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柊瑞希は青春コンプレックス  作者: 黒姫 百合


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ちょっと二人とも、どうして急に私をいじり始めたのかしら

「白鳥ってこの間『別にクラスメイトだからと言ってあいさつをする必要はないと私は思うわ。所詮、クラスメイトと言えども他人だもの』とか言ってたよな。でも今日、普通の私や金森にあいさつしてるけどどんな心境の変化があったの」

「あっ、それはあたしも思った。昨日はあんなにあたしに対してツンケンしてたくせに、今日は普通にあいさつしてくれた。う、嬉しいんだけど、なんか複雑」

「あ、あれは、少し機嫌が悪かっただけよ。部活の入部締め切りが迫っていたし」


 昨日撫子は舞に対して、クラスメイトと言えども他人だからあいさつする必要はないと言っていた。


 しかし、今日の撫子は機嫌が良いのか、昨日が機嫌が悪すぎたのか普通に瑞希に対してあいさつをしてきたし、舞にもした。


 言い訳をさせてもらうが、瑞希も撫子の言葉に共感したと言ったがあれはクラスメイトは他人という言葉であり、あいさつ云々のことではない。


 瑞希が味方で心強いのか、舞も非難めいた声を上げる。


 一方撫子はバツが悪いのか、頬を膨らませて反論する。


「あっ、撫子ちゃん、その表情可愛いー」

「確かに金森の言う通り、少し可愛いかも」

「でしょ。やっぱり撫子ちゃんはツンケンしてる顔より笑ったり、照れてる方が可愛いよ」

「ちょっと二人とも、どうして急に私をいじり始めたのかしら。やめなさい」

「だって可愛いだもん」

「だ、そうだ」

「ちょっと二人ともからかうの禁止。いい加減にしないと怒るわよ」


 撫子の拗ねた顔が可愛かったのか、舞は子猫を見るかのようにニッコリしている。

 いつもクール(と言っても撫子との付き合いはまだ一週間未満)な面しか知らなかった瑞希からしても撫子の照れた表情は新鮮で、それゆえにギャップがあり可愛く見えた。


 二人にからかわれたと思っている撫子は照れながらも怒っているが、それがまた可愛い。


 これはどこにでもある日常の一コマだ。


 でもそこにはきらめく輝きと甘酸っぱい笑顔があった。


 きっとこんなどこにでもある日常の一コマなんて、大人になったらそんなことがあったことすら覚えていないだろう。


 でも、確かにこの日常はあったのだ。


 まだ瑞希も高校一年生。しかも春だ。


 高校生にとって、この生きている時間、場所が自分にとっての『世界の全て』である。


 だからこそ、瑞希は、瑞希たちは当たり前の日常が当たり前ではない日常ということをまだ知らない。


 その後、撫子が本気で拗ねそうなので、瑞希も舞もそれ以上からかうことはしなかった。


 教室に着き、中に入ると舞がクラスメイト……というか自分が所属しているグループたちに声をかける。

 舞が所属しているグループは説明しなくても分かると思うが、いわゆるクラスカースト最上位のグループである。


 簡単に言えばイケイケオシャレリア充グループだ。


 彼らは自分たちがこのクラスのカースト最上位ということを自覚し、自分たちの存在を誇示している。瑞希の嫌いなタイプの人種である。

 普通に考えれば同い年なのに、なぜカースト制度があるのか疑問に思うかもしれないが、子供の世界では、無意識に格付けが行われている。


 基本、リア充がクラス上位を占め、普通の生徒が中位、陰キャやボッチが下位を占めている。


 これは越えられない西洋の身分制度のようなものだ。


 クラス下位の人間は決してクラス上位の人間には逆らえない。

 だからこそ、リア充グループはこの教室せかいをわが物顔のように牛耳っている。

 瑞希とは絶対に相容れない存在である。


 言わなくても分かると思うが瑞希もクラスカースト下位だし、撫子だって同じだろう。


 それにいつも一人で縮こまっている男の娘も、休み時間全て勉強しているががり勉少女もクラスカースト下位の仲間だ。

 無論、クラスカースト下位だからって、上位に上がりたいとは思ってないし撫子だって瑞希と同じ思いだろう。


 撫子なんて、教室に着くとすぐに一人で読書を始めていた。

 あれはクラスカーストなんて全く気にしていない人の顔つきである。

 瑞希は机に教科書やノートをしまった後、イヤホンを耳に付け下界から自分をシャットアウトした。

 このクラスで撫子と舞以外話す人がいない瑞希にとって下界からシャットアウトしてもなんの不都合はない。

 瑞希は一人音楽を聴きながら朝のホームルームまでの時間を潰していた。


 これが瑞希にとっての何気ない日常であった。

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