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柊瑞希は青春コンプレックス  作者: 黒姫 百合


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中立で冷静な人が一人いると助かるわね

「お前の方が馬……」

「少し落ち着きなさい。今は一色さんと喧嘩してる場合じゃないでしょ。……私も気持ちが分からないわけじゃないけど。けど今は依頼を遂行する方が優先よ」


 馬鹿と言われて言い返そうとした時、撫子が瑞希の暴走を止めた。

 瑞希も柄にもなく頭に血が上っていたことに気づいたことによって、冷静になる。


「っていうか用事がないなら話しかけないでくれる。こっちだってあんたらと話してるほど暇じゃないんだけど」


 今まで早織のことを無視していたのが気に食わないのか、早織は面倒くさそうに瑞希たちをあしらう。


「そうだな。私もお前たちと話しているほど暇じゃないからな」

「なら話しかけてこなければ良いじゃない」


 瑞希だって好きで椿に話しかけたわけではない。


 むしろ、一生話したくないどころか口もききたくもない。


 だから椿が言っていることは間違いなく正論である。


「私たちは依頼を受けているのよ。栗山さんから」

「……帆波から……」

「えぇ、そうよ。だから私たちは一色さんに伝えなければならないことがあるの」


 瑞希ではまた喧嘩になってしまうと予測した撫子が、瑞希に代わって椿とコミュニケーションを取る。


「……どうして帆波はあたしになにも話してくれないの?小学校の時から一緒のあたしじゃなく、高校から知り合ったこいつらの方が信頼してるの?」


 今、なにか椿が大事なことを言ったような気がしたが、声が小さすぎて聞き取ることができなかった。

 ちなみに椿の隣にいる早織は空気を読んでいるのか、変な口出しは一度もしていない。


「屋上で栗山さんと金森さんが待ってるわ。二人ともなにか一色さんに話したいことがあるそうよ。行ってみた方が良いんじゃないかしら」


 瑞希の時はあんなに反抗的だったのに、撫子の時はなぜか静かに聞いている椿。

 椿の態度の違いにモヤモヤを感じていた瑞希だったが、ここで口を挟むとまた面倒なことになると予測した瑞希は黙っていることにした。


「どうすんの椿」

「どうするもなにも帆波や舞があたしに話したいことがあって屋上で待ってるなら行くしかないでしょ。無視するわけにも行かないし」


 早織に聞かれた椿は、瑞希たちに屋上に行けと言われるのは癪だが帆波が屋上で待っていると考えると行かないわけには行かないというような表情を浮かべている。

 素直なのか不器用なのか、結構椿の表情は分かりやすい。


「それじゃー屋上で待ってるらしいからあとはよろしく」


 瑞希たちの役割は椿たちを屋上に連れて行くことだ。

 椿たちがこのまま屋上に行けば、これで瑞希たちのミッションはクリアだ。


「はぁ?なに言ってんの?あんたたちも来ないでどうするの?」

「どうするもなにも、私たちが行く必要性はないでしょ。これは一色と金森と栗山の喧嘩であり私は無関係なんだから」


 なぜか椿は瑞希たちも一緒に屋上に行かないことに憤慨している。

 そもそも、この喧嘩は椿と舞と帆波の喧嘩であり、瑞希には関係ない。


 むしろ、瑞希はその三人の喧嘩のとばっちりを受けたのだから、完全に被害者である。


「そもそもこの喧嘩はあたしと舞の喧嘩が原因でしょ。その喧嘩の原因は柊、あんたでしょ」


 つまり、椿はこの喧嘩の原因は椿グループの舞が瑞希という違うグループに話しているのが気に食わないということが発端である。


「確かに柊は一緒に行った方が良いんじゃないの」


 早織は椿グループの女の子なので当然のように椿の味方をする。


「確かに一色さんの言っていることは一理あるわね。柊さんは行くべきよ」


 瑞希の味方だと思っていた撫子がここで裏切って来た。


「お前までそんなことを言うのか」

「えぇ、だって柊さんも無関係ではないでしょ。本当に解決したいなら柊さんも行った方が良いわ」


 ここで裏切られるとは思っていなかった瑞希はショックを受ける。

 しかし、撫子はそんな瑞希の感情を慮ることなく、淡々と合理的なことを言う。


「それなら白鳥も行くべきだろ」

「私はなにも巻き込まれてないもの。教室で待ってるわ」


 自分だけ巻き込まれるのは癪だったので撫子を道連れにしようとしたが、撫子は冷たくその道連れを一刀両断する。


「いや、白鳥も行った方が良いでしょ。柊だけじゃ間違いなくこじれるでしょ」

「確かに早織の言うとおりね。中立で冷静な人が一人いると助かるわね」


 今まで敵だと思っていた早織と椿がここで瑞希のフォローをする。

 これはには庇われた瑞希はもちろん、まさか自分が糾弾されるとは思っていなかった撫子は驚きのあまり口をポカンと開けている。


 こんなに動揺している撫子を瑞希は見たことなかった。


「とりあえず屋上に行けば良いんでしょ。ほらっ、行くわよ三人とも」

「はーい。ほら柊も白鳥も早く行くよ」

「……はぁ~……」

「……最悪」


 ここで断るとさらにこじれることはなんとなく分かった。


 だからここは素直に椿や早織の言うことを聞いた方が賢明だろう。


 だからと言って、納得しているかと聞かれれば納得はしていない。


 瑞希は面倒くさそうにため息を吐き、撫子は悪態を吐いた。

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