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柊瑞希は青春コンプレックス  作者: 黒姫 百合


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31/63

……あっ、あたし良いこと思いついた

「それで舞はあたしと柊、どっちを優先させるの?」


 それでもしつこく椿は舞を問い詰める。


 まるで自分が悪役を引き受けるかのように。


 そもそも論点がずれていることをどれぐらいの人が気づいているだろうか。


 最初、喧嘩をしている理由が舞が瑞希たちと仲良く話していることが嫌だった椿が瑞希たちのグループに行けば良いと言い、舞はどっちとも仲良くなりたいという話だった。


 でも口論しているうちに、椿は舞が瑞希と椿、どっちを優先させるのかという話題に代わっている。


 似ているようで全然違う争点になっていたのだ。


「だったら体を半分に分けてどっちにも行く」

「「「……?」」」


 今まで現実的に話していたのに、急にファンタジーな答えが返って来た。


 体を半分に分けてどっちにも行く?


 そんなに現実的にも物理的にも無理だ。


「……ぷっ」


 ここで最初に笑い出したのは意外にも椿だった。


「さすがにそれは無理でしょ」


 早織もゲラゲラと笑っている。


「さすがにその答えは思いつかなかったわ」


 あの撫子すらもクスクス笑っている。

 帆波も腹を抱えて笑い、今までシリアスムード全開だった空気が霧散して、瑞希はそのギャップに戸惑い笑うことができず、逆に戸惑っていた。


「なんで笑うのよ。あたし、一生懸命考えたのに」


 笑われたことが恥ずかしいのか舞は頬を膨らませている。


「ごめん、ごめん。まさかそんな馬鹿な答えをされるとは思ってなくて」


 目に涙を浮かべながら、オブラートに包まずに椿は舞に話す。

 ストレートに言いすぎだろう。


「……あっ、あたし良いこと思いついた」


 なぜか突然ひらめく舞。


「ちょっと待て。今までの流れ完全に無視してないか。脈絡なさすぎるだろ」


 なんの脈絡もなくひらめく舞に瑞希はツッコミを入れる。

 みんな舞の馬鹿げた答えを聞いて頭がおかしくなったのが、誰も舞の突然のひらめきに疑問を抱いていない。


「瑞希ちゃんのグループと椿ちゃんのグループが分かれてるなら、一緒になれば良いじゃん」

「「……はっ?」」


 この女の子は次々と意味不明なことを言ってくる。

 さっきも言ったが瑞希と椿は水と油、つまり決して相容れない存在だ。


「白鳥、金森が言ってること分かるか」

「いえ、私も分からないわ。一体金森さんはなんて言ってるのかしら」


 頭脳明晰な撫子にも舞が言っている意味は分からないようだった。


「さすがにあたしも分からないんだけど、椿は分かる?」

「分かるわけないじゃないの。さっきのといい、今のといい、舞は本当にあたしたちの斜め上を行くわね」


 早織も椿に確認したところ、椿も舞が言っている意味は分からないようだった。


「ほらっ、瑞希ちゃんと椿ちゃんが仲良くなれば一緒のグループになれるじゃん。そうすれば、どっちのグループに所属するか悩まなくても済むでしょ」


 舞は名案だと言わんばかりに堂々と自分の考えを披露する。

 今まで舞の言っていることは意味不明だったが、今回のこれだけは理屈が通っている。


 つまり、瑞希と椿が仲良くなり、一緒のグループになったらそもそも舞がどっちのグループに所属するか悩まなくても良い。


 画期的なアイディアだが、一つ大きな欠点がある。


「私は嫌だぞ。こいつと仲良くするなんて」

「奇遇ね。あたしも嫌なんだけど」


 それはお互いがお互いのことが嫌いだということだ。

 数分前にも公言したが瑞希は椿のことが嫌いだし、椿も瑞希のことが嫌いだ。


 だから瑞希が椿と仲良くなることはない。


「それなんだけど、二人ってまた出会って数日しか経ってないじゃん。だからまだお互いのことが分かっていないだけだと思うんだよね。だって瑞希ちゃんも優しくて良い人だし、椿ちゃんだって優しくて良い子だし。こんな二人なら、今は仲良くなくても仲良くなれるよ、うん。だってあたし、どっちも好きだもん」


 舞は二人に熱弁しながら二人を同時にハグするように抱きしめる。


 だからこの女の子はどうしてパーソナルスペースが狭いのだろうか。


 女の子の柔らかい触感が制服越しからも分かる。

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