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柊瑞希は青春コンプレックス  作者: 黒姫 百合


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35/63

舞、ナイスボケっ

 廊下は走ってはいけない。


 誰がそんな校則を作ったのだろうか。


 舞はそんな校則は全力で無視するかのように、全力で廊下を走り野球部が練習しているグラウンドまで走った。


「休憩。各自、汗と水分補給をするように」

「「「はいっ」」」


 舞が野球部が練習しているグラウンドに着いた時、ちょうど休憩に入ったらしく部員は休憩していた。


 本当にラッキーだ。


「椿ちゃん……早織ちゃん……帆波ちゃん……」


 息を切らしながら休憩していた三人に話しかける舞。

 久しぶりに全力疾走したからわき腹が痛いし、体全体が酸素を求めていて息苦しい。


「どうしたの舞。部活中にやって来てっ」


 いきなり舞が現れて椿は驚いた声を上げる。

 驚いたのは椿だけではなく、早織も帆波も驚いているように不思議そうな表情を浮かべている。


「……椿ちゃんに伝えたい……ことがあって」

「大丈夫舞。一回深呼吸した方が良いよ」


 息を切らしている舞を慮って帆波は舞に助言する。

 帆波の優しさに嬉しさを覚えるが、今はそれよりも椿に伝えなければならないことがある。


「椿ちゃんの、馬鹿ー」

「「「えっ……」」」


 感情が先走り、舞は脈絡もなく椿を罵倒する。

 さすがのリア充三人組も、いきなり罵倒されて目が点になっている。


「えっ、なになに」

「喧嘩?」


 他の野球部員も荒ぶっている舞の声を聴いて、ヒソヒソと噂話をしている。


「あのね、舞。いきなり馬鹿って言われても意味分からないんだけど」


 困ったように椿は自分の頭をかく。


「椿ちゃんは馬鹿だよ。なんで勝手にあたしの気持ちを決めつけるの。瑞希ちゃんに教えてもらったよ。別にあたしは無理して椿ちゃんと仲良くしてたわけじゃない」

「ちょっと待って。舞ってあたしらに無理矢理合わせていたわけじゃなかったの?」


 舞は自分の本当に思いを三人に伝えるために叫んだ。

 早織も戸惑っているのか動揺しているのか、声が焦っている。


「そうだよ。あたし別に無理してないし。あたしはただ椿ちゃんたちと仲良くなりたかっただけだったのに……」

「だってあたしたちと話している時、メチャクチャ困ったような顔してたし無理して笑ってたし、言葉を詰まらせながら話してたじゃん」

「それはあたし中学まで友達のいない喪女だったから、どうやって友達とコミュニケーションを取れば良いか分からなかっただけ」


 椿たちも瑞希たちと同様、勘違いをしていたらしい。

 だから舞は自分のことをもっと知ってもらうために過去のことまで話し、椿たちに説明した。


 本当に一生思い出したくもない黒歴史だけれども。


「そうだったのね……勘違いしてごめん。てっきりあたしは無理矢理あたしたちに付き合ってるとばかり思って。無理して付き合ってるならあたしも辛いしきっと舞も辛いと思って」

「全然辛くない。むしろ今の方が楽しいもん。だからね椿ちゃん……もし言いたいことがあるなら直接あたしに言ってほしい。勝手に察して突き放さないで」


 舞のことを勘違いしていた椿は素直に舞に謝罪した。

 椿と本当の友達になるために、これからは察するのではなく言いたいことがあったら直接自分に言ってほしいということを椿に伝えた。


 日本人は察することを美徳と考えている人が多い。


 でもそれは大きなお世話だ。


 自分の心は自分でも分からない時があるのだ。それを他人が簡単に自分の心を理解できるわけがない。


「だってよ椿。僕と椿がぶつかって分かり合えたように、舞と仲良くなりたいならぶつかり合わないと、ね」

「あたしも勝手に勘違いしてたわ。それなら遠慮なくこれからは言うわ。と、友達だもの」


 帆波は椿をからかうような口調で、肩に腕を回す。

 早織も見た目がギャルだがピュアなのか、友達に改めて友達ということにテレを感じていた。


「不束者ですがこれからもよろしくお願いします」

「それ、婚約者が言うセリフだから」

「マジウケるんだけどー」

「舞、ナイスボケっ」

「ちょっと間違えただけじゃん。笑うなー」


 言葉を少し間違えた舞に、椿、早織、帆波の三人が一斉に笑いながらツッコミを入れる。


 もちろん、舞はボケるつもりなんてなかった。


 三人にからかわれた舞は恥ずかしそうに、顔を赤らめさせる。


 四人が改めて本当の友達になった瞬間だった。

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