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柊瑞希は青春コンプレックス  作者: 黒姫 百合


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32/63

……別に嫌いではない

「金森。私たちは異性なんだからすぐに抱き着くな」

「柊と意見が合うのは癪だけど、もう少し舞は女の子であることを自覚しなさい。すぐに異性に抱き着くなんて破廉恥よ」


 異性に抱き着かれて狼狽する瑞希と椿。

 二人とも男の娘であるため、異性のスキンシップになれていなかった。


 そのため、顔がほんのり赤く染まる。


「別に友達だからあたしは平気だよ」


 舞はなにが問題なのか分かっていない顔をしている。


「あたしは瑞希ちゃんも椿ちゃんも好きだけど、二人はあたしのこと嫌い?」


 ここで舞が二人に逆質問をしてきた。


 よく、自分のことが好きか、嫌いか質問できるなーと瑞希は思った。


 さすがにストレートに嫌いだとは言わないと思うが、この女の子は自分が嫌われているという可能性は考えていないのだろうか。


「「……別に嫌いではない」」


 正直言って舞は嫌いではなかった。もちろん、好きでもない。

 瑞希が答えたのと同時に椿の答えもかぶる。


 その瞬間、お互いが顔を見合わせて嫌な表情を浮かべる。


 よりによって椿と答えがかぶるなんて、一生の不覚である。


「凄い、はもったよ。やっぱり二人は仲良くなれるよ。絶対」


 ただ言葉がはもっただけで、舞は大喜びである。

 二人のことを抱きしめながらピョンピョン跳ねている。


「僕は舞に賛成かな。三人で話してた時、結構楽しかったもん」

「ちょ……帆波、いつの間にこの三人と仲良くなってるのよ。あたし、知らないんだけど」


 帆波が舞の援護射撃をすると、椿は帆波がこの三人といつの間にか仲良くなっていたことに焼きもちを焼いて驚いている。


「確かに陰キャのボッチって見下していたわ。でも、相手のことを知らないで見下すのも失礼だよね」

「その言い方の方が失礼だと思うは私だけかしら大村さん」


 失礼なことを言いながら馴れ馴れしく撫子に話しかける早織に、嫌悪感を隠そうともしない撫子。


 確かにこれは早織が失礼すぎる。


「これで問題解決だよね帆波ちゃん」

「うん、解決。よくよく考えれば単純だったねこの問題」

「陽キャたるもの、陰キャも知って陽キャべし。あたし、今格好良くなかった?」


 舞や帆波や早織の中ではこの問題は解決したらしく、ワイワイ喋っている。


 これで納得していないのが瑞希と椿である。


 一言で言うと不完全燃焼である。


「私だけか。納得してないのわ」

「大丈夫よ。あたしも不満だらけだから。でもあの笑顔を見たら今更水を差すわけにもいかないじゃない」


 瑞希も椿も納得していなかったが、あの三人の笑顔を見たら水を差すことはできなかった。


 だから、渋々それを受け入れるしかなかった。


 そしてタイミングが良いのか悪いのか、ここで予鈴のチャイムが鳴る。


「もう戻らないと遅刻するわね。舞、帆波、早織。戻るわよ」

「うん」

「えへへ、また椿ちゃんと一緒に話せるね」

「陰キャと陽キャの混合グループ。逆に面白いかも」

「早織、それ、全然面白くないから」


 予鈴が鳴り、リア充四人組は仲睦まじく教室に戻っていく。

 今まであんなに言い争っていたのがまるで嘘のようだった。


「……」


 屋上に取り残される瑞希と撫子。

 撫子はなぜか不安そうな目で瑞希のことを見ていた。


「どうしたんだ白鳥」

「……いえ、別に。仲直りできて良かったわね」

「いや、私はあまり納得してないんだけど」

「そう言う割には嫌そうな顔をしてないように見えるけど」


 無言で瑞希のことを見ていた撫子に尋ねると、撫子は曖昧に誤魔化した。


 椿と一緒のグループになることは全く納得していないのだが、撫子にそれを愚痴ると予想外な言葉が返って来た。


 残念ながらここには鏡がないので確認のしようがないのがもどかしい。


 その後、このまま突っ立っていると次の授業に遅刻するので、瑞希たちも教室へと戻る。


 屋上は春の爽やかな風が吹き、清々しいほどの晴天だった。

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