それはこっちのセリフだ
「なるほど。それじゃー瑞希は友達といる楽しさを知らないってことじゃん」
瑞希を馬鹿にした感じではなく、早織はただ事実を指摘した。
確かに早織の言う通り、友達がいなかった瑞希は友達といる楽しさを知らない。
「確かに」
それに頷いたのは瑞希ではなく舞だった。
「でも僕たち友達になったよね」
「はぁっ?」
「確かにそうだった。ごめんね柊、白鳥」
帆波が突然意味不明なことを言ったので、瑞希は驚きのあまり喧嘩を売るような声が出てしまった。
いつ、瑞希が帆波たちと友達になったのだろう。
だいたい想像がつくが、あの放課後の屋上での出来事のことを差しているのだろう。
でもあれは勝手に帆波や舞や早織が瑞希たちのことを友達と言っているだけで、別に瑞希はこの人たちと友達になった覚えはない。
しかも早織もあの日、瑞希たちと友達になったと思い込んでいるのか、納得している。
「いや、柊と友達になった覚えはないんだけど」
椿も否定するが、帆波や舞たちは聞いていなかった。
「そうだよ、なに言ってるの。あたしたちはあの時友達になったじゃん」
やはり、舞を含めたあの三人の中ではここにいる六人全員が友達になったと思い込んでいるらしい。
「……白鳥。私はこの人たちと友達になった覚えはないのだが」
「……そうね。私も友達になった覚えはないわ」
小声で撫子にあの日のことを確かめてみると、やはり撫子もこの人たちと友達になった覚えはないらしい。
「……なんであたしがこんな根暗な柊と友達になんなきゃいけないのよ」
「……奇遇ね。ただうるさいだけの椿とは絶対友達にはなりたくない」
同じグループに所属している椿ですら、帆波の言っていることは看過できずに瑞希に文句を言ってくる。
瑞希も呼吸をするかのように椿に言い返す。
それぐらい椿に文句を言うことが日常的になっている証拠でもあった。
「ホント、嫌な男の娘ね。ストレスが溜まる」
「私もお前の顔を見てるだけでストレスが溜まるわ」
お互い顔を見合わせて睨み合う。
本当にムカつく男の娘である。
そんな二人を見て頭を痛めている撫子。
「やっぱなんやかんや言って椿も柊も仲が良いでしょ」
顔を見合わせている二人を見て早織が茶化すように言う。
「「良くない」」
反射的に反論したせいか、椿と声がはもってしまった。
本当に遺憾である。
「どうしてかぶるのよ」
「それはこっちのセリフだ」
言葉がはもったことが気に食わなかったのか、また椿は瑞希に喧嘩を売ってくる。
もちろん、瑞希も気に食わないので言い返す。
喧嘩するほど仲が良いということわざがあるが、これは仲が良いわけではなく、ただたんに嫌いなだけである。
「もはやここまで嫌い合ってるのに距離を取ったり陰口を言わないだけ凄いわ」
「確かに本当に嫌いだったら陰口とか言っちゃうもんね。でも瑞希ちゃんも椿ちゃんもお互いの陰口を聞いたことがないかも」
「それって本人に直接言ってるからだよね」
瑞希と椿の喧嘩を近くで見ていた帆波と舞はなぜか感心していた。
それはそうだろう。
文句があるなら直接本人に言うべきだ。
それを影でコソコソ文句を言っても相手には伝わらないし、陰口なんて無意味でしかない。
「さっき柊は友達は必要ないって言ったじゃん。そんなこと言う人初めて会った」
友達が必要か、必要ではないかと質問をされたら普通の人間は友達は必要だと答えるだろう。
だから早織が珍しがるのも無理はない。
「別に今までいなくても生きてこられたし」
瑞希は友達がいなくても高校生まで生きてこられたのだ。
だからこそ、逆に友達が必要と言っている人の感覚が理解できない。
「だから柊って面白いよね。あたしと全然考え方が違くて」
「はぁ?」
自分と考え方が違う瑞希のなにが面白いのか分からないが、早織が瑞希の肩に腕を回す。
瑞希のこの『はぁ?』はいきなり肩に腕を回されたことによる『はぁ?』だった。
舞もだが、リア充の女の子は男の娘、女の子関係なくこんなに距離感が近いのだろうか。
早織の肌も柔らかい弾力があり、女の子の腕だった。




