う・る・さ・い・ば・か
「そもそも金森が言った青春の意味が分からないのだけれど。私と白鳥は部活を楽しむために部活を作ったわけではない。部活に入りたくないから部活を作ったんだ」
「えっ、なにそれっ」
部活に入りたくないから部活を作る。
確かに傍からすれば矛盾した理論だ。
そう言えばこのことも舞には伝え忘れていたと瑞希は反省する。
舞は驚いているがそれが普通の反応である。
「だから別に部活に楽しさを求めてはいない。私たちは自分の時間を好きに使いたいだけだからな。だから活動しなくてもいい部活を作った」
「別に嫌なら入らなくても良いわよ金森さん。他の人を探すだけだから」
だから部活には楽しさを求めていないと瑞希は舞に説明する。
だが、一連の舞の言い方と言うか言葉が気に食わなかったのか撫子が舞を拒絶するような言葉を吐く。
知り合って間もない瑞希でも分かるぐらい、撫子の視線は鋭かった。
「……別に嫌とは言ってないけど……」
撫子に強い言葉を浴びせられた舞は、まるで親に叱られた子供のようにシュンとしている。
「せっかく金森が入るって言ってくれてるんだ。そうじゃないと困るのは私たちの方だろ」
「別に一人ぐらい気合いでなんとかするわ」
「精神論かよっ」
いつも冷静に見える撫子には似つかわしくない精神論を言う撫子に瑞希は反射的にツッコミを入れる。
「どうして柊さんは金森さんの肩を持つのかしら」
「別にどっちの肩も持ってないだろ……はぁ……」
なぜか舞の肩を持っていると責められる瑞希は、思わず小さいため息を漏らす。
本当に瑞希は舞の肩も持っていないし撫子の肩も持っていない。
「なんだなんだ。三人で入部じゃなかったのか。というか早くしてくれ。麺が伸びる」
ここで尚美が絶妙なフォローを出す。
カップ麺が伸びると文句を言いながらも、尚美が三人の会話に入ってくれたおかげで一旦、三人の会話の流れが切れた。
「……瑞希ちゃんはあたしが入った方が助かるんだよね」
「えっ、まぁ……金森が入ってくれる方が助かるけど」
「……分かった。あたしそのサポート部に入ります」
いきなり耳打ちをされた瑞希は思わずドキッと動揺してしまう。
男の娘とはまた若干違う女の子の香り。
なんで舞がそんなにも瑞希にこだわるのかは分からないが、瑞希が立ち上げたサポート部に入ってくれるなら万々歳だ。
「それとごめんなさい撫子ちゃん。撫子ちゃんに不快な思いをさせて」
「いえ、謝るのは私の方よ。勝手に噛みついてしまってごめんなさい」
撫子から舞に仕掛けた喧嘩は尚美のフォローのおかげもあり、すぐに鎮火することができた。
最初に謝罪したのは舞の方で、礼儀正しく頭を深く下げて謝罪する。
撫子も自分から煽った自覚があるらしく、撫子も頭を深く下げて謝罪した。
「それじゃー『サポート部』、部員三人で登録しておくから。さぁ、用が済んだら帰った帰った。授業が始まる前に食べないとマジで午後が持たんからな」
無事二人の仲直りを確認すると、尚美は面倒くさそうな声で三人をあしらう。
面倒くさそうな声を出しているが仕事はしっかりこなしてくれるのが尚美という女性だ。
それに、尚美だって次に授業のために準備だってあるだろう。
「「「それではよろしくお願いします」」」
三人は尚美に感謝を表現するために、浅すぎず深すぎない礼をして職員室から出る。
「……青春だな……若いな……はぁー……甘くて胸やけがしそうだ」
職員室を出る前、尚美が一人ぼやいていた言葉がたまたま耳に入る。
「……あぁ……どんどん自分が老いていく……」
そして自分が老いていっていることを自覚した尚美は一人落ち込む。
『う・る・さ・い・ば・か』
だから瑞希は口パクで反論する。
これが瑞希が学校でできる、最大限の反撃だった。




