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柊瑞希は青春コンプレックス  作者: 黒姫 百合


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じゃないと本気でキレるよ

「……えっ、そんなに驚くこと?」


 逆に帆波はなぜ三人がそんなに驚いているのか分からないらしく、一人首を傾げた。


「ちなみに、そのたった一回の喧嘩ってなにが原因だったの。残しておいてプリンとか食べたとか?」


 椿と仲直りさせるため、撫子は帆波から情報を引き出そうとする。


「う~ん、凄く恥ずかしいだけど……僕たちは小学生の頃から野球をしてたんだけど、小学生五年生の時肩を壊しちゃって……あっ、僕昔はピッチャーだったんだけど肩を壊したから今はセンターやってるんだけど……それは関係ないか。昔、ピッチャーとして投げすぎて肩を壊しちゃったんだけどその時、メチャクチャ椿に怒られて。『どうしてあたしにピッチャー変わってくれなかったの。私だって補欠でいたのに。そんなに無理して投げたら壊れるに決まってるじゃん、馬鹿』って言われて。僕はあの時、自分一人でなんとかしなきゃって思ってたんだ。エースだったし。子供でしょ。今思えば子供だよ。一人で何試合も連続で投げてたらそりゃー壊れるよ。でもあの頃は僕がなんとかしないとダメだと思っていたし、僕がいないとダメだと思っていた。でも違った。あのチームには椿がしたし、チームメイトもいた。あそこで僕が無理して投げる必要もなかったんだ。肩を壊した僕にショックを受けた椿はしばらくの間、僕と口を聞いてはくれなかった。何度も謝ったけど許してはくれなかった。でも何度も謝っているうちに許してくれて、一つ約束をしたんだ。『もう無理して肩を壊さないこと』たったそれだけ。僕はもう二度と椿の傷ついた姿を見たくないからピッチャーを辞め、左投げに転向してセンターになった。そして椿は代わりにピッチャーになった。結構長い話になっちゃったね。これが僕が椿と喧嘩したたった一回の喧嘩。あの時の喧嘩は僕が一方的に悪かったんだけどね」

「そうだったんだね……帆波ちゃんも椿ちゃんも大変だったんだね……」


 恥ずかしそうに過去の話をする帆波に二人の悲しい過去に同情した舞は涙をこらえていた。


「ありがとう栗山さん。そんな大きな過去を話してくれて」

「ううん、別に大丈夫だよ。もう終わったことだし。舞も白鳥もそんな悲しい顔しないでよ。僕は今も普通に野球してるし、幸せだから」


 撫子も思うところがあったのだろう。申し訳なさそうな表情を浮かべている。

 逆に帆波からすればこれはもう終わった過去だから気を使われると反応に困るのだろう。


 良かれと思って相手に気を使ったことが、逆に相手に気を使わせてしまう。


 人間関係の難しいところである。


「……ダメだ。全然解決策が思い浮かばない」

「そうね。普通喧嘩をした場合、謝って仲直りするのが一般的だけど、金森さんも栗山さんも悪いことはしてないから謝っても仲直りは難しそうね」


 帆波から昔話を聞いた瑞希だったが、これといった解決策は思いつかなかった。


 それは撫子も同じようで、頭を悩ませている。


 今回の喧嘩は椿と舞の喧嘩だ。そしてそれが飛び火して椿と瑞希の喧嘩になり、最終的に仲裁しようとした帆波に火の粉が降り注いだ。


 椿と舞の喧嘩は要するに、舞が瑞希と話しているのが椿にとって気に食わないことだったから喧嘩になった。


 そこに瑞希が油を注いでしまったため、大炎上してしまったのだ。


「これって要するに一色が金森が私たちと話すのが気に食わないから拗ねているだけじゃないのか。わがまますぎるだろ」

「そうね。まるで欲しいおもちゃを買ってもらえない子供のようね。自分がわがまま言えばなんでも思い通りに行くと勘違いしてるんじゃないかしら」


 そもそも今回、椿がキレた理由が幼稚すぎる。


 簡単に言えば、舞が瑞希と話しているのが気に食わなかっただけである。


 たったそんなことで喧嘩をして、舞をハブり帆波も無視する。


 百パーセントあっちが悪い。


 瑞希と撫子はただ見たままのことを言い、自分たちが椿に対して思っていることを言っただけだった。


 バァーン。


 机が思いっきり叩かれ、目の前にいた瑞希と撫子、そして隣に座っている舞も体をビクンとさせて驚く。


 音を発生させた張本人は、静かに怒りの言葉を吐きだす。


「確かに君たちから見れば椿はただ我がままを言っている男の娘にしか見えないと思う。確かに椿は我がままだ。それは僕もそう思う。でも君たちはまだ椿と出会って一週間ぐらいしか経ってないでしょ。そんな短い期間しか一緒にいないのに、椿のなにを知ってるって言うの?だから僕の前で椿を侮辱するのは止めてくれないかな。じゃないと本気でキレるよ」


 帆波の本気の怒気に三人は恐怖を感じた。


 嫌な脂汗が背中を伝う。

 帆波は今、本気で怒っていた。


 大切な幼馴染のために。


 帆波の言う通り、瑞希は全然椿のことを知らない。


 だから、今見たまんまの椿のことを言っただけだった。


 別に椿の悪口を言うつもりはなかった。


 だが、幼馴染の帆波からすれば我慢ならなかったことだったのだろう。


 帆波と椿は小学生の頃からの付き合いだ。そのため、瑞希たちとは比べ物にならないぐらい、帆波は椿と多くの時間を過ごし、椿のことを良く知っている。


 そこになにも知らない瑞希や撫子が椿の悪口を言ったら、誰だって嫌な気持ちになるのは至極当然のことだ。

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