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柊瑞希は青春コンプレックス  作者: 黒姫 百合


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12/63

なにか問題でもあったかしら

「一つだけ聞きたいことがあるんだけど、二人はどんな風に勧誘活動してたの。そのー……二人ってそこまでグイグイ行く感じじゃないよね」


 職員室を出て、教室に戻るために廊下を歩いていると舞が二人に話かけてきた。

 舞も先ほどの件で言葉選びにはかなり慎重になっており、よく言えば反省している、悪く言えば引きずっていた。


「確かに私も白鳥もあまり人に話しかけるのが得意じゃないからポスターを作って張ったんだが」

「それが全然来なかったのよね。ポスター効果は全然なかったわ」


 舞に言われるまでもなく瑞希も撫子も積極的に人に話しかけるタイプの人間ではない。

 だから、人に話しかけることなく勧誘できる手段、ポスターを使って勧誘活動をしていた。


 だが、結果からも分かる通り、ポスター作戦は失敗に終わった。


「そうなんだー。それでどんなポスター作って貼ったの?見てみたい」


 舞は二人が作ったポスターに興味があるのか、見てみたいと言って来た。

 その目はまるで子犬のように輝いていた。


「そうね。ちょうど今から剥がしに行こうと思っていたところだし別に良いわよ。もうポスターは必要ないしね」

「ありがとう撫子ちゃん」

「別にお礼を言われるようなことではないと思うのだけれども」


 さきほど二人は喧嘩したせいか、特に舞の方が撫子に気を使っていた。

 見た目はギャルなのに礼儀正しいとなんかギャップを感じてしまう。


 逆にお礼を言われた撫子は若干引いていた。


 その後三人は昼休みが終わる前に部活勧誘のため貼っていたポスターを回収し終えた。


「……もしかしてこれがポスター?」

「?そうだけど、なにか問題でもあったかしら」


 瑞希たちが作ったポスターを見て、舞はなぜかドン引きしていた。

 その態度が気に食わなかった撫子が、また舞に噛みつく。

 撫子は少し舞に噛みつきすぎだと思うのは瑞希だけだろうか。


「ううん、別に……なんでもないけど」


 やっぱりさきほどの件がまだ尾を引いているらしい。

 舞は瑞希たちといざこざを起こさないために嘘を吐く。


 それが逆に瑞希をイラつかせた。


 なぜなら他人の表情を伺って自分の意見を変える人間が嫌いだからだ。


「遠慮なく言えよ。なにか言いたいことがあるんだろ」


 イラついていたせいか、瑞希の言葉がきつくなる。


「私も聞きたいわ。その顔はこのポスターにはなにかしらの欠点があるんでしょう。もし欠点があるなら次作る時は修正したいもの」


 撫子も舞と同様、さきほどの件は反省しているらしくできるだけ穏やかな口調で舞に話しかける。


 舞も言うか言わないか数秒逡巡した後、腹に力を込めて自分の思いを吐き出す。


「まず、このポスターなんなのっ。文字しか書いてないでしょ。しかも黒一色。こんなんじゃ誰も来ないに決まってるでしょ」

「「?」」


 舞にダメなところを指摘された二人だったが、なにが問題なのかよく分かっていなかった。


「えっ、これで分からないのっ」


 二人の鈍感ぶりに、舞は引いていた。


「そんなに悪いのか、このポスター?」

「必要最低限のことは書いてるからこれで大丈夫なはずだけど」


 瑞希も撫子ももう一度自分たちが作ったポスターを確認したが、どこが悪いのか見当もつかなかった。


 A四の紙に部活名未定と活動内容と、部員の名前を黒の油性ペンで書き、それを廊下の掲示板に貼っていたのだ。


 イラストは二人とも書けなかったので割愛した。

 つまり、二人のポスターはモノクロでイラストはゼロの殺風景なポスターだった。


「確かに必要最低限のことは書いているけど……。それじゃーダメなんだよ。まずイラストがないから、パッと見どんなポスターなのか分からない。それに色も一色でしかも黒だから目立たないし、印象にも残らない。ポスターってインパクトが大事で、まるで報告書みたいポスターなんて誰の印象にも残らないよ」

「「……」」


 舞のダメ出しを聞いて、その発想はなかったと瑞希は反省する。

 舞の言う通り必要最低限のことは書いていたがそれだけだった。


 それさえ書いてあれは十分だと思っていた瑞希だったがそれは違うらしい。


 ポスターはインパクトが大事だ。


 そもそもポスターを貼っても読んでもらえなければ意味がない。


 読んでもらうにはどうすれば良いのか。


 そんなの簡単である。


 人々の意識に残るような、目立つポスターを作れば良い。


 そうすると、イラスト無し、黒一色のポスターでは全然インパクトはないし、誰の記憶にも残らない。

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