そして変わらぬ愛
――――それから五年の月日が流れた。
優菜とライルは、あの夜から恋人として付き合い始め、いつしか夫婦同然として共に暮らし、この家を『灰色の牙』の孤児院として、王都一の暖かい場所へと育て上げていた。公爵の支援、ルークが改良したスタミナ保存食の売上、そして優菜が前世の知識を活かして作るパンやお菓子の評判により、孤児院の運営は盤石だった。
子どもたちは皆大きく成長した。ティナはゲオルグに負けない薬草の知識を身につけ、孤児院の畑を管理している。ルークは今はスタミナ保存食以外にも冒険者用携帯食料の改良にも夢中になって取り組んでいる。アレンは孤児院の事務を一手に引き受け、リリアは魔法と教養で子どもたちを支える、頼れる家族となっていた。優菜はみんなの心と体を満たすため、今日も厨房に立つ。
朝、大きな厨房から立ち上る、優菜の作るスープの優しい香りに包まれ、ライルは目を覚ました。優菜の姿はもう隣にはない。ライルは起き上がり、厨房に向かうと、エプロン姿の優菜が楽しそうに料理をしていた。その首元には、あの花を模したネックレスが輝き、優菜の胸で静かに脈打っていた。
優菜は振り返り、ライルに微笑みかける。
「ライル、おはよう。今日の朝食は、みんなが元気になれる、特製のパンケーキとクラムチャウダーよ」
ライルは優菜をそっと後ろから抱きしめ、優菜の髪にキスをした。
「おはよう、ユウナ。今日も美味しそうだ」
子どもたちの元気な声が広間から聞こえてくる。
優菜は不思議にそうにライルの顔を見た。なぜかライルは、いつもより表情が硬く緊張しているようにみえたからだ。ライルは優菜の体をそっと離し、真剣な瞳で優菜を見つめた。手には、小さな木箱を持っている。
「ユウナ。聞いてほしい」
優菜はライルを見つめ返した。
「そのネックレスは、お前を一生守り抜くという俺の決意だった。そして、お前が髪につけていた花と同じモチーフを選んだのは、お前が誰よりも、子どもたちを愛し、大切にしているのを知っていたからだ」
ライルは一度、深く息を吸い込んだ。
「ロンドでお前に出会ってから、俺たちは過酷な戦いの日々を駆け抜けてきた。だが、ユウナ。お前がいつも諦めず、温かい料理を作り続けてくれた。そのたび、俺の心は深い安らぎを得て、何度でも立ち上がれた。これからもずっと、お前のそばで、この温かい場所を守らせてほしい。」
ライルは、優菜の手に小さな木箱をそっと乗せた。
「ユウナ愛してる。俺と結婚してくれないか」
優菜の目から、涙が溢れた。それは、異世界に来てからの不安や戦いの記憶、そして全てを乗り越えた安堵と、ライルの深く強い愛に触れた喜びの涙だった。優菜は、震える手で木箱を開けた。中には、優菜のネックレスと同じ、繊細な花のモチーフが刻まれたシンプルな指輪が収められていた。ライルはその指輪を優菜の薬指にそっとはめた。
「はい、ライル...。私も愛してる」
二人は朝の光の中で、永遠の愛を誓い合った。
優菜の料理の香りが、今日もまた、家族の愛と幸せを運ぶ。
この度は、最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
私にとって初めての小説執筆であり、正直なところ、途中何度も「最初から書き直したい」という気持ちに襲われました。それでも、ブックマークや評価、温かいリアクション、そして何より作品を読んでくださる皆さんがいるということが、私にとって何よりの励みでした。
ずっと心の中で「いつか小説を書きたい」という気持ちを抱えながら、なかなか行動に移せずにいました。いざ書き始めてみると、多くの方が温かく見守り、応援してくださり、そのことが本当に心強かったです。
小説を書き始める前に掲げていた「絶対完結させる」という目標を、皆さんの支えのおかげで達成することができました。
心からの感謝を込めて。この作品は、皆さんと一緒に作り上げた宝物です。最後まで本当にありがとうございました。




