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【高速家事スキル】を隠す少女は、食料難の孤児院を最強の料理で救う  作者: 紫陽花


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残滓の示す道と、四人の覚悟

おはようございます。

3連休も残り1日、あっという間ですね。

本日は3回更新の予定です。

お楽しみ頂ければ嬉しいです。

 リリアの告白は、あまりに重く、ライルたちの胸に突き刺さった。優菜の身に迫る危機は、もはや街の商売敵とのいざこざどころではない。優菜の力が『異界の起源』と知られれば、それは王国の根幹を揺るがす秘密となり、命に関わる危険をはらんでいた。


 ライルは目を閉じ、優菜が涙をこらえて自分たちを送り出した日のことを思い出していた。優菜の決意は、ライルたちに頼ることなく、自分の力で子供たちと店を守るという強い意志だった。


「ユウナの裏庭が破壊された。これは、ただの嫌がらせじゃない。彼女の行動を止めるための明白な脅しだ」


 ゲオルグが静かに言った。


「だが、リリアの言う通り、俺たちが今すぐ街に戻っても、ギルド連合を排除するだけじゃ、根本的な解決にはならん。ユウナの『異界の起源』が知られれば、次に相手にするのは、王国の権威だ」


 その時、偵察に出ていたアレクが情報を持って戻ってきた。彼の顔には、隠しきれない焦燥感が浮かんでいた。


「ライル、ゲオルグ。ロンドから来た商人たちの間で、ユウナ達の店を潰すための具体的な計画が持ち上がっている。ギルド連合は、次に子どもたちを狙う可能性まで示唆しているそうだ。バルカスさんからは、ユウナが憔悴しているという連絡も入った」


 伝言を聞いたライルの瞳は怒りに燃え上がった。しかし、彼はすぐに理性を呼び戻した。


「わかった。しかし、俺たちは、王都に残る」


 ライルは断言した。


「ユウナは一人で頑張っている。だったら俺たちは、ユウナが安心して料理を作り続けられるように、この王都で『後ろ盾』を作る。彼女の能力を『古代の技術』として王国の平和に貢献させる。それが、ユウナを守る唯一の道だ」


 ライルはアレクの肩を掴んだ。


「アレクには、ゲオルグと連携して情報収集を続けてもらう。合わせて組合のバルカスさんに秘密裏に連絡を取り、信頼できる冒険者を数人雇ってユウナたちを常時警護してもらうよう手配してくれ。費用は俺が出す。ユウナが気を遣うといけないから、子どもたちや店に不審者が近づかないよう、あくまで『組合の巡回』という形で頼む」


「了解した、ライル。必ずユウナたちを守る手配をする」


 アレクは力強く頷いた。



 リリアは安堵の息をついた。


「ありがとう。あなたたちがこの依頼を成功させれば、ユウナの技術は『国益』として守られることになるわ」




 四人はすぐに調査を再開した。リリアは優菜のお守りと同じ模様が描かれた古い文献から、魔王の残滓の追跡に必要な手がかりを抽出した。


「魔王の侵攻は、魔力の薄い場所を好んで通る傾向がある。しかし、今回の残滓のルートは、特定の『古文書を多く収めた場所』ばかりを狙っているわ。これは、単なる破壊行動ではない。残滓の動きに乗じて、何かを探している敵がいるはずよ」


 ゲオルグは、リリアの言葉と、王都の巨大商会とロンドの商会ギルド連合の不審な物流記録を重ね合わせた。


「残滓が狙っている古文書と、王都の大商会が急いで買い占めている特定の素材。この二つが交差する場所が一つだけある。それは、王都の南にある、『忘れられた学術都市』の遺跡だ」


 その遺跡は、かつて魔導院が禁忌とされた古代の研究を行っていた場所だと噂されていた。残滓が目指す場所と、王都の陰謀が、その遺跡で交差している。


「王都の南にある遺跡か……。そこへ向かうルートは、魔王が過去に侵攻ルートとして利用した『古の街道』に繋がっている。もし敵がその街道を通っているなら、討伐依頼のついでに王国の防衛ラインに関する重要な情報も掴める」


 ライルは剣を握りしめた。


「よし、決まりだ。ユウナが街で孤軍奮闘している間に、俺たちは王都の脅威を断ち切る。ゲオルグとアレクは引き続き王都の裏の情報を収集し、俺とリリアで遺跡へ向かう」


 四人は、それぞれの覚悟を胸に、王都の喧騒の中、次の行動を開始した。

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