まさにサポート部にピッタリではないか
「それはお前たちが『サポート部』だからだろ」
「黒川先生、意味が分かりません。もう少し分かりやすく言ってもらって良いですか?こんな説明じゃ納得できません」
撫子も貴重な休日をボランティアに奪われるのは納得していないらしく、珍しく教師に噛みつく。
「別にあたしは楽しそうなんだけどな~。だって休日に三人で会うなんて今までなかったじゃん。いつも瑞希ちゃんも撫子ちゃんも用事があって無理だって言うし」
リア充見習いの舞は、なぜそこまで瑞希と撫子が反対しているのか分かっていない様子だった。
それにいつも断っていた理由は、ただたんに面倒くさかっただけである。
そもそも休日は休みためにあるものであり、友達と一緒に過ごして疲れるためにある日ではない。
「金森はやる気十分だな。柊も白鳥も金森みたいだったら良いのに……」
やる気のある舞を良しとして、瑞希や撫子のようにやる気のない者を悪とする考えに瑞希はイラっとした。
そもそもボランティア活動というものは、ボランティアがしたいと自分から進んでやるのがボランティアだ。
嫌々やるならそれはボランティアではない。
「私は別に貴重な休日を潰されるのが嫌なだけです。適当に他の先生から押し付けられたなら職権乱用で校長先生に報告しますよ」
「おい待て。別に職権乱用はしてないからそんな物騒なことは言うな」
頑としてボランティアをして休日が失われることが死んでも嫌な瑞希は尚美に脅しをかける。
尚美の反応を見るからに嘘を言っているわけではないだろう。
「話が脱線してるので元に戻してください」
話が脱線していたことに気づいた撫子は鋭い目で、尚美に注意する。
「まずボランティアの内容について説明する。ボランティアということからも分かる通り、河川敷のゴミ拾いはボランティアの有志によって開催される。当然、お金も発生しないタダの労働だから参加する人も少ない。つまり人が足りない。そして、やはり部活動を創立させるにあたって、それなりに活動記録が必要になってくる。もし部活動を作ってもなにも活動しなかったら生徒会や先生方から廃部勧告をされる可能性が高い。だから四月のうちに活動記録を作って生徒会や先生方を黙らす必要がある。そしてこれは生徒会からのお願いという形で回って来た依頼だ。つまり、生徒からのお悩みだ。サポート部の活動内容はなんだったかな?」
ここで尚美が意地悪い顔で瑞希に聞いてくる。
「……よりよい学校生活を送るために私たちがみなさんのサポートをします、だ」
瑞希は尚美に屈服するかのように言葉を吐き出す。
久しぶりに辛酸を舐めた気分だ。
「これは生徒会からのお願い、つまり生徒からのお悩みだ」
「でも河川敷のゴミを拾ってもよりよい学校生活を送れるとは思えないのだけれども」
なおも尚美に食い下がる撫子。
撫子の言う通り、河川敷のゴミ拾いをしたからと言って、よりよい学校生活を送れるわけではない。でもこれはただの屁理屈だ。
この理屈なら、大抵の理論は論破されるだろう。
「そんなことはないぞ白鳥。あそこの河川敷は白桜高校の生徒たちもよく通る道だ。ゴミを拾った綺麗な河川敷を歩く方が、ゴミだらけの河川敷を歩くよりも気持ちが良いだろう」
「……うっ……」
今日の尚美はかなり弁が立つらしく、撫子も丸め込まれた。
「これは生徒会の依頼で、しかも河川敷のゴミ拾いをすることで、ここを通る生徒は気持ち良く学校生活を送ることができる。まさにサポート部にピッタリではないか」
「「……」」
くそ~。なにも言い返せない。
それは撫子も同じらしく、悔しそうに下唇を噛んでいた。
せっかくの休日なのに……無償労働するはめになるなんて……最悪である。
「ほらっ瑞希ちゃんも撫子ちゃんも元気出して頑張ろう。初めての部活らしい部活だよ。それに休日にみんなと会えるなんて楽しいじゃん。あたし、今から楽しみなんだけどっ」
一人、ボランティアに前向きな舞は一人はしゃいでいた。
舞は三人で部活動ができることが嬉しいらしく、また休日に会えるのもその嬉しさに拍車をかけていた。
「決まりだな。あたしの方で申し込みをしておくから当日よろしくな」
「「……はい」」
「はいっ」
尚美はなぜか瑞希に勝ち誇った表情を浮かべ、声を弾ませていた。
さすがの瑞希もこれ以上、屁理屈をいうことができず、それは撫子も同じだった。
一方、舞はとても嬉しそうに笑っていて、一人だけ幸せそうだった。




