サイアク
その後、休憩を挟みながら瑞希たちはゴミを拾い続けた。
「そろそろ終わりか」
お昼になり、そろそろボランティアも終わる時間だ。
さすがに昼食をはさんでやるほど、ブラックではなかった。
「……疲れたな」
さすがにずっとゴミを拾い続けていたせいで、脚がパンパンである。
そのせいで少し脚がふらつく。
「そろそろ終わりね。一旦ゴミを集めるから、拾ったゴミを持ってきて」
さすがリア充の椿である。
みんなを上手く仕切っている。
「あぁー、やっと終わったー」
「さすがに僕も疲れたな」
早織はやっとボランティアから解放されると喜んでいるらしく、声が弾んでいる。
帆波も部活をやって足腰は鍛えているがそれでも、疲労は溜まっているらしい。
「……もう二度とこんなことはしたくはないわね」
「……あはは、さすがにあたしももうやりたくないかも」
真面目な撫子でさせ、次はやりたくないと言っている。
それぐらいゴミ拾いは大変なことである。
だからゴミを捨ててはいけないのである。環境汚染にもなるし。
舞もそんな撫子に共感し、疲れを滲ませていた。
ゴミを一か所に集めるため、瑞希は椿たちの方へ向かう。
「あっ……」
その時、瑞希は足を滑らせる。
脚が限界を迎えていた瑞希は河原の石で滑ってしまった。
動きがスローモーションのように見える。
人間、身の危険が及ぶと世界がスローモーションになると言われているが、それはあながち間違いではないのかもしれない。
「柊っ」
その時、誰かが瑞希の腕を引っ張って助けようとした。
しかし、その相手も瑞希を支えることができず、二人して川に落ちる。
川と言っても岸から近いため足首ぐらいの水深しかない。
「いてて……なにやってるんだ一色」
瑞希を助けてくれた相手は、まさかの椿だった。
「それはこっちのセリフよ。なにしてるのよ柊。馬鹿なの。足なんか滑らせて」
瑞希を助けた椿はいつも通りの椿で、川に落ちた瑞希を罵倒する。
「っていうかどうして私を助けたんだ一色。私なんか嫌いなんだろ」
椿は瑞希のことが嫌いだ。
それは椿本人が公言していることだった。
そんな椿が瑞希を助けたことが意味不明すぎて、瑞希の思考は追い付かなかった。
「確かに嫌いだけど、クラスメイトが危なかったら普通助けるでしょ。あんたのことは嫌いだけど」
やはり椿は瑞希のことが嫌いだったが、それとこれとは別らしい。
確かに椿の言い分は一理あるかもしれない。
いくら他人でも、見知らぬ人が倒れていたらほとんどの人が助けるだろう。
そんな感覚だろう。
「それにびしょ濡れね。サイアク」
「確かにびしょ濡れだな。早く家に帰って着替えたい」
二人とも川に落ちてしまったので、びしょ濡れである。
服が濡れて肌に張り付いていて気持ち悪い。
「椿、柊。大丈夫」
「ちょっといきなり川に落ちたけど、大丈夫なの」
「柊さん、一色さん。怪我はない」
「ビックリしたー……でも無事そうで良かった」
他の四人も川に落ちた瑞希たちを心配して駆け寄ってきてくれた。
「あたしは大丈夫よ。柊は怪我してない」
椿は心配している四人に元気アピールを行い、立ち上がった後瑞希に手を差し伸べる。
あまりにも予想外な行動に、瑞希はその手を握ることを躊躇してしまう。
「私も別に大丈夫だ。それでなんだその手は」
「なんだその手は、じゃないでしょ。ほら掴みなさいよ。引き上げてあげるわ」
傲慢な態度で瑞希に助けの手を差し伸べる椿。
いくら嫌いでもさすがにこの優しさを無下にするのは、気が引ける。
「礼は言わないからな」
「別に要らないわ」
瑞希は差し伸べられた手を握り、椿に引っ張ってもらいながら立ち上がった。
椿の手は撫子や舞とは違い、男の娘らしいゴツゴツしていた。
それは野球部という理由もあったかもしれないが、こんなに可愛くても瑞希と同じ男の娘だということを実感させられる手だった。
その後、ボランティアは無事に終わり瑞希は急いで家に帰って、着替えるのであった。




