いつもはあたしの味方なのに
その後、舞や帆波たちと綿密な計画を考え、実行に移す日が来た。
「それじゃー瑞希ちゃん、撫子ちゃん。よろしくね」
「お願い柊、白鳥」
舞は明るい表情を浮かべながら手を振り、帆波は藁にも縋る思いで瑞希たちに頭を下げ、屋上に向かった。
どこで仲直りするのがベストかと考えた時、風通しも良く青春っぽい屋上が良いと舞が言ったことで屋上に決まった。
なぜ屋上が青春っぽいのか分からないが、舞が良いなら瑞希が口を挟むのは野暮というものだろう。
放課後とだと椿と帆波が部活で忙しいから、昼休みに実行することになった。
「……なんで私がこんなことをしてるんだろう……」
瑞希は自分がしていることを嘆き、ため息をこぼす。
一人で平穏な学校生活を送りたかっただけなのに、気付けば、いつの間にかリア充の喧嘩の仲裁を行っている。
こんな未来、一週間前の瑞希は想像もしていなかっただろう。
実際、想像もしていなかった。
「部活だからでしょ」
瑞希の嘆きに隣にいる撫子が冷たく一刀両断する。
「まさかこんな私たちみたいな怪しい団体にお悩みを持ってくる人がいるなんて予想外だった……」
今年創立されたばかりの部活に誰がすぐに依頼をしてくると予想できただろうか。
「それには私も同意見ね。こんなどんな生徒が所属しているのか分からない部活にお悩みを持ってくるもの好きがいるとは思わなかったわ」
「もの好きって言っても、依頼人は金森だしな。一応私たちとクラスメイトだし私たちのことを知ってるから相談を持ち込んだのだろう」
「確かにそうね。金森さんと私たちはクラスメイトだから、知らない間柄の関係ではないわね。……もしかして今、私金森さんのこともの好きって言ってしまったかしら」
「もしかしなくても言ったな」
そもそも相手の素性も知らないのに悩みを相談する人なんて来るだろうか。いや、来ない。
だからこそ活動しなくても良い部活を作ったのだが、まさかクラスメイトからお悩み相談を受けるとは思っていなかった。
確かにクラスメイトならある程度素性も知ってるから相談しやすいのかもしれない。
でも普通に考えて、相談相手は高校生である。
高校生に相談、ましてや瑞希たちは高校一年生だ。後輩に相談を持ち込む上級生はほとんどいないだろう。
「それは金森さんにひどいことを言ったわね。謝った方が良いかしら」
「別に金森には聞かれてないんだし、変に謝罪される方が困惑されるだろ」
この場に舞がいないから、そこまで馬鹿真面目に謝罪しなくても良いと瑞希は思う。
「そもそもこれは柊さんが受けた依頼だから柊さんが一人でやれば良いんじゃないかしら」
「おい待て。これは私個人ではなく、サポート部で受けた依頼だ。だから白鳥も私と一緒にやるんだよ。ってこれ、最初相談されたときも言わなかったか?」
「よく覚えてるわね。その通りよ。私的には忘れていることは期待していたのだけれど、さすがの記憶力ね、柊さん」
言っていてデジャブを感じていたと思っていたが、似たようなやり取りを最初相談された時もやっていた。
撫子は瑞希がそのやり取りを覚えていたことに驚いているようだったが、瑞希的には逆に撫子の方が覚えていることに驚いた。
撫子は頭が良いのかもしれない。
そんな他愛もない会話をしていると、トイレにでも行っていたのか椿が戻ってくる。
おまけと言っては相手に失礼かもしれないが、沙織もいる。
本来ならここに舞と帆波も一緒にいるのが椿たちにとっての日常だ。
「……帆波の奴、どうして今回はあたしの味方にならなかったのよ、馬鹿。いつもはあたしの味方なのに」
「……帆波には帆波の考えがあるんじゃないの~。あたしは帆波じゃないから分からないけど」
なにを話しているのか分からないがとりあえず椿に話しかけて屋上に連れて行かないとなにも始まらない。
本当は死ぬほど話しかけるのが苦痛だが、話しかけないと舞と帆波はずっと屋上で待っていることになるし、いつまで経っても終わらない。
ならさっさと終わらせる方が時間的にも精神的にも楽だ。
「一色、少し話があるんだが、少し良いか」
「はぁー、なにあたしに話しかけてきてるわけ?あたしは別にあんたに話すことはないんだけど」
「奇遇だな。あたしもお前に話したいことはない」
「はぁ……?」
少し話を聞いてもらおうと椿に話しかけたら、潔いぐらい拒絶された。
ここまで来るといっそすがすがしい。
だから瑞希の方も思わず本音が漏れてしまった。
椿からすると、自分に用があって話しかけてきたのに、瑞希の方からも話すことはないと言われたら、鳩が豆鉄砲を食ったような顔になるのも至極当然である。
「だったらなんで話しかけてきたのよ。馬鹿なのっ」
椿も用がないのに話しかけてきた瑞希が意味不明らしく、暴言を吐き出す。




