者: 黒姫 百合


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……あたしはただ仲良くなりたかっただけなのに

「確かに柊や白鳥は僕たちと違うよね」


 帆波も一人ウンウンと頷いている。


「ホント柊と友達になれて良かったよ。世の中にはこんなにも面白い子がいるんだね」

「だから、私は友達になった覚えはないんだけど」


 一人喜んでいるところ悪いが、別に瑞希は早織と友達になった覚えはない。

 勝手に沙織が言っているだけである。


「大村さん、柊さんが嫌がってるわ。離れなさい」


 早織に絡まれて瑞希が嫌がっていると思ったのか、撫子は少し怖い表情を浮かべながら早織の腕をどかす。

 ここまで不機嫌そうな撫子は初めて見た。


「こわっ、どうしたの白鳥。別に柊は嫌がってないでしょ」


 撫子に腕を掴まれた早織は明らかに不機嫌そうな顔だった。


「嫌ではないが面倒だった。ありがとう白鳥」


 別に嫌ではないが陽キャ特有の近い距離感に辟易していた瑞希にとって、撫子の仲裁はありがたかった。


「いえ……別に」


 なぜか撫子は瑞希の視線を外してボソッと言う。


「まぁーまぁー三人とも。いきなりパーソナルスペースに入られて嫌だったんだよね。柊と白鳥はまだ友達になったばかりなんだから、距離感気を付けて」

「……あたしはただ仲良くなりたかっただけなのに」


 仲裁に入った帆波は瑞希たちをフォローしつつ、優しく早織に注意する。

 早織は、不満そうな表情を浮かべていたが帆波がいる手前、無理矢理不満の言葉を飲み込んだ。


「沙織ちゃんも友達って仲良くなるまで時間かかるから焦らなくても大丈夫だよ」


 心優しい舞が傷心の早織を慰める。


 これでは瑞希たちの方が悪者ではないか。


 瑞希は一人納得がいかなかった。


「ご飯も食べ終えたことだし、教室に戻る」

「そうね、私も食べ終えたから教室に戻ることにするわ」


 別に舞たちと一緒にいる義理もないし、理由もない。

 ご飯を食べ終えた瑞希と撫子は、一言だけ声をかけて屋上を出る。


 舞と早織と帆波は名残惜しそうに見ていたが、椿だけは無関心だった。


「……はぁー」


 瑞希は誰にも知られないように静かにため息をこぼす。


 やはり人と関わるのは面倒だ。


 一人でいる時は相手のことを気遣ったり遠慮しなくても良い。


 煩わしい人間関係で悩むこともない。


 だから瑞希は一人が好きなのだ。


「大丈夫柊さん。凄く疲れている表情をしているわ」

「別に大丈夫だ」

「……そう」


 瑞希がため息を吐いていたことがバレたのか、それとも疲れた表情を浮かべていてそれに気づいたのか分からないが、気遣うように声をかける撫子。

 瑞希はため息を吐いたことがバレたと思い、思わずそっけなく返事をしてしまった。


 瑞希の対応が冷たかったせいか、撫子は暗い表情を浮かべた。


 だから嫌なのだ。


 他人と関わるのは。


 自分も他人も何気ない相手からの言葉で喜んだりも傷ついたりもする。


 だから誰か他人といる時はずっと気を張りつめなければならない。


 これが瑞希が友達を作らない理由だった。


 友達がいなくても人生は生きていける。


 一歩後ろで撫子が瑞希に声をかけたそうな表情を浮かべていたが、瑞希はそれに全く気付くことはなかった。

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