だから真に受けるなって言っただろ
放課後になり、椿たちは部活へと行った。
つい昼休みまで、喧嘩していたグループとは思えないほど仲が良さそうに教室を出て行った。
そんな三人を瑞希は恨めしそうな目で睨みつける。
あいつらのせいで余計な仕事をさせられたのだ。
恨み言の一つぐらい言ってやりたい。
でも、そんなことをするとまた椿と喧嘩することになり余計な時間を浪費することになるので止めた。
「ねぇーねぇー瑞希ちゃん、撫子ちゃん。椿ちゃんが言っていた『あたしと椿ちゃんが棲む世界が違う』ってどういう意味」
帰ろうとカバンの中に教科書などを詰め込んで瑞希が立ち上がった時、舞に話しかけられる。
隣には捕縛済みの撫子がおり、表情からすぐに無理矢理連行されたことは容易に想像がつく。
「そのまんまの意味だ。金森と一色では棲む世界が違うんだ」
瑞希は簡潔に舞に説明する。
「それじゃー分からないよ。あたしにも分かるように説明して」
これでも分かりやすく簡潔に言ったのに舞は理解できないらしい。
こういうことを言うと怒られるので言わないが、舞は読解力が低いらしい。
「説明するのが面倒くさいから白鳥お願い」
「どうして私に丸投げをするのかしら?質問をされているのは柊さんよ」
詳しく説明するのが面倒だったら瑞希は撫子に丸投げをしたら、撫子からブーメランが返って来た。
撫子の言う通り、質問されているのは瑞希だ。
だから説明責任は瑞希にある。
なかなか弁が立つ女だ。
「なんか他の人たちは分かっているのに、自分だけ分からないのは嫌なんだもん。……なんだか仲間外れにされてるようで」
どうやら舞は自分だけ椿の真意に気づけなかったことに劣等感を覚えているらしい。
最後の方のセリフは聞き取れなかったが、拗ねていることは表情だけは分かった。
「……分かったよ。でもこれはあくまでも私個人が思ったことであり、実際に正しいかどうかは分からない推測だと思って聞いてほしい」
このまま押し問答の時間が続くのは時間の無駄だ。
だったら自分の推測を舞に伝える方が時間の浪費しなくて済む。
「うん。分かった」
舞は鼻息を荒くして瑞希の言葉に注目する。
隣では『なんで私まで一緒にいなきゃいけないのよ』と言わんばかりに頭を抱えていた。
このことだけに関して言えば、舞は良い働きをしている。
撫子だけ帰るなんて、そんなの問屋が卸さない。
ここまで来たら撫子も道連れである。
「単刀直入に言う。金森は一色のグループに全然合ってない。それだけだ」
「え―――。そんなことないよ。だってあたしと椿ちゃんは友達だもん」
瑞希があの時の答え……というか推論を披露すると、舞は不満そうな表情を浮かべながら反論して来た。
「だからこれはあくまでも私の推測だから、あまり真に受けるなよ」
「あっ、そうだったそうだった。それでどうしてあたしが椿ちゃんのグループに合ってないの?だって、あたし椿ちゃんたちと友達だよ」
恥ずかしげもなく素直に友達のことを友達と言えるのは舞の良いところだと思う。
「金森は友達と思っていても一色たちはあまりそう思っていなかったということだ」
「……」
瑞希が椿の真意の推測を話すと、かなり落ち込んでいるのか舞は言葉を発することができず、目元に涙を浮かべていた。
「柊さんはもう少しオブラートに言うことを覚えるべきだと思うわ」
「白鳥には言われたくないセリフだな」
泣き出しそうな舞に同情したのか撫子がなぜか瑞希を責める。
その言い方に腹が少し立った瑞希は嫌味ったらしく反論する。
「……そうだったんだ……友達だと思っていたのはあたしだけだったんだ」
ついに涙を我慢することができなかった舞の目から涙がこぼれる。
友達だと思っていた友達が実は自分のことを友達だとは思っていなかったと言われたら、かなり精神的にくるだろう。
「だから真に受けるなって言っただろ」
泣き出す女を面倒くさいと思っている瑞希は、面倒くさそうに舞に話す。
「私は別に一色たちが金森のことを友達だとは思ってなかったと完全否定はしてないだろ。むしろ、金森のことはそれなりに大事だと思っていたと思う。じゃなかったらあんな優しく金森を拒否ることはしないだろ」
これはあくまでも瑞希の推論で、瑞希も別に椿が舞のことを友達ではないと完全否定はしていない。
むしろ、椿は舞に優しいぐらいだ。
ただそのやり方が不器用なだけ。




