……あたし追い出されちゃったな……
「柊」
まるで親の仇を見るかのような目で睨む椿。
ここまで嫌われるともういっそ、清々しい。
「……瑞希ちゃん……撫子ちゃん」
一方、舞はまるで救世主が来たかのように目を潤ませて瑞希たちに助けを求める。
別に瑞希は舞の救世主でもなければ、助ける義理もない。
「昨日舞と一緒に帰ったでしょ。これ以上舞に関わるなって言わなかったっけ」
「確かに言ったが、別に私がお前の言うことに従う義務はないだろ」
まるで脅しを言うかのように怒りに満ちた声で言う椿に、毅然とした態度で言い返す瑞希。
確かに椿にこれ以上舞と関わるなと言われたが、瑞希は椿の奴隷ではない。
したがって瑞希が椿の命令に従う義務はない。
「そもそもお前ごときが舞と仲良くなるなんて身分違いなのよ。分をわきまえない」
激しく椿が瑞希に文句を言っているが、こいつは本当に馬鹿である。
同じクラスメイトで同い年の人に身分違いって、ここは貴族社会のご子息ご令嬢が通う学校だっただろうか。いや、違う。ここは一般庶民が通う高校である。
「あんたが柊。パッとしない男ね」
外野からヤジを飛ばしてきたのは椿と同じグループに所属している大村早織だった。
大村早織は同じクラスのクラスメイトだ。
性別は女の子。
身長は百六十半ばと瑞希よりも大きい。
髪は赤紫がかった茶髪で、髪先に行くにつれて濃くなっている。
髪型はロングボブで、リア充組の中では一番短い。
よく言えば自分の気持ちをストレートに言う女の子で、悪く言えば口の汚い女の子である。
つまり、瑞希が苦手なタイプの女の子だ。
旨はDカップと平均より少し大きい。
「クラスメイトとは言え初対面でよくそんなことが言えるな大村」
「なーにあたしに文句言ってるわけ。陰キャのくせに」
瑞希に反抗的なことを言われたのがそんなに嫌だったのか、まるでゴミ虫を見るかのような目で睨む早織。
この女も相当頭がいかれている。
「椿も早織も別に舞や柊が悪いことしてるわけじゃないでしょ。落ち着いて」
リア充の中でも帆波は良いリア充らしく、瑞希を一度も貶すどころか一生懸命宥めている。
「帆波。あんたは一体どっちの味方なのっ」
自分の味方をしてくれなかったのが不満らしく、椿は帆波にも噛みつく。
「もちろん基本は椿の味方だよ。でも今回は椿の方が悪いよ。柊に嫉妬して。別に舞は僕たちのものじゃないよ。だから舞が誰といようが舞の勝手だし、僕たちが口出すことじゃないよ」
癇癪ばかり起こしている椿とは違い、やはり帆波は物分かりが良いリア充のようだ。
「そうね。今の話を聞いていると栗山さんの方が正しいわ。金森さんは誰のものでもないわ。一色さんのものでも柊さんのものでも」
撫子は静かに帆波の意見に賛同する。
「だそうだ。別に金森が私と話そうが一色と話そうが別に良いだろ。どっかのグループに所属したらそのグループの人間としか話しちゃいけないルールなんてないだろ」
そもそも、その考えがおかしいのだ。
別にクラスメイトだったら好きな人と話せば良い。
確かに、属性ごとにグループが分かれてしまうのはしょうがないだろう。
だからと言って椿のグループに所属したら瑞希と話してはいけないルールなんてない。
「あっそ。ならご自由に。だったら舞も柊のグループに行けば良いじゃない」
「別にそんなつもりは――」
「それじゃー」
「ふん」
むんつけた椿は怒りを滲ませながら舞を拒絶した。
つまり、もう二度と自分たちのグループには来るなということだ。
もちろん舞にそんな気持ちはない。
だから否定しようとするものの、聞く耳を持たない椿は冷たい言葉を残して自分の席に行ってしまった。
早織は椿の味方らしく、鼻を鳴らして椿の後を追う。
椿と沙織は自分の席に戻り、取り残される四人。
他のクラスメイトはクラスカースト最上位に目を付けられるのが怖かったのか一切口出しをしてこなかった。
まるで触らぬ神に祟りなしと言わんばかりに傍観していた。
「ごめんね三人とも。椿たちは僕がなんとかしておくから」
常識人の帆波が三人に軽く謝ると、椿のグループに戻っていった。
「あはは、ごめんね瑞希ちゃん、撫子ちゃん。勝手に喧嘩に巻き込んで」
三人の中で最初に口を開いたのは舞だった。
舞は笑みはまるで作り笑いのようだった。
「別に金森が悪いわけじゃないだろ。気にするな」
「そうね、柊さんの言う通りよ。あれは子供のように駄々をこねたあっちが悪いわ」
別に舞の味方ではないが、あれは誰がどう見ても椿たちが悪い。
撫子も瑞希と同じ気持ちだったのか、舞のフォローをする。
「……あたし追い出されちゃったな……」
別にあんな奴らと一緒にいる必要は全くないと思うのだが、グループを追い出された舞はなぜか悲しそうだった。




