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柊瑞希は青春コンプレックス  作者: 黒姫 百合


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20/63

別にあなたに謝られる筋合いはないんだけど

 翌日。


「大丈夫瑞希ちゃん。昨日顔色悪かったけどもしかして体調不良?それなら学校休んでも良いのよ。それとももしかして欲求不満?瑞希ちゃんも年頃の男の娘だもんね。いろいろ溜まっるよね。大丈夫よ瑞希ちゃん。私が処理してあげるわ。お姉ちゃんのおっぱいが恋しいならおっぱいをしゃぶっても良いし、お姉ちゃんの愛液も舐めて良いわ。それとも逆にお姉ちゃんが瑞希ちゃんのおちん〇んをしゃぶってあげるわ」

「それじゃー行ってきます。それと、家の外では絶対そんなこと言うなよ。分かったな。振りじゃなく本気で言ってるからな」

「ちょっと瑞希ちゃん。……どうして昨日からそんな不機嫌なの。もしかしてこれが反抗期というものなのかしら~」

「……ドアを閉めても普通に聞こえるのだが」


 朝から頭を痛める瑞希。


 このブラコンはどうにかならないのだろうか。


 これはもはや病気である。治さないといけない病気である。


 今日も変態な姉のせいで、朝からドッと疲れが溜まる。


 もうアラサーなんだから弟離れしてほしいものである。


 さすがに弟に性的行為をしようとする姉は異常者の何者でもない。


 今日も頭を抱えながら登校すると、昇降口で声をかけられる。


 最近、昇降口で声をかけられることが多くなったな~と思わず現実逃避してしまう。


「おはよう柊」

「……おはよう栗山」


 今日、昇降口で瑞希を待ち伏せしていたのは撫子でも舞でも椿でもなく、椿のグループに所属している栗山帆波だった。


 栗山帆波は瑞希たちと同じクラスに所属している高校一年生の男の娘だ。

 身長は百八十前半とかなり大きい。だから体格はかなりガッチリしている。

 それもそのはず。帆波は野球部員なのだから当然である。

 茶髪のセミロングで、後頭部を一周するように編み込みをしている。

 性格はサバサバした感じで、誰に対しても人懐っこい。

 椿とは小学生から幼馴染らしく、結構椿とは仲が良い。

 利き手は左らしく、珍しいから瑞希の記憶にも残っている。

 椿と幼馴染。つまり、瑞希に話しかけた理由は言わなくてもほぼ予想がつく。


 どうせ椿絡みだろう。


 でなかったら帆波が瑞希に話しかけることなんてしないだろう。


「それで――」

「どうせ一色のことだろ。それで私になにか文句を言いに来た。違う?」


 もう一度言うが帆波は椿の幼馴染で仲良しだ。

 仲良しの幼馴染なら、幼馴染がクラスメイトと喧嘩したら、その幼馴染を庇うため文句を言いに来ることを予測することぐらい造作もない。


「うん。椿のことなんだけど別に文句を言いに来たわけじゃないんだ」


 帆波はバツの悪そうな顔で瑞希の言った言葉を否定する。


 てっきり自分への文句だと思っていた瑞希にとって帆波の言葉は拍子抜けだった。


「どうしたの柊?」

「いや、なんでもない。ただ拍子抜けしただけ。てっきり一色絡みで文句を言われると思ったから」


 瑞希の拍子抜けした顔を見て首を傾げる帆波。

 椿のことで文句を言いに来たのではないなら、一体なぜ昇降口で瑞希を待っていたのだろうか。


 椿絡みということは間違いないのだが。帆波本人も言っていたし。


「違う違う。僕はただ柊に謝りたかったんだ。椿があんなこと言ってごめんなさい」


 帆波がここで瑞希を待っていた理由。


 それは、昨日椿が瑞希にしたことを謝るためだった。


「頭を上げて栗山。別にあなたに謝られる筋合いはないんだけど」


 冷たいように聞こえるかもしれないが、その問題は瑞希と椿の問題であり、別に帆波には関係ないし、帆波が口を挟むことでもない。例え、幼馴染だったとしてもだ。


 そもそも帆波と椿は、所詮幼馴染の関係でしかない。


 幼馴染がなにか相手にしたら、その幼馴染の幼馴染が謝罪する。


 それって普通におかしいのではないかと瑞希は思う。


「まぁー……そうなんだけど、僕の椿が柊に迷惑をかけたというか……」


 頭を上げた帆波は歯切れが悪かった。

 やはり瑞希は帆波のこの表現が気になってしまう。


 『僕の椿が』という表現が。


 どうして椿も帆波も、人を自分のものだと思っているのだろうか。


 基本人間は人間であり、物ではない。


 その言い方だと、その人は自分の『所有物』ですと公言しているようなものである。


 椿も、舞のことを『あたしたちの舞』とか言っていたし。

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